視察②
見かねたのか、少しは受け入れてくれたのか。後半の二週間は、ワルサさんの馬に相乗りさせてもらえた。きゃっほー!
王都周辺の街二つと、十の村しかまわれなかったけど。ケセラサ王国は、これから支払われる賠償金に合わせて、ヤラレタ王国に技術供与をするつもりらしい。具体的には衛生関係、つまり水洗トイレだ。でもそれには、下水もなんとかしなくちゃならないわけで。
手を出しにくい街より、まずは、中規模の村でモデルケースをつくるつもりらしい。これは、その候補地探しでもあるのよね。
あとは、アンテナショップを出すなんて構想もあって。ゼンマイや水力で動く、ケセラサ製の道具類。樹液のシロップや、ローストしたナッツなんかを置いたらいいんじゃないかとか話し合ってる。
ううむ、やるな。武力ではなく、いずれ経済支配ってわけですね。
「ご感想は? キララ様」
試すように聞いてくるくらい、ワルサさんとは仲良くなれたと思っている。ええ、勝手に。メンタル強くしとかないとね。敵さんはなかなか手強いのだ。
むこうはお仕事できる男オーラとか、ストイックなお色気とか、ビカビカもれもれさせてるのに、こっちは色仕掛けひとつできないんだよ? テクがないのと、年若すぎるのと、いったい何重苦なんだ、私。
せめて、きよらかな笑顔は完璧に。どや。
「どのご意見もすばらしく、できあがるのが楽しみですわ。ヤラレタの民も、皆、ケセラサ王国が好きになってしまいますわね」
視線で意見を交換し合う男たち。合格? 合格かな?
他国人であることを隠そうともしないので、この視察の間中、自国民がどう反応するか心配だった。まあ、それぞれの護衛のほかに、最低でも騎士が十人付いてるけどね。
はからずも、おまけのはずの私が、いい仕事をしてたみたい。「国民のために身売りをしようとしている悲劇の王女様」とか言われて、その健気な姿が、襲撃や暴動の抑止になっていたんだとか。ほんまかいな?
でも、そうなら、これまでだらだら気ままに、なんにも国民のためにしてこなかった王女として、最後に一つだけいいことできたかなって、ちょっと気が楽になった。




