微笑み
バレンタイン辺りに投稿しようと思ってバタバタ失念してました。
本当はもう少し書き足したかったけど、ありのまま大変短い姿で放流します。つまりはいつも通りです。
いいことをしよう、と彼は手首の内側に唇を落として言った。その視線はまるで刃のようだ。切りつけ射抜かれる、背筋を駆け上る何かにぞくぞくした。
「ワタシで良いのかしら?」
「あなたが良いんだ」
慣れていそうなやり取りにこちらも薄く微笑んだ。絹のようなブロンドも、透けるような碧眼も、服越しにも分かる鍛えられた身体も、耳元で囁くテノールも。全てが測られたように扇情的で酔いそうになる。さりげなく腰に伸ばされた手にも不快感は無く、寧ろ情欲を掻き立てるように伝わる熱が心地よかった。
「お勘定を」
見て見ぬ振りをするバーテンダーにルームナンバーを告げる。酒代はチェックアウト時に払えば良い。少しの時間も惜しかった。
滑るように乗り込んだエレベーターで抱擁を交わし唇を重ねる。互いが溶け合い、ない混ぜになる。鼓動が早まり衝動的になる。フロアに着いた頃には少し乱暴に彼のネクタイを抜き取った。
「ワタシで良いのね」
「何を今更」
部屋に入るなり早々ベッドへなだれ込み、彼を仰向けにさせ馬乗りになった。イエスの言質をとってキスを降ろす。
「じゃあ、悪いことをしましょう?」