プロローグ
一際目を引く金髪は華やかで、日の光を浴びてキラキラと輝いて見えた。
透き通るような肌の白さは決して病的ではなく、輝く翡翠の瞳は宝石のようで、目を離すことが出来なくなった。
小柄ではあるが、まだ発展途上の未熟な肢体。
水色のドレスはセンスがよく、整った少女の顔立ちを一層愛らしく引き立てていた。
他にも同年代の貴族子息や令嬢は沢山集まっている。
だというのに、私の耳からは一切の雑音が消え、彼女以外の存在が霞み、王宮の中でも来なれたいつもの中庭がとても神聖な場所に思えた。
他の令嬢と話していた彼女が不意に視線を動かし、彼女と、目があった。
けたたましく鐘が鳴り響き、ビクリと体が跳び跳ねた。
実際は鐘の音が私だけのものだと、自覚はあった。
そしてこれが、自分が恋に落ちた瞬間だとも理解した。
知らず、体が動いた。
彼女の元へまっすぐ突き進み、正面に立つ。
少女は怪訝な顔をするも、臆さず背筋を伸ばし綺麗な立ち姿を崩しもしない。
私の喉は干上がっていた。
お祖父様との約束は頭から消し飛んでいた。
だから、言いつけられていた令嬢とは別の少女の前にフラフラと吸い寄せられ、口にしてしまったのだ。
「お前はこの中で一番美しい!だからこの私と婚約する、栄誉を与えてやろう!お前、将来私の妃になれ」