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魔女と騎士  作者: ラヴィ
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プロローグ


 あの森には魔女が住んでいる。 

 見られたら最後、決して生きては帰れない。

 この街では昔からあの森には近づいてはいけないと、そう教えられる。

 ただ俺達はそれを知りたかった……、あの森には何があるのかが………。

 それが知りたいが為に俺達は魔女を見たいが為に森に入ていく。

 それが全ての始まりだった。

 

●

 サリア歴207年 10月4日


 三人の子どもたちが森の中で揉めていた。

 薄暗く、僅かな光が指す程度中で子供達の声が森の中で響いていた。


 「ハイド君だめだって!魔女の屋敷に行くなんて!言われているだろう、あの森に近づくなってさ……。」


 眼鏡を掛けた子供はハイドという少年を止めようとするが、当の本人は何事も無いかのように言い返す。


  「大丈夫だって、ちょっと屋敷の中に忍び込むだけだし、少し中を覗くだけだからさ。」


 眼鏡の少年の制止に対して、少年は気にせずに行こうとするが。


 「ダメよ!あそこには魔女が住んでいるって言われてるていつも言われているでしょ……。全く、ハイドのお父さんはこの街の町長なんだから怒られたら大変でしょう!」


 1人の少女は彼を説得し止めに入るがやはり何事無いだろうと勘ぐっているらしく、


 「大丈夫、三人で行けば一人よりは安全だから行こう!それにお前達も知りたいだろ魔女がどんな奴なのかさ?」


 「三人なら怖くないかも……。」


 眼鏡の少年には彼の根拠の無い言葉に対してやる気が出始めていた。


 「あんたたちバカなの!もういいわ私は帰るから!」


 「シーラ、お前一人で帰れるのかよ?」


 「………うるさいわね。分かった、行けばいいんでしょう、行けば……。」


 少女は1人で帰れないと判断したのか、彼の呼びかけに嫌々応じる。


 「私もついていくわ。二人を置いて行って何かあったら困るもの。」


 そして、三人は森の中を進んで行く。森は薄暗いが何故か不気味さは感じられない。光が森の木々に差し込み神聖さまで感じられる程だった。

 

 「本当にこの先、魔女の屋敷なんてあるのかよロラン?」


 「あるよ、僕のおじいさんが言ってた。あの森の中には大きなお屋敷があるって。その屋敷には魔女が住み着いているってさ。」


 「全く、怖いもの知らずなのよ。あんた達は………。」

 

 そうして歩いていく内に例の屋敷と思われる建物が視界に入り込む。

 屋敷の前に三人は到着すると、驚きを隠せないでいた。


 「着いたぞ例の屋敷だ。準備いいか?」


 少年の呼びかけに二人応じるが、少女はそれに首を振る。


  「やっぱり、帰ろう。危ないわよあんな大きな屋敷に魔女が住んでいたらどうする気よ?食われでもしたらどうする気?」


 「多分大丈夫だよ、シーラ。前にはこの屋敷に老夫婦と小さな子どもがいて親がなくなって子どもは屋敷の執事が育てていたらしいけどそれは何百年も前だから今は誰も住んでいないはず、多分……。」


 ロランの説明にハイドは驚く。


 「お前やけに詳しいな。どこでそんなこと知った?」


 「図書館で色々調べててたまたまそれが書いてあったの。ハイド君は本をちゃんと読んだほうがいいよ。」


 そんな二人に対し少女、シーラは屋敷の窓を指した。


 「そんなことより、そんな昔の事なのに、今も屋敷が明るいのはおかしいわよ。あんな森の奥で誰が住んでいるって言うの。」


 少年二人はその明かりを見ると。


 「あれ……やっぱり誰か住んでいるの?」


 「だから俺たちがそれを見に行くんだろ!魔女がどんな奴なのかこの目で確かめたいし。行こうぜロラン、シーラも早く。」


 ハイドが屋敷の裏口に回り鍵が空いている事を確かめると躊躇いも無くそこから屋敷に入っていく。

 最初は嫌々応じる二人だったが、彼の行動力故につられて他二人も入っていった。


●


 裏口から入り、台所と思われるところに三人は入っていた。

 台所にはいくつか作りかけのスープなどが見られ、棚の上から菓子と思われるものまで見られる。

 少なくとも数時間前までは、生活していた痕跡がそこにはあった。


 「侵入成功!よし、これから俺達この屋敷の探索を始める。それでは作戦開始……。」


 「シーラも早く行こう……。ハイド君1人は、流石にまずいし……」 


 「二人には敵わないわよ、全く……。」


 三人は屋敷の1階を探索して、特に何も見当たら無いと二階に上がった。

 1階にはやはり生活した痕跡が見られており、誰かは確実に住んでいるだろうと、3人も流石に理解出来ていた。

 二階部屋を探索中、ある部屋で看板を発見する。 そこには[私の部屋]と書かれた看板が扉に掛けられており。

 その看板を見つけた3人は驚いていた。


 「見つけたぞ、魔女の部屋だ。この中が魔女の本拠地なんだよ。」


 眼鏡の少年、ロランは扉に耳を当てて音を確認する。しかし、中からは何も音が帰って来ない。


 「部屋からは特に音はしないから大丈夫だと思うよ、たぶん……」


 「もうやめよう。さすがにもうまずいよ。屋敷の探索では十分でしょ!」


 シーラは二人を、説得するがハイドはやめようとしない。 


 「ここまで来たらやるだけやろう、魔女を見つけるまで!」


 「そうだよ、シーラ。もうここまで来たんだ。魔女を見るまでは帰らないよ。」

 

 「もう、知らないからね………。」


 三人はその部屋にゆっくりと恐る恐る入る。

 部屋は薄暗く中はよく見えないがホコリ等は無く意外に綺麗に整っていた。

 そして、視界にベッドが目に入る、明らかにそこで誰かが寝ている。

 余程深く眠っているのか全く三人の事には気づいていない様子だった。

 

 「誰か寝ている。こんな昼から寝ているなんてやっぱり魔女に違いない。」


 「昼寝を、していれば魔女って………流石にどうかしているよ。」


 「でも、ここまで来たら引き返す訳にはいかないだろ。魔女の顔を見てやる。いいか、これで魔女の噂の正体が分かる。そして、その魔女は今、この目の前で寝ているんだ。」


 「でも流石にダメよ。いくらなんでも魔女よ。機嫌を損ねたら何されるか分からないよ、二人共引き返すなら今なんじゃ……」


 「でも、やっぱり気になるよ……。」


二人がそうこうしている間にハイドは魔女と思われる人物の布団を取り上げる。

 そして、そこから現れたのは自分たちと同じくらい、いや少し年上程度と思われるの銀髪の少女が眠っていた。

 少女の容姿はあまりにも整い過ぎており、芸術ひんとも呼べる程の顔立ちをしていた。

 

 「これが魔女……?どっからどう見ても俺たちとあまり変わらない女の子…だよな?」


 「でも僕たちよりは少し年上くらいじゃないかな?」


 「ほら、もう十分でしょ!もう帰ろう!」


 「そうだよ。って、何しているのハイド君!」


 ロラン達の視線の先でハイドは少女を揺すって起こそうとしていた。


 「何って、起こしているんだよ。こんなところに置き去りも悪いだろ。」


 そして、当たり前のように少女は起きてしまう。眠そうに目を擦り、少女は3人を視界で確認すると不思議そうな顔をして3人眺める。


 「誰、君たち。こんなところで私に何の用?」


 少女の問いにハイドが答える

 「ええと、その……まあな……。なあ、ここはお前の家なのか?」


 「そうだよ。ずっと前から住んでる。」


 彼に次いでロランも質問を投げ掛ける。


 「あなたの他の家族は、今どこに?」


 「…うーん……ずっと前に死んだから今は墓の中にいるんじゃないのかな……?」


 「そうですか………。」


 「しばらくぶりのお客さんだし……。良かったらお菓子とか食べる?」


 「「いいんですか?」」


 目の前の少女はそれに笑顔で答える


 「人に会うのは二週間ぶりだからね。誰かと話すのは嫌いじゃないし。それに一人より大勢の方が楽しいでしょう?」

 

 少女に応接室に案内され、三人は大きなソファに座る。


 「じゃあ少し着替えてから、お茶とお菓子持ってくるね。ここでちょっと待っててね、すぐに戻るから。」


 楽しげなのか、ウキウキしながら少女は部屋を出ていく。


 「どうする?なんか歓迎されてるけど。なんか裏がありそうな感じだなぁ。」


 「いい人のように見えるけどね……?」


 「確かに、せめて帰るなら、その……お菓子を食べてからでもいいんじゃない?」


 「シーラはお菓子食べたいだけだろ。」


 「そうですよ……なんか悪い二人共!」


 「いいや、何も。」


 「ねえ、ハイド君。それでさ、これからどうするの?」


 「とりあえず、あの人についてもう少し調べてみようと思う。あの人が本当に魔女なのか確かめてみたいし。」


 そうして時間が過ぎていくと着替えを終えた少女がお菓子とお茶を持ち戻ってきた、


 「朝作っておいたのだけど。よかったらこれ食べて。そうだ、私の自己紹介忘れてたね……。ええと、私の名前はシファ、シファ・ラーニル。よろしくね。」


 ハイドはそれに応じ、


 「よろしく、シファさん。早速聞きたい事があるんですけど、いいですか?」 


 「私に答えられそうな事で良かったらなんでも聞いて。」


 「じゃあ、どうしてこんな森の奥深くのところに住んでいるんですか?」


 「ずっと前からここに住んでいるから、なのかな?住んでいて、屋敷の全体からかなりボロくなってきてるけどその度に私が少しずつ直しているんだよ。やっぱりここが一番落ち着くからね……、だからずっとここに住んでいるんだよ。」


 「そうですか、ありがとうございます。あのそれじゃああなたは魔………。」


 ハイドが聞こうとするのを遮るようにロランの声が部屋に響く。


 「大変だよハイド君、もう外があんなに暗いよ……。早く帰らないと怒られる。」


 「そうよ、ハイド。暗くなって来たからそろそろ帰ろう。また改めて来ればいいんだし……」


 ロラン達の呼びかけにハイドは窓から外を見てみると辺りは既に夕暮れになっていた。


 「そうだな……。また後で来ればいいか、そろそろ帰ろう。」


 「そっか、それじゃあ仕方ないね……。良かったら街までついて行ってあげるよ。夜になると夜行性の獣に襲われたりするから子ども三人じゃ危ないし。」


 「それはありがたいんですが、シファさんは大丈夫何ですか。その……」

 

 ロランが心配そうにシファへ尋ねると、シファは心配無いというばかりに右腕に身に着けている銀色の腕輪を3人に見せる。


 「大丈夫。私はこれでも強いから問題ないよ。」


 そういうとシファの腕輪が光り輝き、腕輪の形が剣へと形が変わった。


 「すごい……」


 「綺麗……。」


 二人はシファの持つ剣に見とれているなか、ハイドはシファの表情が僅かに暗い事に気が付く。

 シファの顔には少しもの寂しそうな何かが伺えているが、それが何か分からなかった。


●

 それから、シファが軽く身支度を済ませると、四人は屋敷を出て森を歩く。

 少し楽しげな会話を交わししばらく歩くと突然シファは三人に声を掛けた。


 「三人は隠れて………。」


 シファが三人を、木の陰に隠して声を出す。


 「そこに居るんでしょう、出てきなさい。」


 そういうと向こうから白い仮面で顔を覆った男が現れる。


 「私に気づきましたか、さすが噂通りのお方だ……。」


 男の声はおぼろげで3人の子供達の頭の奥に響いて来る。


 「私を知っているなんて珍しいね、どこの手の者?」


 「私はあなたの連れているその子供に用がありましてね、こちらに身柄を渡してくれませんか?」


 「君は信用出来ない、それにその子達を一体どうするつもり?」


 「彼はその内私達にとって厄介な者になるのでね。だから今の内、早急に消さなければならないと上からありまして……。」


 「何があるの、今のその子達に?」


 「やはり分かっているではありませんかシファ。いいえ、サリアの王国騎士団、ヴァルキュリア初代団長シファ・ラーニル殿。」


 「…………。」


 「まあいい多少強引になりますが………。」


 男がそう言った刹那、突然空気が重くなり、閃光が森に放たれる。そして……。


 「動くな、これ以上の妙な真似をすれば、今度はその首を断つよ。」


 気づくとシファが男の喉元に剣を向けていた。

 剣先が僅かに触れ、男の首から血が僅かに垂れていた。

 あまりの一瞬過ぎる出来事に男にも仮面の下から驚愕の表情が伺え膝から崩れ落ちた。


 「っ………なるほど、やはりあなたはお強い……。噂以上だ…。」 


 そう言うと男は両腕を挙げ、降参の意を示した。


 「参りましたよ。今回は、手を引きます。しかし覚えて下さい、私が手を引こうとも私以外の者が再び来る事に。」


 「その時も私が守るだけだよ。」


 そう言うとシファが剣を引き、ゆっくりと男が立ち上がる。  


 「そうですか……。ではまた、いずれ別の機会に。運良く生き延びましたね……。」


 その言葉が誰に向けられたのか見当がつかないが、男は忽然と森の奥へと消えて行った。

 騒動が落ち着くと、シファは武器を下げ3人に声を掛ける。

 

 「それじゃあ、君たちを早く送らないとね。」

 

シファは笑顔で三人に手を伸ばすが、先程とはかけ離れた彼女の行動に三人は少し戸惑いを見せる、その中シーラはシファに話し掛けた。


 「あなたは一体?」


 その問いに対してシファは………。 


 「そうだね……。元騎士と言った方が適切なのかな……。私はこの外見だけど君たちよりずっと長生きしている。詳しい理由は上手く説明出来ないんだけどね。まあ、それはいつかゆっくりと話す機会にでもね。それより、みんな早く帰ろう。」


●


 シファの声に先頭され3人は森を無事に抜け無事に街にたどり着いた。

 シファにお礼を言う3人であったが、その中ハイドはある提案をする。

 

 「シファさん、良かったら今夜俺のの家で食事でもどうですか?今回のお礼をしたいので……。」


 突然のハイドの提案にシファは戸惑う。


 「ええっと……悪いけどそれは………。ほら、親御さんにも悪いでしょう?」 

 

 シーラもハイドの意見に賛成なのか、追って説得する。 

 

 「大丈夫ですよ、ハイドの家はこの街の町長の家なんですから。あなたは私達を含め、さらに町長の息子の命の恩人……。」

 

 それを聞いたシファは、突然動きを止め、ハイドに質問する。

 

 「ねえ、君の名前は?」

 

 「ハイド……。ハイド・アルクス、町長の息子というか養子だけどあの人にはとても世話になっているんだ。」

 

 「……アルクス………、やっぱりまだ………。」


 シファは何か思い当たる節があるのか考え事をしている。

 突然血相を変えたシファの様子に3人も困惑する。

 

 「ハイド、シファさんどうしたのかな?」


 「多分町長との昔の知り合いだったとか?」


 「本当に、それだけなのかな………。」


 シーラも考えては見るが特に何も浮かばない。

 そしてロランがとある光景が目に付き指さすと街には大勢の人が集まっていた。

 

 「シーラ、ハイド君。ほら……迎えがもう来てくれてるみたいだよ。」


 そして、ロランとシーラは自分の親の元に駆け寄っていく。

 それから、大勢の人の中から町長と思われる、長身で白髪、強面の男が現れた。


 「町長………。」


ハイドが男にゆっくりと駆け寄る、そして………。


 「ただいま、町長……。」


その刹那、突然ハイドは男から平手打ちを受けた。ハイドが2メートル程も吹き飛び、よろけながらもゆっくりと立ち上がる。


 「………なんで……?」


ハイドはあまりに突然の事に戸惑う。男はハイドに向かって……。


 「あれは魔女だ!!何故この街に連れて来た、ハイド!!!」


 男の突然の大きな罵声に街の人々も戸惑う。

 そして、男はゆっくりとシファに近づいた……。


 「何故この街に来た。」


 「この子達を送る為だよ。」


 「何故だ、未だに理解出来ない。どうしてそこまでして関わる。」


 「私は私の正しいと思っている事をしているだけだよ。」


 「あなたは間違えている。」


 「それでも……私は。スレッド、君の過ちを何度でも正すよ。」


 「まだ、自分の間違いを認めないのか………。」

 

 そうつぶやき、男はいきなりシファを蹴り飛ばしす。先程の彼女であれば躱せる程の威力だが、彼女は抵抗する事なくその攻撃を体で受け止めた。


 「魔女はこの街から出て行け!!もう二度とこの街に来るな!!」


 ハイド以上に吹き飛ばされ、よろめきながらもシファはゆっくりと立ち上がる。

 男の罵声は街中に響き、人々もそれに釣られたのかシファへの暴言を始める。

 それはすぐに激化し石を投げる者まで現れていた。


 「やめろ!!あの人は何も悪い事はしていない!むしろ助けてくれた!なのに、どうしてあの人を傷付けるだ!」

 

 ハイドの叫びは街の人々には届かない。

 シーラとロランも止めに入ろうとしているが、その足は動かない。

 二人は豹変した大人達に震えながらただその光景を眺めている。


 「やめろぉぉ!!」

 我慢に耐えられなかったのか、ハイドが叫びながら石を投げられるシファの目の前に立ち塞がる。

 そして投げられて来る石を受け止めようとするが、しかし………ハイドの肩を優しくシファが掴んだ……。

 「……ハイド君、もう十分だ……。君のその気持ちで十分だよ、私はこの街においては嫌われ者だからね……。でも、君たちだけでも味方でいてくれる。その気持ちだけで私は十分だよ………。」

 

 傷まみれの体でシファはゆっくりと立ち上がりこの街から去ろうとする。


 「シファさん!」

ハイドはシファの後を追い彼女を呼び止める。

 

 「大丈夫だよ、必ずまた会える………。あの森のあの屋敷に私は居るから……。」


 振り向いた彼女の顔には涙を浮かべながらも彼に向けて笑顔でそう告げた。

 そして彼女は傷を抑えながらこの街を去って行くのをハイドはその姿が見えなくなるまで見送った………。



●


 そして、あれから十年の時が過ぎていた……。


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