秋月姉妹は双子である
私は人に言えない秘密がある。
ひとつは、言うのが憚られる程の極度のシスコンであるということ。
そしてもうひとつは、他人の感情が色として目に見えているということ。
だから目の前の会社の先輩が脳内ピンクなのは丸わかりで、邪な心持ちで今姉に近づいているこの現状を私は全力をもって阻止せねばならない。
「いやぁ、秋月さん、じゃなくて由奈さんはいつも職場で明るくて……、いや、ほんと、こちらまでいつも笑顔にさせてくれるっていうか」
「あらあら、まあまあ。自慢の妹をそう言って貰えると嬉しいです。それにこんな頼りになる先輩がいらっしゃるなら心配もいりませんね」
「いやぁ! ははは!」
なにが「ははは」である。鼻の下がのびっのびである。それに私のことを持ち上げてお姉ちゃんの気を引こうとしているようだが全くなってない。もっと褒められるとこあるでしょ。可愛いとか、仕事が早いとか、職場のアイドル的存在とか、話を盛るにしたって色々とさ!
そんな心のうちを知らず当の姉はとても楽しそうに先輩と談笑している。話題はお互いの趣味へと移ったようだ。2人ともオレンジ色のオーラっぽい何か(先輩はそれにショッキングピンクが混じっている)をまとってなんだか良い雰囲気だ。いやいやいや、それじゃダメなんだって。
(だってお姉ちゃん、天然が過ぎるんだもん! 私が守らなきゃ!)
元より人が良いのだ。きっと性善説を全力で信じているに違いない。
聖母のごとき姉を守るため、私は今日も悪漢(こと先輩)へ立ち向かうのである。
*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜
私には言えない秘密がある。
ひとつは、本人にも言うのが憚られる極度のシスコンであること。
そしてもうひとつは、妹の思っていることが一言一句違わず分かってしまうということだ。
《だってお姉ちゃん、天然が過ぎるんだもん! 私が守らなきゃ!》
頭の中に飛び込んできた妹の言葉に正直ニヤニヤが止まらない。本人に気付かれないように横目で見ると、頬を膨らませながら拳を握ってぷりぷりと憤っている。そんな見るからに嫉妬と見間違う姿を見て、正面のそこそこイケメンである彼女の先輩は嬉しそうにまた私と話を弾ませる。その脳内を占めているのは決して私のことではない。
《秋月、嫉妬か? 嫉妬なのか⁉︎ 俺にも希望があるのか!!?》
あー、もう、この子たち可愛すぎるでしょう!
学生のころから読んでいる少女漫画も顔負けの場面を、まさか最愛の妹が提供してくれるとは思わなかった。彼女には悪いが、正直楽しい。楽しすぎる。
(そうねぇ、もう少し楽しんでも良いよね)
妹の苦労は全て筒抜けにも関わらず、それでも一筋縄では通させない自分の性格は何と捻じ曲がっているのだろうとは思う、思うのだがしかし。
(ふふふふふ、かぁわいいー)
可愛いから仕方ないし、仕方ないものはしょうがないのだ。
姉:玲奈
妹:由奈
先月末にアップしようと思ってし損ねてました。
あけましておめでとうございます(大遅刻)。
今年もマイペースにマイペースを重ねた歩速で参ります。どうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m




