漫才「熱帯魚」
はいどうもー。お願いします。
ツッコミ:
俺、熱帯魚飼ってるんだけどさ、あいつらが羨ましいなって。
ボケ:
どういうこと?
ツッコミ:
水槽からは出られないけど、何も考えず餌を食べて泳ぐだけでいいじゃん?
羨ましいよ。俺もいっそ、熱帯魚になりたい。
ボケ:
なるほど。じゃあお前熱帯魚やって。俺は水槽やるから。
ツッコミ:
あ、違う違う!そういうコントやりたいとかじゃないから!
お前の水槽やるの意味も分かんないし!
ボケ:
(見えない壁のパントマイムをする)
ツッコミ:
それで水槽のガラスを表現してるの!?
それだとお前、水槽に閉じ込められた小人みたいになってるからね!?
ボケ:
あ、熱帯魚さん。僕をここから出してはくれませんか。
ツッコミ:
そのまま小人を演じてるよこいつ……。
上まで泳いで出ればいいんじゃない?
ボケ:
こいつ口パクパクさせてるだけで何言ってるか分かんねえよ。
ツッコミ:
なんでそこはリアル設定なの!?
お前当然のように水中で息してるのに……。
ボケ:
俺は泳げないから、このままここで飢え死にするしか……。
……ん?なにか降ってきたぞ?こ、これは……美味い!
ツッコミ:
ああ、エサの時間か。
ボケ:
いっぱい降ってくるぞ!あの巨人が入れてくれたのか。
こっち見てる。おーい、ありがとうなー!
ツッコミ:
なぜ飼い主はこの水槽の違和感に気付かないの!?
とんでもない異物が紛れ込んでるんだよ?
ボケ:
こんな美味い飯が支給されるのか。しかしこんな所にいるわけには……。
……1週間後。
ツッコミ:
勝手に時間進められた!?
ボケ:
いやもうここは天国ですわ。飯は美味いし敵もいない。
ツッコミ:
順応してんじゃん!
いつまでいるんだよこいつ。
ボケ:
そんなこと言わずにずっといさせてくれよ。
ツッコミ:
俺の言葉が伝わってる!?
1週間で何があった。
ボケ:
でも昨日、飼い主が気になる事を言ってたんだよ。
ツッコミ:
気になる事?なんて言ってたの?
ボケ:
そろそろこいつら売り時だなって。
ツッコミ:
え?俺売られるの?
しかも何故かナチュラルにお前も頭数に入れられてるよ?
ボケ:
だから俺達にエサをたくさん食わせて太らせたのか。
ツッコミ:
俺ら食用なの!?
俺はまだしも、お前は一体どうやって食べられるの!?
ボケ:
売られるわけにはいかない。一刻も早くここから逃げ出そう。
ツッコミ:
でも俺は水から出たら呼吸できないし……。
ボケ:
……よし分かった。
まず水槽から出るためにお前は俺を上まで乗せてってくれ。
水槽から出たら今度は俺がお前を背負っていくよ。
ツッコミ:
うん。それっぽい交換条件だけど、呼吸の件は完全に無視してるよね。
陸で背負われてる俺はそのまま息絶えるからね?
ボケ:
くそ!なんでこんな事になってしまったんだ!
ツッコミ:
それはお前が勝手に水槽に入ってきたからだろ。
そもそもどうやって入ってきたんだよ。
ボケ:
それは遠い地からテレポートで。
ツッコミ:
テレポート!?
お前テレポート使えるの?ここから脱出できるじゃん。
ボケ:
確かにテレポートならお前も連れて行ける。
しかし1年に1回しか使えないんだよ。
ツッコミ:
じゃあテレポートは諦めるか。
ボケ:
一か八か、こうするしかない。
……1年後。
ツッコミ:
無理無理!1年後は絶対売られてるから!
しかも時を進める能力みたいな感じで使わないで!
ボケ:
なんとか売られずに耐えたな。
ツッコミ:
ご都合主義すぎる!
ボケ:
俺らの間に子供が出来たお陰だな。
ツッコミ:
めちゃくちゃ気持ち悪い事言ってる!
男同士だし、そもそも異種交配すぎるでしょ!
ボケ:
子供は本当によく俺らに似てるよな。
首から上は俺で、首から下は俺。
ツッコミ:
お前の遺伝子が強すぎる!もうそれお前じゃん!
俺の要素一個も無いよ!
ボケ:
えら呼吸はお前似だよ。
ツッコミ:
嫌なとこだけ引き継いだな!
じゃあ一年経ったからテレポートして逃げよう。
ボケ:
えー。腹減ったよ。次のエサまで待とうよ。
ツッコミ:
危機感無いなこいつ!
脱出したら好きなだけ食べていいから。
ボケ:
なるほどな、じゃあやるぞ!
ツッコミ:
え?ちょっとどこに、
ボケ:
おりゃあ!……よし、成功だ!
ツッコミ:
どこにテレポートしたの?
ボケ:
水槽横のエサ置き場だ。
ツッコミ:
近場すぎる!どんだけ食に貪欲なんだよ!
あと俺と子供息できないじゃん!死ぬって!
ボケ:
いや大丈夫だよ。水槽ごと移動したから。
ツッコミ:
じゃあ脱出できてないよ!ちょっと水槽横にずらしただけじゃん!
……ってこれなんなんだよ!俺は熱帯魚になりたいって言っただけなのに!
ボケ:
でも熱帯魚も大変だったろ?
ツッコミ:
お前のせいだよ!
もういいよ。
どうも、ありがとうございましたー。