その他の勉強
話し言葉は、ほぼほぼ英語。記述に使うのは、ほぼキリル文字。
もともと英語は得意じゃなかったし、ロシア語は、ハラショーとピロシキしか知らない。
でも、今世の私の脳ミソは優秀だ。ものごころついた時には、周囲の会話がすべて理解できていた。読み書きも、いまのところ問題ない。
ついでに、当に忘れたはずの小中学校の教科書すら鮮明に思い出せる。それこそ写真を見るがごとく。
現在の私の外部からの評価は、側近がなんとかがんばってまともに見せてる、じつはアーパーな子ってところかな。食テロも起こさずおとなしくしている。
いま天才児デビューしても、あとが続かないしなぁ。へたに優秀認定されると、自国で使いつぶされそうで怖い。
まあ、できなさすぎても似たような境遇になるわけで、加減がむずかしい。
自分のことを「キララはねぇ」とか、言ってるのも自衛の一環。前世じゃ考えられないよ。
本名は、キケイラ・セム・ヤラレタ。ミドルネームのセムは二番目の王女を意味するらしい。第一王女はイム。第一王子はイメで、第二王子がセメだって。
前世では寄る年波に合わせて、減塩と低カロリー食を実行してたから、こちらの食事に不満はない。
酸味のきいた黒パン? 顎は使うしミネラル豊富でいいじゃないの。薄味スープよろし。赤身肉最高!
時々、むしょうに米が食べたくなるけど。その辺は隣国に期待している。
そう。いずれは隣国に行くことを目論んでいるんだ! なかなかハードル高いけど。
乳母のユリリアは、なんだかんだヤラレタ王国万歳な人だから、説得は絶対に無理だと踏んでいる。心を鬼にして置いていくか、だまして連れて行くか。いまのところは後者を考えている。
メイドのハンナはユリリアの子分みたいなものだから、やたらのことは話せない。私のために良かれと思って行動してるのは、痛いほどわかるんだけど。知られちゃまずいことまで筒抜けになっちゃうからね。
となると、頼みの綱は護衛のブロンゾ。いまの私より一回り年上だけど、精神年齢からすれば若造だ。でも、この青年、なんと隣国に行ったことがある!
成人前に外を見てこいって、十五歳の誕生日に、少ない小遣い持たされて家を追い出されたらしい。ナイスだ、ブロンゾ父。いちおう一人、従者がついていたらしいけど。
はじめての土地で一年間、自活。だから、彼の隣国情報は信用できるし、女性陣よりずっと頭がやわらかい。どちらの国の長所も短所もわかってるってわけ。
ただ、私には常にユリリアかハンナが付いていて、気軽に話もできない。
だから、前世じゃ絶対にしようと思わなかった乗馬を、無理を言ってブロンゾに習っている。当然、木陰で乳母かメイドが見張ってるけど、馬の背に乗っている間は、こそこそ内緒話ができるって寸法だ。




