美しい雑談
男もいる、女もいる。それらが子供から老人、バランスよく揃ってる?
五、六人が話し合う声。うるさくはない。美しい鈴のような、さわやかな風に吹かれる葉擦れのような、なんとも心地よい声音。
ますます瞼が上がらない。私は、うつらうつら。
明るいなぁ。目を開けたら、まぶしくて何も見えないんじゃないだろか?
「死後とはいえ人の身で、頑なな魂を十以上も説得するとは」
「理不尽に命を絶たれたことも、恨みに思っておらぬよう」
「ぜひ、こちらにほしい人材ですな」
「褒美に、さらに働かされるなんて気の毒ですわ」
「それもそうか」
「しかし、あの程度の人生で満足してしまうとは。ちと情けないのぉ」
「それは違うでしょう。それほど恵まれなかったということで」
カラカランと、ガラスの器にサイコロを転がすような音が混じる。
「この期に及んで目覚めぬとは」
「無礼だ」
「いやいや、疲れているんでしょう」
「これだけ図太、いえ。落ち着いて物事に当たれるならば、それ相応の地位にも」
「うん、あそこ。ちょと不安材料」
「では、それでよろしいかな」
異議なしと唱和。ぺたぺたと次々に額を触られる感触。
「美貌を」
「知恵はあるようだ。それを明確に、引き出しやすくしておくか」
「耐える心も十分ね。少し弾性を取り戻しておきましょう」
「回復、極み」
「身を守るくらいの力はあった方がいいだろう」
「せいぜい、長生きをすることだ」
直後、ぽいっとどこかに放り込まれる。
「あ、洗濯」
「遅いよ」
「わざとじゃなかったんだ?」
「ワシはまた、てっきり」
「邪悪じゃなかったから。記憶があっても問題ないでしょう」
「ほい。次、次」
美しい雑談が遠ざかっていく。