表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/174

天上界④

 自分にお迎えがきた時、お姫様だっこにうきうきしてたのに、途中から丸っこい玉になって、大事そうに両手で(ささ)げ持たれてたなんて、なんかショックだ。

 もっとも、私がそれを客観的に認識できたのは、こうなってからだから、魂たちは気付いてもいないっぽい。

 きっちり波長を合わせれば、その記憶や考えを読むことはできるけど、そうでもしなければ、喜んでるな、嫌がってるなって、うっすら感じる程度。私もそうだったけど、彼ら、半分寝てるようなもんだからね。

 それでも、いくらこちらの使い勝手がいいからって、せっかくのお姫様だっこからの、採集コンテナはないんじゃないかって、ふと思った。

 ええ、指示したのは私です。しかも、気付いたのが、溜まりに溜まってた魂の洗濯も、大分(だいぶん)すすんでから。す、すみません。

 文句の一つも上がってきてるんじゃないかって、天使たちに確認したけど、意外に、魂たちは嫌がってないらしい。

 そう? なら、別にいいのかな。考えてみれば、収穫物はとっても大事なものだもんね。

 そう、君らはとっても大事だよ。まん丸のツルツルちゃんたち~。

 まあ、私は、亜神になってからは基本人型で、自分の意志で姿を変えることもできるから、下界で寝てる体の成長に合わせて、健康だったらこんな感じって格好をしてるけどね。

 なんか、あんまり肉!って感じがしないんだよね。神々みたいにビカビカしてないし、薄ぼんやり燐光(りんこう)を放つ、いかにも精神体って感じ。

 でも、やっぱり、私は私なんだよね。

 魂の転生がスムーズにいくようになると、今度は別の山が気になる。そう。魂を溜め込んでた神々が、書類を溜めてないはずがない。

 なんじゃこりゃぁぁぁぁ!再び。

 さすがの神々だって、各世界の隅々(すみずみ)まで見てる(ひま)はなかったわけだし、私は多くの世界を把握(はあく)できないから、現場のことは、天使に報告させるに限る。ここまではよい。

 でも、せめて、書式は統一しようよ。

 最先端の文明を見る機会もあるはずなのに、不便を選ぶのは、なんでだろうね?

 ちらっと聞いてみた感じ、()れきったものが落ちるのをくり返し目にしてきて、多少の忌避感はあるようだけど、ぜったいに原始的なやり方を変えてなるものか!って、強固なかんじでもない。

 ただ、なんとなく、現状を変えることに罪悪感を持っている。仕事が終わらないのは自分のせいだと思い込み、せめて目の前のことくらいは、なんとかこなさなくてはと(はげ)んでしまう、その姿勢。

 神々や天使たちが、ゆったりした空気を(かも)し出してるから、勘違いしそうになるけど、これはあれだ。ブラックな職場で使い(つぶ)される人特有の思考と行動だ。

 うわっ、いーやーだー! 天上界に、夢も希望も休暇もないなんて。

 もちろん、私だって、なんでもかんでも合理化すればいいとは思ってないよ? あんまり便利すぎると、あちこち(なえ)えるし、(かん)も働かなくなるからね。

 でも、いまは皆が本調子じゃないし、ちょっと工夫(くふう)するくらいいいんじゃないかなぁ。お姫様だっこで遊覧飛行は、ぜひ、続けてほしいけど、魂を迎えにいく()()は《転移》するとか。

 神様のお許しさえ出れば、それはありがたいけど、天使の力では一日にそう何度も《転移》できない? じゃあ、魔法陣描くよ。

 幸い、世界は早々移動しないし、っていうか、天上界から見れば、どの世界も、まったく同じ方角の、同じ距離にある。ただ、次元が違うだけ。

 天使は、軽く次元を越えられるけど、目的の世界に行くまでに、百八十回羽ばたかなきゃならないらしい。

 えっと。それって、どれくらいなの? バサバサバサが一回で五秒? ああ、羽が三対あるから。十五分程度とも言えるけど、回数を重ねれば結構なロスだよね。

 丸覚え、しといてよかった、魔法陣。こちらとあちらは「転生の穴」で(つな)がってるから、これで《転移》できるはず。

 もちろん、ミスリル板も、魔法陣用のインクも、魔球もナノ製で。うん、いけるね。

 近頃、地上の某王国で開発された、空気からの魔力自動充填(じゅうてん)式にするか迷ったけど、それだと魔法陣が大きくなりすぎるから、一部を書き換えて魔球で稼働できるようにした。

 下界では、重量と強度の問題で自壊しちゃうサイズの魔球も、ここではつくり放題。

 なんなら「転生の穴」を通って行ってもいいんじゃないかと思うけど、飛ぶより時間がかかる上、うっかり転生でもされちゃったら困るので、それは却下。それでなくても、人手不足なんだからさ。

 次元には、それぞれ番号が振られてて、実験してみたところ《転移》先の設定は、方角と距離の後にその番号を入れれば、それで問題なくいけることがわかった。

 ただ、《転移》先でも、担当区域によっては、結構、移動距離があるんだよね。座標、じゃダメか。くぁっ! 亜神になったからって、距離計算できちゃう自分が嫌だ。できるイコール、面倒に感じないわけじゃない。

 まあ、世界が微動だにしないのが救いかな。地球でいえば、確かに自転してるんだけど、天上界から見ると、あくまで周りが動いてるの、オーケー?

 ここにも、天使たちの手元にも、物語にあるようなリストなんてものは一枚もなくて、目についた魂を(かた)(ぱし)から回収してるって、衝撃の事実!

 天使の権能で、生前の記憶を(のぞ)けるから、名前も功罪も一目(いちもく)瞭然(りょうぜん)なんだ。まあ、後者は魂の(にご)り具合をみれば、一発だけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ