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売り込み①

 自分に厳しく、まわりには八つ当たりしないタイプと見た。頼りがいのある地位と、年齢も含めて、見た目も好み。そしてなにより、隣国につれて行ってくれる! 私にとっては好条件。

 もう猫を被ってる場合じゃない。己のすべてを出しきって、売り込まねば。あ、魔法だけは別ね。自国に引きとめられても困るし。って、私もう、姉を差し置いて、嫁に行く気まんまんやん?

 私はノンストップで一時間、ギュベニュー辺境伯を連れまわし、話し続けた。観光名所をめぐるツアーガイドのごとく。あとから思うと、私、冷静じゃなかった。

「テラスにお茶をご用意いたしましたので」

 ユリリアが止めてくれなかったら、まだ続けてたと思う。あっぶなー。

「ふぅ。申し訳ありませんでした。私ったら、はしゃいでしまって。辺境伯様がお付き合いくださるのがうれしくて、つい」

 実際、彼は聞き上手だった。へんに主導権をにぎろうとしないしね。相槌のタイミング、その言葉選びが絶妙なのだ。さすが年の功?

「第二王女様自らご案内いただき光栄です。私の方こそ、王女様の声に聞き入って、際限がなくなっていました。お疲れになりましたでしょう? 田舎者の無骨者とよく言われます。当方、体力だけはあるばかりに、申し訳ないことをしました」

 あらあら。めっさ気遣われちゃったよ。

「いいえ、こちらこそ不調法でお恥ずかしいです。普段から歩き回っているので、体は丈夫なんですよ?」

 出産だってばっちこーい、とアピール。あ、通じてない。微笑ましいものを見る目でみられてしまった。

「どうりで。いえ、調度品一つについても、その解説が通り一遍ではなく、自らの中にきちんと落とし込まれていると感心していたのです。健脚なこともすばらしいと思います。私どもの祖先は自らと家族を養うために、山から山へ、野の果てまでも獲物を求めて駆けました。それは我々にとって誇りあり、自らの足でどこまでもゆけるというのは、美徳なのですよ」

 うわぁ。お世辞にしてもうれしいよ。私、この人、好きかもしれん!

 前世では、人、特に異性を見る時は減点方式で、悪いところばっかり見てた。

 今世はせっかく美少女に生まれたんだし、喪女のまま死ぬのはもったいない。待てばもっといい人がと、頭の冷静な部分では考えている。

「キララ様とお呼びしても?」

 背伸びしてる少女を(おもんばか)ってくれる、大人の男だよ。

「はい」

 しおらしくうなずく。後ろで、ぐふっ、とか言ったの誰じゃいな? まさかユリリアじゃないだろうから、ブロンゾか?

「改めて自己紹介いたします。ワルサ・ノテム・ギュベニューと申します。私のことは、ワルサとお呼びください」

「はい。ワルサ様」

 絵的には、親子どころじゃない。十六歳で成人するこの世界では、祖父と孫娘でもおかしくない。

 でもなぁ。いいなぁ、この人。まだ、ろくに知らないのに、いいところばっかり見える。

 これが恋ってやつなのかな?

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