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預言

 ワルサさんてば浮気もせずに、十年間ずっと私の体を守ってくれてたんだ。見るたびに、申し訳なくてありがたくて、涙がこぼれたよ。

 何度、こっそり地上に()りようと思ったかしれない。

 でも、普段はのほほんとして見える神々も、伊達(だて)に神なわけじゃないくて、あんまり勝手をすれば、彼らですら、元堕天使みたいに処理されちゃうわけだ。

 天上界には、天上界のルールがある。その中で、下界に働きかけることに関しては、非常にうるさい。そのくせ、私を転生させた時みたいに、抜け道があったりもするんだけど。

 神なら、これはって魂の格をちょいちょいっと上げて、天使にすることもできるらしい。いわゆる、スカウトってやつだね。

 ともかく、亜神として、まだまだ未熟な私が、安全に降臨できるのは、自然豊かで清浄な空気が流れてるところ限定。それじゃ、まったく()りる意味なんですけどー。

 地上で活動するのに適してるのは、やはり天使。あの羽が、ストッパーの役割をはたしてるって話だ。

 私が、むやみに人里に近付けば、(から)の器に魂が引き込まれて、あっという間に転生してしまうか、まだ身動きも、しゃべることもできない、キララの体に()じ込められるのが関の山だって(おど)かされたよ。

 百年は修行しないとって、最初っから計算ずくだったんじゃないか!

 正直ビビったし、イラッとさせられたけど。

 よくよく考えれば、あの時、私が死にかけ、つまり、ぼろぼろな体から、これまたぼろぼろの魂が()い出して、消滅する寸前、亜神になったところを、すかさず天使が回収してくれなかったから、私はここにいない。

 十年間、意識があるのに(まばた)きひとつできないことに比べたら、百年間、神々に()き使われながら、知識を蓄え、力の使い方を習得する方が、断然マシに思えてきた。

 ますます、あの天使にはやさしくしなくちゃ。

 私の体は、ちゃんと時と共に成長はしてるんだけど、魔力も《回復》魔法も、()れてるのは相変わらずで、ガリガリのしわしわ。どう取り(つくろ)おうとも、ミイラ? こんな姿、誰にも見られたくないだろうって、世話も全部、ワルサさん一人でやっていた。

 はじめのうちは、錚々(そうそう)たる面々が見舞いに来てくれてたようだけど、丁寧かつきっぱりと、文字通りの門前払い。

 私の乳母だったユリリアや、侍女だったハンナは、意識がなくても、いや、だからこそって私に(つか)えたがったけど、「キララが元気だったら、君たちに何を望むかよく考えてみてくれ」って、ワルサさんが穏やかに説得していた。

 おかげで、ユリリアが学院長を務める女子学院は、完璧な礼儀作法が身につくだけでなく、教養あふれる女性に育て上げてくれると評判で、国外からも留学生がやってくるほど。

 ハンナは、「聖女」関連の商品を次々と発売。販売や流通は他の商会に任せるも、利権を(にぎ)って、ちゃくちゃくと私名義の資産を増やしてくれている。復活後、何をやるにもお金は必要だもんね。亜神だって、例外じゃない。

 ブロンゾは、ワルサさんの仕事を手伝ったり、シイル殿下の求めに応じて近衛騎士団に所属してたこともあったけど、最終的には、神殿付きの聖騎士になったよ。神殿については、あとで説明するね。

 ありがたいことに、私がちょいちょい手出し口出し、丸投げしてたことは、その成長度合いに差こそあれ、みんなよい方向に発展してる。

 その中でも特に、医療集団ナール族に肩入れしてた自分を()めたいよ。まさか、こんなことになるとは、自分でも夢にも思わなかったけど、(そな)えあれば(うれ)いなし。

 彼らは、流行(はや)(やまい)を早期に押さえ込むのに、多大なる貢献をしたし、ほかにも、新しい薬を庶民にも手の届く価格で販売したり、いままで奇病とされてきた(やまい)の原因を突き止めたりした。

 (のち)に聞いた話によると、族長のヤナルは、昏睡(こんすい)状態の私を真っ先に診察してる。感情ってものをすべて()ぎ落してきたみたいな、ワルサさんに呼ばれてね。

 前世の記憶を持つ私は、医者となれば異性だって我慢できるけど、そこは中世ヨーロッパ基準の世界。さすがに衣服はそのままで、そっと聴診器を忍ばせるくらいだったって、一生懸命言い訳された。いや、ちゃんと信用してるから大丈夫だよ? 《透視》と《細見(さいみ)》の魔道具、つくっといてよかったよね。

 ナヤルは、私の生きているのが不思議って有様(ありさま)に、愕然(がくぜん)としたそうだ。それから(あと)のことは、私もリアルタイムで把握(はあく)してるよ。

 私がいずれ復活するって伝え聞いてからは、少し落ち着いたようけど、唯一、定期的に診察することを許された医療従事者だったから、相当、悩ませちゃったみたいでごめん。とても人間の手に負える状態じゃなかったもんね。

 だからなのか、ワルサさんたちに奴隷身分からの解放を打診されても、ずっと断ってるんだ。私が戻ったら、なんとかしてあげよう。

 もともと出来が良い上に、成長(いちじる)しいシイル殿下は、ますます用心深く立ち回っているし、勢力を拡大し続ける教会との関係も良好だから、ケセラサ王国の将来は安泰だね。あの時のあれで「地神の口」も無事に(?)(ふさ)がったことだし。

 そうそう。「聖女」がいずれ亜神として復活するっていうのは、私が世界を救ったことも含めて、下界に少なからずいる預言者から、全世界に伝わってる。タット族の《予知夢》しかり、海外の聖人しかり。

 まあ、ディープインパクト時は、大変な混乱だったと思うけど、その最中(さなか)でも《回復》の光が何度も、ケセラサ王国の王都方面から広がってくるのを、多くの人が目撃していて、皆、おおよそのことは(さっ)してたらしいんだよね。

 私は、もちろん、ワルサさんの(そば)に復活する気満々(まんまん)だったけど、亜神になったってことは伏せとこうかなって思ってた。

 いずれは、前世の記憶持ちだってことも含めて、彼だけには打ち明けるつもりだったけど、対外的には、あれ以上目立ってどうするんだって思うよね?

 でも、私が、まだ不慣れな天上界の仕事場で、世界の崩壊に(とも)って激増した、魂の仕分け作業に、キーッ!ってなってるうちに、いつの間にか預言はなされていて。どの神が指図(さしず)したかは、妙な連帯感で、最後まで誰も吐かなかったな。

 天使たちも皆傷ついてて、よたよたと魂を集めてくるのが精一杯。人前に姿を現す余力なんてなかったし、そもそも私には、そんなことを指示する権限なかったからね。

 魂の無事を伝えてもらえたのは、ありがたかったんだけど。

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