目覚めたら①
気が付いたら、私は、屋敷のベッドで寝ていた。
メイド長のスカレが、付き添ってくれていた。
「お目覚めですか、キララ様」
口を開くが声が出ない。吸い飲みで水を補給してもらって、やっとかすれた声が出た。
「私?」
「ひと月ほど眠っておられました。あの不治の病におかされていた少年は、もうすっかり元気ですよ。ユリリアさんとハンナには、眠くなる薬湯を飲ませて、休ませました。あのままでは、二人の方がまいってしまいそうでしたので」
私の知りたいことを察して、先回りして教えてくれる。優秀な人だ。そして、やさしい。
ケホケホと咳き込むと、また、水を飲ませてくれる。ずっと気になっていたことを尋ねた。
「不思議だったのです。どうしてスカレをはじめ、屋敷の人たちが、私を受け入れてくれたのか」
スカレが浮かべたのは、不思議な笑みだ。そういえば仕事柄か、普段あまり笑わないね。
「他の者がどう思っているのかは、推測するしかありませんが」
きっちり結い上げている髪を、なお耳に掛けようとする。
「私のお耳とおんなじね?」
小さな肯定。
「お察しの通りです。私と家令のイマージは、ヤラレタ王国の出身で、騎士でした。前の前の戦争で負傷し、捕虜となったのです。先代の辺境伯様は、私共を治療し、剣も鎧も返してくださり、馬も与えようとしてくださいました」
「帰らなかったのですね?」
「はい。半年ほどの間でしたか。こちらで過ごすうちに、この国の人たちの誇り高さに触れ、母国の傲慢さを知りました。奴隷でもよいから、お仕えさせてくださいとお願いしました。私は下っ端のメイドとして、イマージは従僕として雇っていただくことになりました。そして、数十年です」
なんとなく、その時の二人の気持ちがわかるような気がした。




