新しいお部屋
長旅で疲れてるだろうからって、すぐに、メイド長みずから部屋に案内してくれた。
「こちらが奥様のお部屋になります。こちらが従者の控えの間、左手の両開きの扉は、辺境伯様の主寝室へとつながっております。こちらからのみ鍵が掛かる造りなっておりますので、鍵は乳母殿に預けておきます」
うん。女同士はいろいろむずかしいけど、いまのところ、二人のやり取りはスムーズだ。
「家具等そろっておりますが、お気に召さないようでしたら入れ替えさせます。いまはお疲れでしょうから、落ち着かれましたらご指示をいただければ、お荷物の運び込み等もすぐに手配をいたします」
「お気遣いありがとう、スカレさん。これからよろしくお願いしますね」
「もったいないお言葉です、王女様。私めのことはどうぞ、スカレとお呼びください」
「わかりました、スカレ。いまは下がっていいですよ」
「はい、失礼いたします」
ミントグリーンの壁紙がやさしい、いかにも女性らしい部屋だ。調度品も、あまりごてごてしてなくて、私好み。
城のアールデコ調は、最初は、わぁっと思ったけど、すぐにあきた。赤ちゃんの時にいた部屋は、いい感じだったんだけど。あれ、じつは控えの間だった。粗相をしてもいいようにってことかな?
ここはあったかい感じで、ほっとする。はじめて来たのに不思議だけど。家具に施された緩いカーブの彫刻は、磨きぬかれた焦げ茶色。薄っすら金糸の刺繍が入った天蓋とかもいいよね。
ワレサさんの奥さんがすごしてたんだと思うと、ちょっと複雑だけど、気にしないことにした。だって、よくよく考えれば、ワレサさんのお母さんも、そのまた義理のお母さんも生活してたわけでしょ?
「姫様、お荷物はどういたしましょうか?」
「ユリリアもハンナも疲れているところわるいけど、運んでもらってくれる? とりあえず馬車を空けないと他の人たちが困ると思うから」
いや、馬車ごと車庫に突っ込んでおいてもかまわないのかなぁ。
「はい」
「承知しました」
あ、承知されちゃった。一度出した指示を撤回すると、よけい面倒かけそうだし。私なら、かまわないと言いつつ、イラっとするからなぁ。どうしよっかー?
「仕分けとか、仕舞うのは後でいいわ。とりあえず、こっちの部屋に入れててくれれば」
廊下側から順に、私用の居間、主寝室。居間の脇には従者の控え室、寝室にはウォークインクローゼットがついている。クローゼットといいつつ、ふつうに部屋だよね。馬車いっぱいの荷物も余裕で入るだろう。
あー眠気きた。頭、まわらない。
あくびをしてる間に、ユリリアとハンナが部屋着に着替えさせてくれる。天蓋をおろしてもらいながら、ベッドにダイブ!




