一話
小さな世界~もう一人の彼~
//////////////登場人物//////////////////////////////////////////////
彼 ♂
双子のマリアとジョシュアに小さな世界へと誘われた男。20代後半。
ボブ ♂
小さな世界でギター弾きとして音楽活動をしている黒人の男。40代後半。
マリーの夫であり、マリアとジョシュアの父親。
アンナ&ルイ ♀
小さな世界の音楽活動において歌の詩を書いている女性。30代後半。
レズビアンであり、ジェシーとは10代のころから付き合っている。
ルイはシルフィリアの所に居る、7歳の男の子。
ジェシー&ロナ ♀
小さな世界といわれる団体の活動でボブと一緒に音楽活動をしているボーカルの女性。30代後半。
アンナと同じく同性愛者であり、10代のころから付き合っている。
ロナはシルフィリアの所にいる、6歳の女の子。
マリー ♀
小さな世界の代表であり、ボブの妻にして、マリアとジョシュアの母。40代前半。
元は生活保護を受けていたが、いまは慈善事業として小さな世界を運営している。
ジョシュア&ウルフリック 不問
マリアの双子の兄。人を食ったような話し方をする。14歳。
ウルフリックはシルフィリアの所に居る、8歳の男の子。ウルと呼ばれている。
マリア&シーリア ♀
ジョシュアの双子の妹。おっとり丁寧な話し方をする。14歳。
シーリアはシルフィリアの所に居る、4歳の女の子。
シルフィリア&リディア ♀
後に小さな世界と提携を結ぶ事となる孤児院に住んでいる少女。16歳。
リディアはボブの若い時のバンド仲間です。
テオ 不問
シルフィリアの居る孤児院に匿われた少年。12歳。
ロゼット&ルナ ♀
最近名前を聞くようになった、小さな世界に興味を示し、インタビューをしにきた女性。ギリギリ20歳前半。
ルナは、最後の方に出てくる22歳のインタビュアーです。眼鏡、三つ編みっ娘。
ユライプ&ケン ♂
テオの父親。あんま出てきません、なんなら、被りでもいいです。
ケンはボブが若い時のバンド仲間です。
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マリア
「こんにちは」
彼
「なんだ、お前たちは?」
ジョシュア
「ボク達、いろんな家を回って話をさせてもらっているんだけど、よかったらいいかな?」
マリア
「小さな世界っていう所なんですけど、聞いたことないですか?」
彼
「・・・いや、ないな」
ジョシュア
「そっかぁ、知らないのかぁ、なら尚更聞いてもらいたいな~」
彼
「面倒なのはごめんだ、帰ってくれ」
マリア
「あっ!そんな事言わないで、少しだけでいいから!」
彼
「しつこいぞ、帰れ!」
ジョシュア
「おじさん、家賃かなり滞納してるんでしょ?」
彼
「あ?・・・なんでそれを・・・」
マリア
「大家さんから聞いたの」
ジョシュア
「それで、もしよかったら、家に来ないかなぁ~、なんてね」
彼
「は?家?何言ってんだお前ら」
ジョシュア
「どう?おじさん、騙されたと思ってさ」
マリア
「そうよ、寝るところと食事くらいは出せるわ!」
彼
「・・・俺は・・・」
マリア
「もう!うじうじ悩んで!男らしくないわね!」
彼
「あんだと?」
ジョシュア
「うじうじしてないって言うならさ、一緒にきなよ~。それとも、ボク達が怖い?」
彼
「は?馬鹿にするなよな、ガキの癖に・・・。連れて行けよ」
ジョシュア
「はいはい、じゃ行こうよ、おじさん」
彼
「おじさんかよ・・・」
マリア
「だって、名前教えてくれないじゃない!」
彼
「あぁ、俺の名前は・・・」
ジョシュア
「ふ~ん、ま、おじさんでいいや、ボクはジョシュア」
マリア
「わたしはマリアよ、よろしくね、おじ様」
彼
「はぁ、まぁ、いいか・・・」
マリア
「さっ、着いたわ!」
彼
「ここがそうか」
ジョシュア
「一名様ご案内~」
マリー
「あら、その人が新しい人?」
マリア
「ええそうよ!家賃滞納してるみたいだから、連れて来ちゃった!」
ジョシュア
「ようこそ!小さな世界へ」
彼
「・・・小さな世界ね・・・どんなところなんだ?」
マリー
「そうね、生活とかに困った人が来るところ、かしらね」
彼
「はぁーん・・・」
ジョシュア
「じゃ、ボク達は向こう行ってるね」
マリア
「そうね、行きましょう兄様」
マリー
「ええ。・・・よかったら、少しこっちで話をしてもいい?」
彼
「ああ」
マリー
「ここで話しましょう。座って」
彼
「ああ」
マリー
「わたしは、ここの代表のマリーよ」
彼
「代表、ね」
マリー
「まぁ、代表といってもたいしたことはしてないけれどね」
彼
「いいんじゃねーか?こういうことを自分から始めたってことだろ?」
マリー
「そうね、切っ掛けはあったけど、それでも一人の力ではないわね」
彼
「そりゃな、一人でやるのは無理だろうな」
マリー
「さ、なにから話しましょうか・・・」
彼
「・・・・・・」
マリー
「まずは、そうね、あなたの事を聞かせてくれないかしら?」
彼
「んじゃ、まずは、この建物のことを教えてくれねーか?」
マリー
「そうね、それが先よね。ここは小さな世界といって、ホームレスや生活保護、お金のない人、鬱病とか、そういった精神病で困っている人が集まるところね」
彼
「・・・金には困ってるけどな」
マリー
「そうでしょうね、あの子達、そういう人探してくるの得意なのよ」
彼
「俺はお眼鏡に叶ったっていうわけだ」
マリー
「そうね・・・。あなたを見ていると、話したい事とかあるんじゃないかって、そう感じるわ」
彼
「あ?そいつは」
マリー
「余計なお世話?」
彼
「あ?・・・ああ・・・」
マリー
「話したくないなら無理にとは言わない」
彼
「なんか、あんた、母親みてーだな・・・あぁ、わるい意味じゃねーんだ」
マリー
「母親だもの」
彼
「あ?ああ、あのガキ共がもしかしてそうか?」
マリー
「ええ、そうよ」
彼
「あんま似てねーのな」
マリー
「そうね、見た目に関して言えばね・・・。あの子たちは私の大切な子供達よ」
彼
「あいつらマセてるぜ」
マリー
「そう?でも悪いマセ方じゃなくなかった?」
彼
「まぁ、なぁ、男のガキの方はちょっと生意気だったけどな」
マリー
「ふふ、ごめんなさいね」
彼
「ま、俺よりはましさ」
マリー
「そうなの?よかったら話してくれないかしら?」
彼
「・・・他の奴らにも言うのか?」
マリー
「あなたが嫌なら言わない」
彼
「ふぅ・・・ま、いいけどよ」
マリー
「あまり言ってほしくはなさそうね」
彼
「・・・俺の母親は売春婦だったんだ」
マリー
「そう」
彼
「・・・色んな男を捕まえてきては、俺の前でも平気でヤりやがった」
マリー
「嫌な気分になった?」
彼
「はっ!当たり前さ」
マリー
「恨んだ?」
彼
「あ?・・・いいや」
マリー
「そうね、そんな風にはみえないわね」
彼
「・・・優しかったんだ」
マリー
「そうだったの・・・」
彼
「ある日、母親がまた男を連れて来た。だけどな、そいつは今までのと違くてな、俺を殴ってきたんだ」
彼
「それを止めた母親も殴られた・・・。そいつは銃を持ってたんだ、そいつが母親を殴りつけている間に、俺はそいつの銃を奪ってな」
彼
「俺は、母親を殴った男を殺しちまった・・・」
彼
「そんで豚箱にぶち込まれたわけよ・・・出てきたときには、母親は居なかったぜ」
マリー
「あなたを置いて何処かにいってしまったの?・・・そうじゃなさそうね」
彼
「あの世さ、どっかに行ったといっても間違いじゃねーな。まぁ、性病をうつされたりとか、そんなことが原因なんだろうな」
マリー
「そう・・・それからはどうしてたの?」
彼
「働くにしても前科もちじゃな、なかなかなくてよ、あっても続かなかった。で、盗みをしてまたぶち込まれて・・・そんなのの繰り返しさ」
彼
「映画みたいな話だろ?」
マリー
「ええ、そうね。でも、現実よ」
彼
「信じるのか?嘘かもしれないぜ?」
マリー
「そう?だとしたら良い役者になれるわよ」
彼
「ちっ、あのガキの母親ってのも頷けるぜ」
マリー
「あなたも私の息子よ」
彼
「あん?」
マリー
「あなたが、許してくれれば、そうなれるわ」
彼
「ここの施設に入れってことか?」
マリー
「ええ。勿論、強制なんてしない」
彼
「強制はしない、ね・・・」
マリー
「それと、施設じゃなくて、家だって思ってくれた方がいいわね、周りも家族だと思ってくれれば、もしくは、同じような傷をもった、仲間と思ってもいいわね」
彼
「馴れ合いはごめんだ」
マリー
「なんだったら、利用するだけした後に、いつでも出て行ってもいいわ」
彼
「騙されて、うまい様に使われるぜ?」
マリー
「そんな人もいたけど、それでもいいのよ」
彼
「・・・お人好し集団か・・・」
マリー
「それでもいいのよ、そうそう、あなたの名前は?」
彼
「ああ・・・」
マリー
「言いたくないかしら?」
彼
「ふぅ、俺の名前は・・・」
マリー
「それがあなたの名前なのね」
彼
「・・・まぁ、な・・・だけどよ、あまり名前で呼ばれるのは好きじゃねーんだ・・・」
マリー
「そうなの、わかったわ」
彼
「あぁ、悪いな」
マリー
「いいのよ、それで、どう?・・・あら、電話だわ」
彼
「すこし、考えさせてくれ」
マリー
「ええ、急がなくてもいいからね」
ロゼット
最近名前を聞くようになった小さな世界という施設。
少し興味がわいたので、カメラに収めてインタビューしてもいいか聞いてみることにした。
ロゼット
「施設の代表の人は、マリーさん、、か・・・。よしっ!」
ロゼット
「あの、ロゼットという者なのですが、小さな世界の番号であってますか?」
ロゼット
「はい、あの、もし迷惑じゃなければ、取材に、あの、取材といっても、自分でカメラに収めて、それをネットで配信するような、ですけど・・・いいでしょうか?」
ロゼット
「それで、できれば代表の人とか、責任者の人とお話がしたくて・・・。あっ、代表の方だったんですね!すいません、それで、話を聞いてもらえると嬉しいのですけど」
ロゼット
「はい、はい、そうです、建物のなかとか利用者さんとか、え?インタビューとかも?はい!もしよろしければぜひ!はい、あ、本当ですか!?ありがとうございます!」
ロゼット
電話にでたのは小さな世界の代表のマリーさんだった。
施設の利用者の人には話をしてくれる事になった。
職員の人が揃っている方がいいだろうからと、その日を待つことに。
ユライプ
「さぁ、テオ、できたぞ・・・今日は、じゃがいものスープだ」
テオ
「・・・うん」
ユライプ
「じゃあ、頂こうか。・・・どうしたテオ、食欲が無いのか?」
テオ
「そんなんじゃ、ないよ」
ユライプ
「ほら、お食べ・・・」
テオ
「・・・うん」
ユライプ
「あぁ、そうだった・・・」
テオ
「とうさん?」
ユライプ
「母さんがお前が小さい頃、お前に食べさせてあげていたな」
テオ
「とう、さん?」
ユライプ
「さぁ、お父さんが食べさせてあげよう。こっちにおいで、膝の上に座るんだ」
テオ
「お、おれは、そんな、小さな子供じゃ・・・」
ユライプ
「駄目じゃないか・・・テオ。お父さんの言うことを聞かないと・・・」
テオ
「お、おれはもう、子供じゃない!」
ユライプ
「何を言っているんだ?お前はお父さんの子だろう?」
テオ
「そう、だけど・・・」
ユライプ
「さぁ、ほら、お父さんが食べさせてあげるよ」
テオ
「だからっ!おれはもう子供じゃっ!」
ユライプ
「テオっ!?」
テオ
「ひっ!?」
ユライプ
「ダメじゃないかぁ・・・言うことを聞かないとぉ!!」
テオ
「あぐっ!や、止めてよ父さん!!殴らないで!!」
ユライプ
「だめだろぉおおお!!」
テオ
「ひぐっ!!ぐぁっ!!あぐっ!!」
ユライプ
「お前は、私の子だぁ!わたしのぉおお!!」
テオ
「うっ、うわぁぁあああ!!」
テオ
これがいつもの、おれの家庭の日常・・・。
父さんは、おれが言うことを聞かないといつもひどく殴りつける
ユライプ
「テオぉおおお!!どこにいくんだぁあああ!!」
テオ
その日も同じだった。いつもと違うのは、おれは父さんから、家から逃げ出したこと・・・。
テオ
「っ!はぁ・・・・はぁ・・・」
テオ
どこをどう走ったのかわからない、父さんの声が聞こえなくなるまで、走り続けた・・・。
テオ
「っ!・・・きょう、かい?・・・す、すいませんっ!すいませんっ!!だれか!だれかっ!!」
テオ
教会、白い教会・・・そこを見つけたおれは、無我夢中で扉を叩いていた。
シルフィリア
「・・・?どうしたの?」
テオ
「ぁ、、あ、そ、その・・・」
シルフィリア
「・・・入って」
テオ
「ぁ、、っ・・・」
テオ
おれは頷いて、その人に招かれるまま、中に入った。
シルフィリア
「座って」
テオ
「あ、うん・・・っ、はい・・・」
シルフィリア
「そんなに、緊張しないでいいよ」
テオ
「ぁ、で、でも、おれ・・・」
テオ
おれを椅子に座らせると、その人はしゃがんで顔を覗き込む・・・。
綺麗な、蒼い瞳が、おれを見つめてた・・・。
シルフィリア
「怪我してるね・・・少しまっててね」
テオ
「ぁ、はい・・・」
シルフィリア
「少し、染みるかもしれないけど、ごめんね」
テオ
「っ・・!」
シルフィリア
「痛かった・・・?」
テオ
「へ、平気、で、す」
シルフィリア
「ん、これで終わり、本当に痛くなかった?」
テオ
「っ・・・平気、です。その、すいません、こんな、夜に・・・」
シルフィリア
「平気、気にしないで」
テオ
「あ、あの、おれ、いかない、、と・・・」
シルフィリア
「・・・誰かにつけられた傷だよね」
テオ
「ぁ、ち、ちがっ」
テオ
違う、そう言おうとしたおれを、さっきと同じ蒼い瞳が見つめた。
・・・憂いを帯びた、そんな眼が見つめている。
シルフィリア
「よかったら、話を聞かせて」
テオ
「ぁ、で、でも、いきなり、きて、その、おれ・・・」
シルフィリア
「・・・話しづらいことだよね」
テオ
「ぁ・・・うん」
シルフィリア
「話したくなかったら、無理しないで良いよ」
テオ
「・・・父さんから、にげて、きたん、です」
シルフィリア
「うん」
テオ
「なぐ、られて・・・それで・・・」
テオ
「いつも、いつも、っ、殴ってきて!!」
シルフィリア
「うん」
テオ
「それで、おれ、、家、出て・・・」
シルフィリア
「辛かったよね・・・それでも、お父さんが好きなんだね」
テオ
「・・・うん」
シルフィリア
「震えてる・・・」
テオ
「ぇ・・・ぁ・・・」
シルフィリア
「いいよ、落ち着いて、話して・・・」
テオ
震えるおれの手を、その人は両手で包み込むように握る。
・・・すごく落ち着いた。
おれは、その後も、話をした。
おれが生まれてすぐに死んだ母親のこと・・・。
会社の重役だったのに、リストラされた父さん、、でも、最初は優しかったこと。
いつの頃からか、言う事を聞かなかったりすると、暴力を振るうようになったこと。
・・・全部、話した・・・。
シルフィリア
「本当に、辛かったね・・・」
テオ
その人は、おれを優しく抱きしめる。
甘い花の様ないい匂いがした・・・。
シルフィリア
「ぁ、ごめんね、名前、まだ言ってなかったね。わたしはシルフィリア」
テオ
「・・・テオ、です」
シルフィリア
「よろしくね、テオくん」
テオ
「・・・はい、ぁ・・・」
テオ
安心したからか、おれの腹の音が鳴った。
・・・少し、恥ずかしかった。
シルフィリア
「ちょっと、待っててね・・・」
テオ
そういって、シルフィリアさんは、奥に向かっていった。
おれは、少し顔を上げて、周りを見渡してみた。
外からは教会に見えたけれど、像とかは置いてなかった。
ふと、シルフィリアさんが向かった場所とは違う方に眼を向けた。
テオ
「こ、ども?」
テオ
ドアの隙間から、おれの様子を伺うように、小さな子供が見ていた。
そんな子供と眼を合わせている間に、シルフィリアさんが戻ってくる。
シルフィリア
「ごめんね、はい、食べて」
テオ
「ぁ、はい、ありがとう、ございます・・・」
シルフィリア
「ん・・・どうしたの?」
テオ
シルフィリアさんが、おれにクラムチャウダーの入った器を渡した後で
ドアから覗いている子供に気がついて声をかける。
声をかけられた子供は、小走りで駆けてくると、シルフィリアさんに抱きつく。
少しの間、おれの事を見つめていたが、やがて、顔をシルフィリアさんの方に向ける。
シルフィリア
「眼が覚めちゃった?・・・トイレ?うん、いこう。・・・テオくん、ごめんね、また少し、待っててね」
テオ
「は、はい」
テオ
暖かくて、美味しそうなクラムチャウダーを見つめて、おれは・・・。
優しかった父さんを思い出していた。
最初は貯金もあったから、こんなのも、食べてたな・・・。
シルフィリア
「ごめんね、待たせて・・・。・・・食べててもよかったんだよ?」
テオ
「ぁ、おかえり、なさい・・・」
シルフィリア
「食欲が、でない?」
テオ
「そうじゃなくて、、その・・・」
シルフィリア
「・・・はい」
テオ
シルフィリアさんは、器を持ったおれの手に自分の手を添える。
もう片方の手で、スプーンを持ち、クラムチャウダーをすくうと
おれの口元に持って来る。
シルフィリア
「・・・ね?」
テオ
「・・・あ、っむ」
シルフィリア
「美味しい?」
テオ
「美味しい、です」
シルフィリア
「よかった」
テオ
そうやって、シルフィリアさんに食べさせてもらった・・・。
父さんから同じようにされて、それで、怒らせたのに・・・。
シルフィリア
「・・・足りた?」
テオ
「はい、ご馳走、さまでした」
シルフィリア
「今日はもう、遅いから・・・泊まっていって」
テオ
「で、も、おれ・・・」
シルフィリア
「お父さんが心配?」
テオ
「・・・・・・」
シルフィリア
「明日の朝、一緒に帰ろう」
テオ
「・・・うん」
シルフィリア
「ごめんね、わたしと同じベットで・・・」
テオ
「平気、、です」
テオ
その日はシルフィリアさんと一緒のベットで寝た。
ぬくもりが心地よくて、すごく落ち着いた・・・。
彼
「あー・・・その、こんちは」
マリー
「来たのね、決まった?」
彼
「その話なんだが・・・」
ジョシュア
「あれ~?まだ決めてないの~?」
マリア
「もう!折角誘ってあげてるのに!」
彼
「うるせーなぁ」
マリー
「すぐに答えを出さなくていいわ」
彼
「・・・なぁ、雇ってもらうってのは、駄目か?」
マリー
「そうねぇ・・・」
彼
「見たところ、人手は足りてなさそうだしよ」
マリー
「いいけれど、あまりお金はだせないわよ?」
彼
「ああ、わかってるよ・・・一日数ドルでいいんだ」
マリー
「それで、いいの?」
彼
「・・・そこのガキ共が来てから、大家が五月蝿くなくなったんだ。あんた等が、家賃肩代わりしてくれたんじゃねぇか?」
ジョシュア
「まぁ、そーなんだけどねぇ~」
マリー
「滞納した分はね・・・国から助成金がでてるから、そこから出しておいたのよ」
彼
「だろ?だから、その分は差し引いてよ、数ドルでいいんだ」
マリー
「そこに住み続けるつもりなの?」
彼
「そう、だな・・・まぁ、できればだけどな」
マリー
「ここに住めば家賃も必要なくなるけれど?それでも、嫌かしら?」
彼
「まぁ、そのな、、頼りっきりてのもな」
マリア
「硬いわね~」
マリー
「ここに住んで、手伝ってもらうことはできない?」
彼
「・・・俺は別に、病気とかじゃねーからよ・・・」
マリー
「病気じゃなくてもいいのよ?」
彼
「なんとなく、な・・・」
マリー
「わかった。あなたのところの家賃って、特に高いわけじゃないのよ。だから、そうね、家賃代込みでいい?」
彼
「いいのか?」
ジョシュア
「いいのかって、家賃どうするのさ?一日数ドルじゃ、家賃払えないよ?」
彼
「それは、また別に働いて・・・」
マリア
「できるの?出来るかしら?今までできなかったでしょ?」
彼
「・・・・・・」
マリー
「少し位、誰かに頼ってもいいのよ」
彼
「・・・悪いな、で、何からしたら良い?」
マリー
「まずは、そうね、受付からお願いできないかしら?」
彼
「あぁ・・・俺は愛想ねーぞ?」
マリー
「少しでいいのよ、実は明日、インタビューしたいって人が来るの、時間はお昼過ぎ位なのよ」
彼
「あー、その間、代わりをしてくれってことか」
マリー
「ええ、駄目かしら?」
彼
「昼、、だな、いいぜ」
マリー
「ありがとう」
マリー
「そうだったわ、聞き忘れていたのだけれど、あなた、車は乗れる?」
彼
「ああ、大丈夫だぜ・・・ムショからでて、少し働いていたときに取ったからな・・・暫く乗ってねーけどな」
マリー
「そう、よかったわ。もしかしたら、他にも頼むと思うから、お願いね。」
テオ
朝日の眩しさで眼を覚ます。
隣で寝ていたシルフィリアさんの姿はなかった。
おれは昨日の場所に行ってみた。
シルフィリア
「おはよう、テオくん。よく、眠れた?」
テオ
「はい、ありがとう、ございました」
シルフィリア
「ううん、気にしないで・・・。私と一緒で、狭かったよね?ごめんね」
テオ
「ぁ・・・また、、な、なんでも、ないです。大丈夫、でした」
シルフィリア
「まってね、いま、ご飯用意するから。そこの椅子に座って待っててね」
テオ
頷いて席に着く、周りには同じように座っている、おれより小さい子供たちが4人いた。
その子供達は、おれのことを興味がありそうなキラキラした眼で見ていた。
シルフィリア
「ごめんね、お待たせ」
テオ
「あ、ありがとうございます」
シルフィリア
「ゆっくり食べて」
テオ
シルフィリアさんがそう言うと、おれを待っていたのか、他の子供たちも食べはじめる。
コーンポタージュにレタスとトマトのサラダ。それから、チーズとハムを挟んだサンドイッチだった。
シルフィリア
「食べ終わったら、お父さんの所に戻る?」
テオ
「・・・そう、します」
シルフィリア
「・・・うん」
テオ
「あの・・・今って、何時ですか?」
シルフィリア
「そうだね、11時くらいかな」
テオ
「ぁ・・・そんなに、寝てたんだ・・・」
テオ
「ごちそうさま、でした」
シルフィリア
「お腹、落ち着いた?・・・もう、行く?」
テオ
「ぁ・・・っ、あの・・・おれ・・・その・・・」
シルフィリア
「言っていいよ」
テオ
「おれ、帰りたく・・・。帰りたく、ないです」
シルフィリア
「うん・・・。じゃあ、もう少しここに居る?」
テオ
「・・・いいん、ですか?」
シルフィリア
「いいよ。お父さんのことは心配だろうけど、、ごめんね」
テオ
「・・・すいません」
シルフィリア
「あ、テオくん、わたしね、これから行こうとしてる所があるの」
テオ
「お出かけ、ですか?」
シルフィリア
「うん、だから、少し待っててね」
テオ
「あ、はい、わかり、ました。・・・あ、あの、おれ手伝えることがあったら、だから」
シルフィリア
「うん、ありがとう。それじゃあ、みんなのこと見ておいてくれるかな?」
テオ
「わ、わかりました」
シルフィリア
「みんなの事、教えてなかったね。この子はテオくん、みんなも名前、教えてあげて」
テオ
「テオ、です。よろしく」
ウルフリック
「おれはウルフリック!ウルでいいぜ!よろしくな!」
ロナ
「わたしは、ロナよ」
ルイ
「ぼくはルイ、よろしく」
シーリア
「しーりあ、よろ、ちく」
シルフィリア
「それじゃあ、行って来るね」
テオ
みんなで行ってらっしゃいをする。
おれは、まだ違和感があったけど・・・それでも・・・。
ウルフリック
「で、お前、幾つだ!」
テオ
「え・・・12、だけど」
ウルフリック
「ぬ、お、おれは8歳だ・・・。と、年上だからってえばるなよ!おれのほうが長いんだからな!」
ルイ
「でたでた、ウルの先輩風、気にしないでいいから」
ロナ
「歳は上だけど、一番の甘えん坊さんよね」
ウルフリック
「なっ!う、うるさいな!」
シーリア
「おにーちゃん・・・」
テオ
「な、なに?」
テオ
昨日、夜に起きてきた女の子だ。
シーリアというその子は、おれの手を握りながら、大きな瞳で見つめてくる。
ロナ
「その子、すごい人見知りなのに、珍しい」
ウルフリック
「だなぁ~、おれにも中々懐かなかったぞ」
ルイ
「おねぇちゃんと歳が近いからじゃない?」
テオ
「ぁ、でも、子供には、慣れて、ないから」
ウルフリック
「大人面すんなよー、お前だって子供だろ!」
テオ
「そうだけど、さ」
ロナ
「ウルはウルだけにうるさーい」
ウルフリック
「なんだとー!」
ルイ
「はいはい。・・・テオ、ここのこと全然知らないでしょ?」
テオ
「あ、うん」
ロナ
「そうねぇ~、家の中を案内してあげる!」
ウルフリック
「2階から行くか!」
ロナ
「ここが、寝る所」
シーリア
「あたちたちの、寝るところ、なの」
ロナ
「ベットの下に服を入れる場所があるけど、下着とか盗んじゃだめだからね?」
ウルフリック
「お前の下着なんて、だれが盗るかよ~。なぁテオ、お前もそう思うだろ!」
テオ
「ぇ?ああ、う、うん」
ロナ
「なんですってぇ~?」
ウルフリック
「ほんとのことだろー?」
ルイ
「さて、見ての通り、ぼく達は同じ部屋で寝てるけど・・・。テオは昨日、おねぇちゃんの所で寝たんだよね?」
テオ
「あ、うん、そうだよ」
ウルフリック
「なんだよー、一人じゃ寝れねーのかよー!」
ロナ
「ウルが言えたこと?・・・たまに一緒に寝たいって言ってるの知ってるんだから」
ウルフリック
「ぐっ・・・!」
シーリア
「あたちも、一緒するよ?」
ルイ
「シーリアはまだ小さいからね」
ウルフリック
「ぐぬぬぬ・・・おっしゃ!なら、2階はこのくらいだな!」
ロナ
「ごまかした」
ウルフリック
「うるさい!さっ、次は一階だ!戻るぞ!」
ルイ
「ここがさっき食事をした所」
ウルフリック
「入り口開けたら、すぐに飯を食べるところが見える開放感!」
ロナ
「で、こっちが、ご飯を作るところよ」
ルイ
「一階は、こんな感じだね」
ウルフリック
「んじゃ、次は地下だな!」
ルイ
「それにしても、随分懐いてるね」
ロナ
「ずっと、手を握ったままね」
ウルフリック
「シーリア、こいつのこと好きなのかー?」
ロナ
「ウルって、デリカシーとかほんと無いわね」
ウルフリック
「でりかしー?なんだそれ?」
ルイ
「心配りとかのことだよ」
シーリア
「・・・おにーちゃん、優しそう」
テオ
「別に、優しくなんて、ないよ」
ウルフリック
「よし!地下行くぞ地下!」
ルイ
「ここが、地下室。暗いから、あまり入らないように言われてるね」
テオ
「これって、お酒?」
ウルフリック
「おう!そうだぜ!」
ルイ
「ワインだね。おねぇちゃんは、これと食べ物を交換してもらったりしてるよ」
テオ
「そうなんだ」
ロナ
「そこに小さな部屋があるでしょ?」
テオ
「うん」
ロナ
「病気の人とかが、たまに来るのよ」
テオ
「病気?」
ルイ
「そう、差別されたりするような、ね」
テオ
「そんな人の面倒も見てるんだ」
ロナ
「うーんとね、そこまでじゃないわ、何も出来ないもの」
ウルフリック
「注射とかするときに、集まったりするな~」
テオ
「注射?集まる?」
ロナ
「ここって、小さな町でしょ?病院も大きなのは無いの、だから発病こそしてないけれどって人に、薬を打ちに来る先生も居るの」
ルイ
「入院できる数も限られているからね、発病と発症は違うみたいだし、ぼくも詳しくは無いからよくわからないけど。
発症したらマズいけれど、そうでないならって人がくるね」
テオ
「そうなんだ」
ロナ
「ウルは注射、大嫌いだものね?」
ウルフリック
「うっ、注射は、嫌いだ!」
テオ
「そういえば、どこにも時計とかないんだね」
ロナ
「そうね、あと電話とかも無いのよね」
テオ
「不便じゃない?」
ルイ
「特にそう感じたことは無いかな」
テオ
「そうなんだ」
ウルフリック
「家の中はこんなもんかな?あとは・・・」
シーリア
「おそとで、ぶどう、つくっちぇる」
ルイ
「そうだね、テオは夜に来たんでしょ?」
テオ
「うん」
ロナ
「それならちゃんと見れてないでしょ?いきましょ!」
ロゼット
そして当日、時間は昼過ぎ。
小さな世界についた私は、早速、もってきたビデオカメラを片手に撮影を開始した。
ロゼット
「ここが小さな世界といわれる施設です。生活に困った人の相談などをしているそうです」
ロゼット
「建物の色使いは白くて明るい感じですね。中に入ってみましょう、中は広くて、テーブルなどが置いてありますね、フロア全体が談話室の様になっているのでしょうか?」
ロゼット
「あそこの人達は、利用者さんでしょうか?ちょっと話を聞いてみたいと思います!・・・すいませ~ん!インタビューさせていただいてもよろしいですか?」
ロゼット
話を聞いてみると、みんな落ちつた感じの人が多く、それでも中には明るい感じの人も居て、傍目には、あまり困っているようには見えなかった。
でも、話を聞いてみると、家庭環境に問題がある人も多く、同情してしまうこともあった。
中には、前科などがある人も居たけれど・・・そんなに危険そうには見えず、逆にそういう人のほうが大人しい印象を受けた。
マリー
「あら、もしかして貴女がロゼットさん?」
ロゼット
「あっ!はい、挨拶もなしにすいません・・・」
マリー
「いいのよ」
ロゼット
「早速ですけれど、職員さんは、他にどんな方達が居るんですか?」
マリー
「ええ、ボブとアンナそしてジェシーがいて、3人は音楽をしているから、今は歌を聞かせにいっているわね」
ロゼット
「歌、ですか?」
マリー
「そうよ。そろそろ帰ってくると思うから、話を聞いてみるといいわ」
ロゼット
「歌・・・いいですね!」
マリー
「ここが広間で談話室もかねてるの」
ロゼット
「人がまばらですけれど、利用者さんはこのくらいなんですか?」
マリー
「そうね、今日のことは話してあるから、カメラに収められるには抵抗がある人も居るし、そこは、しょうがないわね」
ロゼット
「お手数おかけして、すいません、顔出しがダメなら、モザイク処理などもしますって、言い忘れてました・・・」
マリー
「いいのよ、寧ろ、この家のありのままを見て欲しいから」
ロゼット
「先ほど、利用者の人を見かけて、少し話をさせていただいたのですけれど、みなさん落ち着いた感じで、明るいですね・・・ってすいません!マリーさんにお声をかけるまえに勝手にっ!あ、あの駄目なら、そこの部分はカットして!」
マリー
「そんなにかしこまらなくていいわよ?それにほら、先に代表を通してから利用者に質問するって、なんだか出来レースみたいで嫌じゃない?」
ロゼット
「出来レース、、ですか・・・」
マリー
「そう、だから、もう少し砕けた話し方でいいし、カメラに撮った利用者はこのことを知ってる人たちだから、大丈夫よ」
ロゼット
「すいません、それを聞いて安心しました」
マリー
「なら、よかったわ」
ロゼット
「あの、乱暴する人とか、暴れたりする人は、いないんですか?」
マリー
「そこはもう管轄が違うというか、ここはもう少し落ち着いた人向けね」
ロゼット
「なるほど、確かに暴れたりする人はきついですよね」
マリー
「ふふ、やっと少し打ち解けてきたかしら?」
ロゼット
「あ・・・はい、なんか、マリーさんはその失礼ですけど、お母さんみたいな感じで・・・すいません!」
マリー
「ふふ、実際母親だもの」
ロゼット
「そうなんですか?」
マリー
「ええ、さっき話した3人のほかに、ジョシュアとマリアって子がいてね、その子達は私とボブの子供なのよ」
ロゼット
「あ!それじゃあ、夫婦で経営してるんですか!いいですね、そういうの」
マリー
「ええ、お陰で肩の力を抜いてやれてるわね・・・。ここで話しましょうか」
ロゼット
マリーさんに案内された部屋に入ると、中には、女の人が二人と男の人が待っていた。
ボブ
「おっ!その人がインタビューしに来た人か?」
ロゼット
「ロゼットと申します!よろしくお願いします!」
アンナ
「よろしくね、わたしはアンナ」
ジェシー
「わたしはジェシーよ」
ボブ
「んでもって、俺がボブだ!よろしくな!」
ロゼット
「はい!よろしくお願いします!」
マリー
「それじゃあ、わたしは受付に戻ってるわね」
ロゼット
「あっ!・・・マリーさんにもお話を伺いたかったんですけど・・・駄目ですか?」
マリー
「そうねぇ・・・受付を空けちゃう訳にも行かないけど、少しならいいわよ」
ロゼット
「はい、すいません」
マリー
「いいわ、さ、座って」
ロゼット
「はい!」
ジェシー
「それで、何の話をすればいいのかしら?」
ロゼット
「そうですね・・・。この施設を作るきっかけとか教えてもらってもいいですか?」
ボブ
「きっかけだな、まずはそうだな、牧師さんと会った時の話からするか」
ロゼット
「牧師さん、ですか?」
マリー
「牧師といっても、別に、そういう仕事をしていたわけじゃないのよ」
ロゼット
「そうなんですか?」
ジェシー
「ええ、彼は、生活保護を受けていたわ」
ロゼット
「生活保護、、ですか・・・」
ジェシー
「ええ、そうよ。どう思う?」
ロゼット
「どう、思うと言われると・・・うーん」
ジェシー
「体のどこかが悪いってわけでもなかったわ」
ロゼット
「う~ん・・・でも、働けない理由があったんじゃないですか」
ジェシー
「社会に出るのが怖いから、自分は何の役にもたたないから、それが理由よ」
ロゼット
「・・・でも、きっと、、なにか、、私にはわかりませんけど、なにかあったんですよ!」
アンナ
「ジェシー、あの人は私と、同じ・・・だよ?」
ジェシー
「わかってるわよ、どう思うのか、聞いてみたかっただけ」
彼
「少し、遅れちまったな・・・ん?誰もいねぇのか?・・・とりあえず、ここにいりゃーいいのか?」
シルフィリア
「あの、ここの人ですか?」
彼
「ぁ・・・あー、あんたさっきからそこに座って、あぁ、誰かに用か?」
シルフィリア
「はい、聞きたいことがあって」
彼
「あぁ、ちょ、ちょっと、待て!?・・・俺は受付を任されただけで、あぁ、、っと・・・どうすりゃ・・・」
シルフィリア
「・・・・・・」
彼
「っと・・・確か、インタビューがどうとか言ってたな・・・となると。・・・ちょっと待ってろ!」
ロゼット
「ごめんなさい、私には、よくわからないです。でも、否定するのもおかしいかなって思います。働いている人の税金なのはわかるから、あまり良い目ではみられないかもしれないですけど・・・でも、きっと、、何かあったんですよ、わからないですけど・・・」
ジェシー
「そう、もし、条件反射的に否定するなら、帰ってもらおうとしていたのだけれど・・・。いいわ、付き合ってあげる」
ボブ
「超上から目線キター!」
ジェシー
「じゃあ、ボブ、聞くけど、もし否定されたら、あなたはいい気持ちがするかしら?」
ボブ
「殴るな!おう!・・・あ、いや、女は殴れねーや・・・」
マリー
「そうね、私も、昔は生活保護だったもの」
ロゼット
「そうなんですか」
マリー
「ええ、そうよ」
ロゼット
「あの、もしよかったら、マリーさんの過去とか、聞いちゃってもいいですか?」
マリー
「そうね、いいわ・・・あら?」
彼
「あぁ、悪い・・・」
マリー
「来てくれたのね」
彼
「あ、ぁあ、ちょっと遅れたけど、な・・・」
マリー
「いいのよ」
彼
「ぉ、おう。っと、受付で人が待ってたぞ、なんか聞きたいことがあるらしいぜ」
マリー
「そう、わざわざありがとう」
彼
「ぁ、ああ・・・いや、気にすんなよ」
マリー
「ごめんなさいね、ロゼットさん、受付に行かないと」
ロゼット
「あっ!いいんです!全然!すいませんお引止めしちゃって・・・」
マリー
「いいのよ、じゃ、いきましょうか」
彼
「あぁ」
ボブ
「あいつが、この間きたって奴か」
ジェシー
「来たと言うより、連れて来られたみたいだけれど」
アンナ
「あ~、ジョシュア達が連れて来た人だね」
ロゼット
「連れて来られた、ですか?」
ボブ
「ああ、俺達の子のジョシュアとマリアは、困ってる奴を探すのがうまいんだ」
ロゼット
「と、言うと?」
ジェシー
「そのままの意味よ、困ってそうな人を探して、連れて来るのよ」
ロゼット
「家とかに尋ねるって事ですか?」
アンナ
「そうだね、大家さんとかに話を聞いたりしてるみたい」
ジェシー
「それで実際に会って見て、大丈夫そうな人を連れてくるのよ」
ロゼット
「大役ですね!」
ボブ
「ああ、今のところ、ハズレって言うとおかしいが、まずい奴はいないんだよな」
ロゼット
「そうなんですか!人を見る目があるんですね」
アンナ
「そうだね、すごいと思うよ」
ロゼット
「みなさんは、ここでは何をしているんですか?」
ボブ
「ここでは、殆どなにもしてねーな」
ジェシー
「そうね、私達は外にでて、歌を歌ったりしてるわ」
ロゼット
「歌ですか!いいですね!どんな所で聞かせたりしているんですか?」
アンナ
「老人ホームとか、託児所とか、時にはコンサートの前座だったりとか、色々だね」
ロゼット
「コンサートの前座ですか、なんかすごいです!」
ボブ
「まぁ、そっちの方は殆ど無いんだけどな、たまぁ~~にな」
ロゼット
「そうなんですか。3人はどうやって、音楽を作っているんですか?」
ボブ
「そうだなぁ・・・」
ジェシー
「最初は、アンナの詩に音を合わせる感じでやってたわね」
アンナ
「そうだったね、で、ある日にボブから話があるって言われて・・・」
ボブ
「ちよっといいか?」
ジェシー
「あら、ボブ。どうかした?」
ボブ
「いや、そのよ。アンナの詩って、綺麗な感じだろ?ジェシーの歌声もそうだけどよ」
ジェシー
「そうね」
ボブ
「だから、それに合わせていくとよ、まぁ、そうだな、なんとなくだけどよ、マンネリ化してねぇ~かなって感じてよ」
アンナ
「そうかな?私はボブの曲好きだけどな」
ボブ
「うーん、もっとこう、な、ロックな感じのもいいかなと」
ジェシー
「逆にしてみたらどうかしら?」
アンナ
「それ、いいかもね」
ボブ
「逆、か・・・」
アンナ
「うん、ボブが先に曲を作って、それに合わせて詩を書いてみるよ」
ボブ
「ふむふむ、それもいいかもな」
ジェシー
「あら、ボブ」
ボブ
「おう!出来たぜ~、まぁ、ちょっとチャラい感じの曲だけどな」
アンナ
「ボブにしては珍しいね、聞かせて!」
マリー
「待っていると言うのは、あの娘?」
彼
「ああ、そうだ」
マリー
「ん・・・あら、貴女が、お待たせしてごめんなさいね、何の御用かしら?」
シルフィリア
「いえ、私も、いきなり来ましたから」
マリー
「いいのよ、私はここの代表をしているマリーよ、よろしく」
シルフィリア
「シルフィリアです」
マリー
「よろしくね、それで、話というのは何かしら?」
シルフィリア
「はい、あの、子供達に歌を聞かせて欲しいと思ったんです」
マリー
「子供たち?貴女、すごく若そうに見えるけれど、お子さんが居るの?」
シルフィリア
「はい」
彼
「ガキが居るのか?お前の子供か?」
シルフィリア
「はい、私の子供たちです」
彼
「お前、幾つだ?」
シルフィリア
「え?」
彼
「歳だよ、歳!」
シルフィリア
「16です」
彼
「まだガキじゃねーかよ!ガキがガキ育ててどうすんだ!?」
シルフィリア
「いけませんか?」
彼
「あ?お前よ、育てられるわけねーだろ?」
シルフィリア
「そんなことはないです」
彼
「そんなことはねーって、無理だからここに来たんじゃねーのかよ?」
マリー
「ねぇ、本題に入れないから、そのくらいにして」
彼
「ぁ、、ああ。・・・悪りぃ」
ジェシー
「あのときのボブは珍しく、軽い感じの曲にしたわよね」
ロゼット
「軽い感じの曲ですか?」
ボブ
「ああ、なんとなぁ~くな、いままでなかった曲調にしようと思ってな」
アンナ
「でも、よかったとおもうよ」
ロゼット
「曲とか作れるなんてすごいです、私なんて楽器も全然、弾けないから」
ジェシー
「苦手な人はいるわよね」
ボブ
「そうだな、牧師さんもそうだったからな」
ロゼット
「その牧師さんって人も楽器が弾けなかったんですか?」
ボブ
「まぁ、なぁ、全然弾けない訳じゃなかったがな」
アンナ
「それで、その後ボブが曲を作ってきて・・・」
ボブ
「ってなもんよ」
アンナ
「確かにポップな感じだね」
ボブ
「いやぁ、ロックにしようとも思ったんだけどな、あんまり明るい感じのなかったろ?だからいいかなって」
ジェシー
「そうね、面白いかもね」
マリー
「それで、歌を聞かせて欲しいっていう話だけれど」
シルフィリア
「はい」
マリー
「いつならいいの?」
シルフィリア
「今月中なら、いつでも大丈夫です」
マリー
「じゃあ、そうね、今月の間で、こちらの都合がいい日でいい?」
シルフィリア
「はい、お願いします」
マリー
「それじゃあ、連絡をするわね。その場所と、連絡先を教えてもらえないかしら?」
シルフィリア
「ぁ・・・」
マリー
「どうしたの?」
シルフィリア
「・・・電話とか、無いんです」
彼
「ぁ?じゃ、どうやって連絡すりゃいいんだよ」
マリー
「そうね・・・いきなりそちらに行っても大丈夫?」
シルフィリア
「大丈夫です」
マリー
「わかったわ、それじゃあ、まずは連絡係を行かせるから、それでいいかしら?」
シルフィリア
「はい。・・・ごめんなさい」
マリー
「いいのよ、じゃあ、シルフィリアちゃんの住んでいる場所を教えてもらえる?」
シルフィリア
「はい」
マリー
「町の外れの・・・ああ、あそこね。わかったわ」
シルフィリア
「それでは、お願いします」
マリー
「気をつけて帰ってね」
シルフィリア
「はい、ありがとうございました」
マリー
「・・・息を呑むくらい、綺麗な娘だったわね」
彼
「ああ・・・」
マリー
「どうしたの?」
彼
「いや、あんな娘も、所詮は何も考えてねーガキなんだなってよ」
マリー
「そうかしら?・・・貴方に仕事を与えます」
彼
「あ?な、何だよ、いきなり・・・」
マリー
「ボブ達に歌いに行かせる前に、さっきのシルフィリアちゃんの所に行って来てもらえない?」
彼
「なんでだよ」
マリー
「電話が無いっていってたでしょ?だから、あなたが連絡係よ」
彼
「マジかよ」
マリー
「それに、あの娘、貴方が思うような娘じゃないと思うわ。これは勘よ」
彼
「拒否権は?」
マリー
「・・・拒否したいの?」
彼
「・・・あんた、息を呑むくらいって、言ってたよな?俺もそう思ったぜ」
マリー
「だったら、尚更いいじゃない?」
彼
「ちっ、勘弁してくれよな・・・」
マリー
「何か問題があるの?」
彼
「・・・はぁ、あいつが来てた時に、どうしたらいいのかわからなくて、頭が真っ白になっちまったんだよ」
マリー
「ふふ、いいじゃない。一目ぼれでしょ?」
彼
「・・・あんたな、ちっ、流石あのガキどもの母親だぜ」
ロゼット
「ボブさんの曲は明るめの曲だったんですね」
ボブ
「おう!そうだったぜ」
ジェシー
「で、ボブの曲ができたから、今度はアンナが詩をつけることになったのよね」
ボブ
「だな」
アンナ
「詩、できたよ」
ジェシー
「これ、あの人のことを書いた詩だね」
アンナ
「うん」
ボブ
「あ~、でもよ、聞かせたからわかってるだろうけど、結構明るめだぜ?なんかこう、その、アイドルっぽいというか、ボカロっぽいというか・・・アニメ的つーかなんつーか、な」
アンナ
「意地悪、かも・・・いつもあの人、しんみりしてたから」
ジェシー
「明るいけれど、悲しい詩・・・か、でも、希望のある詩、いいと思うわ」
ボブ
「まぁなぁ、でも、それなら、もっとこう、まじめに作った曲にしたいかなぁ・・・。結構肩の力抜いて作ったからよ」
ジェシー
「だからいいのよ、あの人、堅物だったでしょ?私たちまで固くなっちゃったら、それこそカチンコチンよ」
アンナ
「ふふ、同じこと思ったから・・・ダメ、かな?」
ボブ
「なるほどな、ま!言われてみりゃそうだよな!よし、これでいこう!」
ジェシー
「あ、私からもいい?」
ボブ
「お、なんだ?」
ジェシー
「実は、メタル的なのも歌ってみたいなって思ってたのよ」
アンナ
「メタルかぁ、詩、書けるかな」
ジェシー
「アンナの詩はいつもどおりで良いと思うわ、少しこう、そうね、刹那的な感情とか、いれてみるのもいいかもしれないわ」
アンナ
「刹那的な感情って、どんなのがいいかな?」
ジェシー
「そうね・・・例えば、10代の頃の私達のような・・・ね?」
アンナ
「ジェシー・・・」
ボブ
「見詰め合う~二人はぁ~♪って、おいこら、俺様を置いてけぼりにすんなって!」
ロゼット
「っあはは!へぇ~、そんな感じで歌を作っていたんですね」
ボブ
「おう!そんな感じだな、基本的にはあまり無理しない、楽しんで作る!これだな!」
ロゼット
「楽しくないと、続きませんものね」
アンナ
「うん、みんな真剣になりすぎちゃうと忘れちゃうけど、一番大事だから」
ジェシー
「それにしても、彼のパソコンの中身、、結構 アレ だったでしょ?」
ボブ
「あ~・・・堅物男の意外な一面 ハッケン! みたいな、な!」
アンナ
「あはは!それは、言わないであげないと!」
ボブ
「画面を見てるみんな!自分のパソコンの中身、人に見られないようにしろよ~」
アンナ
「っ、、あはは!やめて、お腹痛い!」
ロゼット
「くっ!あはははは!男の人のパソコンの中身ってそんなのばっかりなのかもしれないですよね!」
ボブ
「俺のは音楽関係のばっかりだな~、まぁ、ギターしか弾けないからな、試しに打ち込みとかやってみたが、よくわからん!てか、パソコン自体こっちに来て始めて触ったからな」
ジェシー
「ロゼットのパソコンには、イ ケ ナ イ もの、入ってない?」
ロゼット
「へ!?あ、わたわた、んっ、わたしのは・・・秘密です!」
アンナ
「反応が怪しいな、もしかして?」
ロゼット
「ふぇ!・・・あの、その・・・」
ジェシー
「ほ~ら、正直に教えてごらんなさい?ね、ロゼット・・・」
ロゼット
「う、、うぅ・・・」
アンナ
「どんなもの入れちゃってるのかな?」
ロゼット
「それは、その・・・あの・・・」
ボブ
(おいてけぼ~り発動)
アンナ&ジェシー
「ねぇ、どんなの?」
ロゼット
「ああもう!二人で耳元で囁かないでください!!・・・BL、、です・・・」
ボブ
「BL?・・・あぁ・・・なんとなくわかったわ」
アンナ
「ロゼットさんはそういう趣味を持ってるんだね」
ジェシー
「腐女子って奴ね」
アンナ
「どんなジャンルが好きとかあるの?」
ロゼット
「じゃ、ジャンル、ですか・・・?」
ジェシー
「結構、激しいのが好きだったり?」
ロゼット
「そ、それは、あの、ぇっと・・・」
アンナ
「ね?どんな、ジャンルが好き?」
ジェシー
「教えて欲しいなぁ~・・・だめ?」
ロゼット
「だーかーらー!耳元で囁かないでーー!!」
ジェシー
「クスッ、反応が可愛いわね」
ロゼット
「も、もうっ!」
アンナ
「初々しいよね」
ロゼット
「そ、そんな二人こそどうなんですか!?」
ジェシー
「私達は、若いときにやり尽くしたもの、ね?アンナ」
アンナ
「そうだね、ほんと」
ロゼット
「お二人の若い時の事とか興味ありますね」
ジェシー
「聞きたい?」
ロゼット
「話していただけるなら!」
アンナ
「そうだね、どこから話そうかな?」
ジェシー
「私たちが出会ったのは、ハイスクールなのよ」
アンナ
「うん、そうだね。スクールで初めてあったときのジェシーって、すごく人を避けてたし」
ジェシー
「そうだったかしら?」
アンナ
「そうだよ」
アンナ
「あの娘、いつも一人であそこに居るな・・・。ね、ねぇ、ここ、いいかな?」
ジェシー
「誰?」
アンナ
「えっと、私はアンナっていうんだ」
ジェシー
「そう?それで?」
アンナ
「え、えっと、いつも一人で居るから、声、かけてみようと思って・・・」
ジェシー
「ふぅ~ん、で?」
アンナ
「でって、それだけ、だけど」
ジェシー
「じゃあ、もう用は済んだわよね?私は一人が好きなの」
アンナ
「え・・・あ、で、でも!ほら、一人でご飯とか食べるよりは、誰かと食べたほうが美味しいし」
ジェシー
「私は間に合ってるわ・・・。あなたも向こうに行ったら?呼んでるじゃない」
アンナ
「え、あ・・・うん・・・」
ジェシー
「そんな出会いだったわね、そういえば」
アンナ
「それからも、私はしつこいくらいアタックしたんだけど・・・」
ジェシー
「また来たの?あんた」
アンナ
「うん・・・ね、名前、教えてよ」
ジェシー
「・・・なんで?」
アンナ
「わ、わたしは教えたし、だからっ・・・」
ジェシー
「教えてなんて、頼んでないけど?」
アンナ
「そ、そうだけど、さ・・・」
ジェシー
「・・・・・・」
アンナ
「・・・・・・」
ジェシー
「はぁ・・・ジェシー、よ」
アンナ
「!ジェ、シー・・・ジェシーだね!ありがとう」
ジェシー
「ほら、お友達、呼んでるわよ?もう行ったら?」
アンナ
「う、うん!・・・また、また来るから!!」
ジェシー
「あんなに顔、輝かせちゃって、変な娘」
ロゼット
「な、なんだか、甘酸っぱい、ですね!」
ジェシー
「そうね、若かったものね」
アンナ
「はは、そうだね。それから色々話したりして・・・」
ジェシー
「お互いの家族のこととかね」
アンナ
「そうだね、私の家庭も、ジェシーの家庭も、あんまり良くはなかったんだ」
ロゼット
「そう、なんですか?」
ジェシー
「親とは殆ど話さなかったわね」
アンナ
「わたしも、そんな感じだったな・・・なんとなく、距離を置かれているっていうか・・・」
ジェシー
「私の家庭も、冷め切っていたものね・・・」
ロゼット
「なんだか、寂しい、ですね・・・」
アンナ
「ロゼットさんの家は大丈夫?」
ロゼット
「私の家庭は、そんなことはなかったです、みんな優しくて・・・」
ジェシー
「円満な家庭を持ってるのは幸せなことよ」
ロゼット
「そう、なんですよね・・・当たり前だと思っていたけど、そんなことない人もいるんだって知りました」
アンナ
「そうだね、けど、ロゼットの家庭は良くて安心した、かな」
ロゼット
「ごめんなさい、その・・・」
ジェシー
「謝る事はないと思うけど?」
アンナ
「そうだよ。あっ、それで、話を戻すけど、そうやってジェシーと話すようになって」
ジェシー
「話をするうちに、アンナが連れて行きたい所があるって言ったのよ」
アンナ
「そうそう、それで、景色の綺麗なとこに連れて行ったんだ」
ジェシー
「綺麗・・・」
アンナ
「ジェシーと見たかったんだ・・・この景色」
ジェシー
「普通、こういうところって、男の人と来るものじゃないかしら?」
アンナ
「・・・わたし、レズビアン・・・なんだ」
ジェシー
「そう」
アンナ
「ジェシーのこと、好き、なんだ・・・。おかしい、よね」
ジェシー
「・・・アンナ、もっとこっち来て」
アンナ
「え?う、うん・・・。ん・・・んっ、ちゅ」
ジェシー
「ん、くちゅ・・・っ、、ん・・・」
アンナ
「ジェ、シー・・・」
ジェシー
「これが答えよ」
ロゼット
「うわわわわわ!!す、すごい、その、ふぁぁぁああ!!!」
ジェシー
「随分、荒ぶるわね」
ロゼット
「だ、だって、だって!」
アンナ
「でも、それがバレちゃったんだよね・・・」
ジェシー
「そうなのよね・・・」
アンナ
「・・・へへ、ジェシー、今まで一緒にいた、友達にも気持ち悪いって、言われちゃった、よ・・・」
ジェシー
「そんなの友達なんかじゃないわ」
アンナ
「親にも、バラされちゃったね」
ジェシー
「うちの親なんて、別にどうってことないわ、殆ど喋らないもの」
アンナ
「私も・・・二人とも、何も言わなかったけれど・・・だけど・・・」
ジェシー
「ねぇ、アンナ」
アンナ
「うん」
ジェシー
「・・・どこか、遠くに行こうか?二人で・・・」
アンナ
「いいの?私なんかで・・・」
ジェシー
「あら、アンナこそ、私でいいのかしら?」
アンナ
「いいよ、一緒に、行こう」
ロゼット
「それで、二人は一緒になったんですね」
ジェシー
「ええ、それから、私達は、色んな所にいったわね。バイトをしたりして、お金を貯めて・・・」
アンナ
「そうだね・・・世界にはもう、二人しか居ないんじゃないかって、そう思ってた」
ジェシー
「そうね、本当に、お互いそう思っていたわ」
ロゼット
「なんだか、悲しいですね」
ジェシー
「侮蔑的なこと、差別的な事も言われたし、蔑んだ(さげすんだ)目で見られたこともあったわね」
ロゼット
「・・・ひどい」
ジェシー
「そう言われるたびに、私が食って掛かってた。でも、いつも私を護ってくれたのは、アンナだった」
アンナ
「ジェシーがいたから、強くなれたんだよ。ジェシーに出会う前の・・・学生の時の私なら言い返せなかったと思う」
ロゼット
「愛の力、ですね」
アンナ
「ふふ、そうだね」
ジェシー
「さ、続き、話すわよ。・・・一緒に住みだしてから、私達は肉体で悔しさと寂しさ・・・それを忘れようとしていたわ」
アンナ
「今日は、どっちが責めよう、か?」
ジェシー
「この間は私がアンナを責めたから、アンナがタチでいいよ」
アンナ
「う、うん・・・」
ジェシー
「さ、アンナ・・・めちゃくちゃにしても、いいんだよ?」
アンナ
「やめてよジェシー・・・本当に、そうしちゃいそうだから・・・」
ジェシー
「好きにして、いいんだよ?・・・今すぐ挿入てもいいわ」
アンナ
「え、でも、まだ、あまり濡れてないし、、痛い、よ?」
ジェシー
「少しくらい痛い方が、良い時もあるわ」
アンナ
「っ、どうなってもしらないからねっ!」
ジェシー
「ヒっぁっ!!っ、つ・・・!」
アンナ
「へへ、ほんとに、濡らす前に挿入ちゃった・・・。痛い?」
ジェシー
「っ、大丈夫、もっと、激しく、したって・・・んんっ!」
アンナ
「もっと?いいよ!ジェシーが悪いんだからねっ!」
ジェシー
「あぅん!!んっ!!あぁん!」
アンナ
「あ、っ、少し濡れてきたかな?さっき、より、動かしやすくなった、よっ!」
ジェシー
「ぅく、っ、んはぁ!!」
アンナ
「イクの?ジェシー・・・いいよっ!ねぇっほらっ、イって!!!」
ジェシー
「ふぁっ!!っ・・ん・・・はぁ、はぁ・・・んっ・・・」
アンナ
「はぁ・・・んっ。まだまだ、するよ?ジェシー」
ジェシー
「はぁ、はぁ、いいよ・・・っ、アンナ、膣ぜんぶっ、壊しっ、て」
アンナ
「後悔しないよね?」
ジェシー
「アンナになら、何されても、いい・・・」
アンナ
「わかった、じゃあ・・・、後ろも、挿入ちゃうからね・・・この細いのから、いくね」
ジェシー
「ん、、いい、よ・・・」
アンナ
「慣れてきたら、色んなもの挿入るからね」
ジェシー
「そんな感じでね、その後も色々したわよね~」
アンナ
「う、うん」
ジェシー
「アンナって、結構、後ろのほうも好きだったわよね?」
アンナ
「・・・ジェシーだって、両方責めたら、すごい声出してた癖に」
ジェシー
「ふふ、お互いに、ね?」
アンナ
「・・・最近してない、よね・・・?」
ジェシー
「今夜あたり、しちゃおうか?」
アンナ
「ジェシー・・・う、うん」
ボブ
「だぁぁああ!!!もうしゃべってもいいか!?」
ジェシー
「あら、ボブ、いたのね」
ボブ
「おいっ!?さっきから居るだろうが!てか、話してたろうが!」
ジェシー
「冗談よ」
アンナ
「ボブが黙ってるのって珍しいよね」
ボブ
「話に入っていけなかったんだい!」
ロゼット
「・・・ほけぇ・・・」
ジェシー
「ふふ、ロゼットには刺激が強かったかな?」
ロゼット
「え?ああ!だ、大丈夫、大丈夫です!」
ボブ
「んぁ?どうしたー顔が赤いぞ?」
ロゼット
「ボブさんって、、その・・・」
ジェシー
「会ったときからこんな感じで、子供みたいでしょ?」
ボブ
「こ、子供とか言うな!・・・まぁ、落ち着きがないのは自覚してるけどな・・・」
ジェシー
「あら?褒めているつもりなのだけど?」
ボブ
「えー?そうなのかぁ?」
アンナ
「そうだよ、子供って悪い意味じゃなくて、いつまでも少年の心を持ってる感じ」
ロゼット
「そうですね、スクールの時の少し上のクラスの男の子がこんな感じでした」
ボブ
「おい!なんかやっぱり、馬鹿にされている気がするぜ!」
ジェシー
「怒らないの」
アンナ
「そうだよ、ボブみたいにいつまでも少年で居られるっていうのは、すごいことなんだよ?」
ボブ
「そ、そうなのか?実感がないけどな」
ロゼット
「わたし、その男の子の事、好きだったんですよ、今だからいえますけど」
ボブ
「残念だがお嬢さん、俺は所帯持ちだ!」
ジェシー
「ちょーしに乗らない」
ボブ
「あだ!チョップされたー、俺泣いちゃう」
アンナ
「あはは!・・・ロゼットさんはその男の子に告白とかしたの?」
ロゼット
「いえ、見ていただけで・・・声もかけたことなかったです」
ジェシー
「純心ね~」
ロゼット
「意気地がなかっただけです」
アンナ
「でも、いいよね。もしかして、初恋?」
ロゼット
「そうなりますね。でも、スクールを卒業する前に、急に居なくなっちゃったんです」
アンナ
「そうなんだ・・・」
ジェシー
「・・・そんなこともあるわよね」
ロゼット
「・・・今、何してるのかな~」
ボブ
「初恋か、そういえば、俺は、、いつだったかなぁ。思い出せねーや」
アンナ
「マリーの前とかは、誰もいなかったの?」
ボブ
「ああ、そうだな。出会いも無かったし、まぁ、ほれ、俺、ホームレスだったしな」
ロゼット
「ホームレス、だったんですか!?」
ジェシー
「私達も、そうよ」
ロゼット
「え・・・?」
ジェシー
「じゃ、続きを話すわね」
ロゼット
「は、はい!」
ジェシー
「それからも、殆ど忘れるように、情事に身をやつしていたわよね」
アンナ
「ふふ、そうかもね。どんどんプレイが激しくなっていったよね」
ロゼット
「ど、どんな、プレイ、、」
ジェシー
「そうね、色々使ったりしたわね。日用品に野菜とか、それ以外にも獣・・・」
ボブ
「スターーップ!!!・・・んで、その後なんだよな?お前らが死のうとしたのって」
ジェシー
「五月蝿いわね・・・」
ロゼット
「死のうと、したんですか?」
アンナ
「うん・・・」
ジェシー
「その前に、私が倒れた事を話すわ」
ロゼット
「倒れたんですか?」
ジェシー
「ええ、元々、そんなに体は強くないのよ」
アンナ
「ジェシー・・・疲れてない?大丈夫?」
ジェシー
「平気、大丈夫・・・」
アンナ
「でも、熱が・・・ある、でしょ?」
ジェシー
「心配、しないで・・・働かないと、お金、足りない、でしょ?」
アンナ
「そ、そうだけど・・・」
ジェシー
「それじゃあ、行って来る、わね」
アンナ
「ぁ・・・」
アンナ
ジェシーの働いていた店から電話があったのは、それから数時間後だった。
ジェシー
「はぁ、はっ・・・あん、、な・・・」
アンナ
「ジェシー、ごめん!ごめんね!わたしがちゃんと止めてれば!!」
ジェシー
「ごめん、なさい・・・。わたし、役にたた、なくて・・・」
アンナ
「ううん!大丈夫、大丈夫だよ!私がシフト増やすから!ジェシーは無理せず休んで!」
ジェシー
「お店、首になっちゃった・・・お客の前で、倒れちゃった、から・・・」
アンナ
「いいから、もう、いいよ・・・ね。休んで・・・」
ロゼット
「そんな、病気でがんばって出勤してきたのに、首なんて・・・酷い」
ジェシー
「しょうがないわよ。それからは、アンナが一人でがんばってくれたわ」
アンナ
「ジェシーが居たから、がんばれたんだよ」
ジェシー
「がんばりすぎよ」
アンナ
「へへ、そうだったね」
ジェシー
「ねぇ、、アンナ・・・最近様子がおかしいわよ?大丈夫・・・?」
アンナ
「大丈夫」
ジェシー
「でも、ご飯だってあまり食べてないじゃない」
アンナ
「ちょっと、疲れてるだけ・・・」
ジェシー
「・・・うそ」
アンナ
「うそなんかじゃ、ない」
ジェシー
「うそっ!・・・すごく疲れた顔してるじゃない!」
アンナ
「そう、かな」
ジェシー
「そうよ・・・。わたしも、働く!だから、アンナはもう少しシフト減らして」
アンナ
「だめ、また、ジェシーが倒れたら、わたし・・・」
ジェシー
「っ、、なによっ!私がお荷物ならそういいなさいよっ!」
アンナ
「違う!違うよっ!!」
ジェシー
「ぁ・・・ごめんなさい・・・」
アンナ
「・・・ジェシーは、私の傍に居てくれれば、それでいいんだ」
ジェシー
「・・・お願い、無理に、笑わないで、っ、、ううぅ」
アンナ
「結局、私も駄目になっちゃってさ、二人でホームレスになるまで、そんなに時間はかからなかったかな」
ジェシー
「そうね・・・。ホームレス生活を少し続けて、それから、よね。あの人に会ったの」
ロゼット
「牧師さんですね」
アンナ
「うん」
ジェシー
「冬の公園で二人で死のとしてたのにね」
アンナ
「今は、感謝してるよ、あの人が居たから」
ジェシー
「だけど、一つ約束しているのよね」
ロゼット
「約束、ですか?」
ボブ
「ああ、あれか・・・なぁ、その約束は、止めてもいいんじゃねーか?」
アンナ
「ごめんね、ボブ。それだけは出来ないんだ」
ジェシー
「私達は、比翼の鳥だもの・・・」
ボブ
「ったく・・・」
ロゼット
「その約束って、どんなのなんですか?」
ジェシー
「どちらかが、先に死んだら、もう片方も生きてはいけない。そういうことよ」
ロゼット
「ぁ・・・わかりました」
ボブ
「・・・・・・」
ロゼット
「・・・・・・」
アンナ
「・・・そういえば、一度だけジェシーに本気で怒られて、叩かれたことがあったっけ」
ロゼット
「ぇ、そうなんですか?」
アンナ
「うん」
ロゼット
「それって、なにが原因だったんですか?」
ジェシー
「ふぅ・・・。クスリ、、ドラッグよ」
ロゼット
「ドラッグ、ですか?」
ジェシー
「ええ、そうよ」
アンナ
「その時の話もするね」
ロゼット
「は、はい!お願いします!」
ジェシー
「あれは、私が買い物から帰ってきた時だったわね・・・」
アンナ
「うん」
ジェシー
「アンナはベッドの隅にうずくまっていてたのよ。最初はいつもの発作だと思ったわ。でも違かった・・・」
アンナ
(・・・これ、打ったら、気分良く、なるのかな・・・)
ジェシー
「アンナ?」
アンナ
「っ!・・・ジェシー、おかえ、り・・・」
ジェシー
「・・・何してるの?」
アンナ
「な、なんでも、ない、よ・・・」
ジェシー
「・・・それ、なに?」
アンナ
「ぅ、、なんでもないの、ただの」
ジェシー
「ドラッグでしょ」
アンナ
「ぇ・・・ぁ・・・」
ジェシー
「貸して」
アンナ
「ぁ・・・だ、だめ・・・」
ジェシー
「貸して」
アンナ
「・・・・・・」
ジェシー
「打ってみるわ」
アンナ
「え!?だ、だめだよ!ジェシー!!」
ジェシー
「いいじゃない、別に。アンナだって打つつもりだったんでしょ?」
アンナ
「そ、それは、、でも・・・」
ジェシー
「これで全部?」
アンナ
「ぇ・・・?」
ジェシー
「全部かって、聞いてるの」
アンナ
「・・・もっと、ある、よ・・・」
ジェシー
「出して」
アンナ
「ぅ、うん・・・」
ジェシー
「わたしも興味あるから、打ってみるわ」
アンナ
「や、めて・・・ねぇ・・・だめ。だめ、だよ」
ジェシー
「 あなた は打つ気だったんでしょ?ならいいじゃない」
アンナ
「そんな一度に使うつもりなんて・・・」
ジェシー
「・・・一度に打とうがどうしようが、一緒よ。どうせ駄目になるんだから」
アンナ
「・・・ゃめっ・・・やめて!やめてよジェシー!!」
ジェシー
「なんで?いいじゃない?気持ちよくなりたいんでしょ?・・・どうなってもよかったんでしょ?」
アンナ
「そんな、つもり、じゃ・・・。お願い、お願い、ジェシー、やめ、て・・・」
ジェシー
「・・・使ったら、どうなるのか、見せてあげるわ。私の体で・・・」
アンナ
「だ、め・・・ごめんなさ、い、ごめんなさい。だから・・・だから・・・やめ、て・・・」
ジェシー
「・・・どんな気分だった?」
アンナ
「っ!・・・」
ジェシー
「どんな気分だったかって聞いてるんだけど」
アンナ
「そ、それは・・・」
ジェシー
「・・・ねぇ、どんな気分よ!?」
アンナ
「ジェ、シー」
ジェシー
「・・・これ、どこで手に入れたの?」
アンナ
「・・・すこし、だけ、外にでたときに、、知らない人、から・・・」
ジェシー
「・・・もう、ここには居られないわね」
アンナ
「・・・ごめん、なさい」
ジェシー
「・・・アンナ」
アンナ
「ぅ・・・っ・・・なに、ジェシっつ!!」
ジェシー
「二度と、こんなのに手を出さないでね。いい?」
アンナ
「うん・・・」
アンナ
「あの時のジェシーは、本当に怖かったな」
ジェシー
「当然よ」
アンナ
「でも、わたし、本当に嬉しくて、嬉しくて・・・。そのあと、二人で一緒に泣いたんだ」
ロゼット
「そんなことが、あったんですね・・・」
ボブ
「俺はそう言うのには手を出してねぇからな」
ジェシー
「おりこうさんね」
ボブ
「まぁ、ジェシーの言う通りだからな。あんなのやったら音楽どころじゃなくなるぜ」
アンナ
「ふふ、本当にね。わたし、馬鹿だったな・・・」
ジェシー
「それこそ、もう昔の話よ」
ボブ
「・・・にしても、どいつもこいつも、無理しやがるからな」
ロゼット
「無理しないと、生きていけないから、ですよね」
ボブ
「そうでもないぜ?一人とか二人だと、まぁ、大変だけどよ」
アンナ
「そうだね、ここはそういう人が集まったところだから」
ジェシー
「今は、やっと、ね」
ロゼット
「本当に、よかったっておもいます」
ボブ
「まったくだな」
ロゼット
「・・・あの、よかったら、さっき言っていた歌、聞かせてもらえないですか?」
ボブ
「そうだな、俺はいいぜ?」
ジェシー
「わたしもいいわよ」
アンナ
「わたしも、それじゃ、そうだね、全部だと長いから、すこしショートにしてみようか」
ジェシー
「ええ、それでいいわ」
アンナ
「ベース、もってくるね」
ロゼット
「ベース弾けるんですか!」
アンナ
「うん、ジェシーもキーボードとか弾けるんだよ。じゃ、ちょっとまっててね」
ロゼット
「そうなんですか?」
ボブ
「ジェシーは、結構良い所のお嬢様だったらしいからな」
ジェシー
「お嬢様かどうか知らないけど。ピアノとかしてたのよ、でもわたし、弾きながら歌えないのよね」
ロゼット
「ああ、難しそうですよね。あ、ボブさんも楽器持ってこなくていいんですか?」
ボブ
「ふふふ、じゃじゃじゃじゃーん。こんなこともあろうかと、すぐに取りにいける距離においてあったのさ!」
ジェシー
「こういうときは、用意がいいわね」
ロゼット
「あ、マイクとかは・・・?」
ジェシー
「・・・あるわ」
ボブ
「お前だって、ちゃっかり用意してるじゃねーか」
ジェシー
「悪い?」
アンナ
「お待たせ」
ジェシー
「おかえりなさい」
アンナ
「みんな準備は大丈夫?」
ボブ
「俺はOKだ!」
ジェシー
「わたしもいいわよ、もうステレオ設定とかもしてあるから」
ボブ
「んじゃいくか!」
///////////////基本ジェシーがボーカルなのでジェシーですが、まぁ、互い互いに言い合ってもいいです。この部分を飛ばしてもOKです/////////////////////
出会った時の事を いまでも覚えている
熱にうなされ 路上で倒れていたとき
白く染まった公園で死のうとしていたとき
恋人からあってほしいと 紹介されたとき
色々あったし 色々話したね・・・
あなたはもう居ないけれど あなたの心は生きている
突然の出会い 突然の出来事 そして 突然の別れ
いつも 自信はないけれど と そう言っていた
それでも私達は そんなあなたに救われた
あなたが遺したもの それは優しさ
直接あなたに言うことは出来なかった、だから・・・
あなたに言い残した言葉を届けたい
簡単な 言葉だけれど・・・
ありがとうって そう言いたい
私達は あなたの事が好きでした
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ロゼット
・・・曲調は明るいのに、詩は物悲しい、それなのに、前を向いていくそんな歌詞だった。
ボブさんのギターの音とアンナさんの隙間を埋めるように入る、ベースの低音、ジェシーさんの透き通るような歌声。
最後にギターの音が鳴り止んだ後 声だけの あなたの事が好きでした。
彼らも音楽活動をしているから、プロなんだろうけれど、、そういうのじゃなくて、うまくいえないけれど、なんだろう、すごく、ストレートに響く、そんな歌だった。
ボブ
「ってな感じだ!」
ロゼット
「っ・・・ぅ・・・」
ボブ
「おろ?なんだ、泣いてん、のか?」
ロゼット
「っ・・・。すいません、なんか、もう会えない人に対しての言葉とか、あぁ、こうやって、この施設ができたんだなって思ったら・・・」
アンナ
「もっと明るい曲のほうが良かったかな?」
ロゼット
「こういう歌、好きです」
アンナ
「ありがとう、でもプロってわけじゃないから」
ボブ
「そうだな~、俺もプロ目指してダメだったからな」
ロゼット
「そんなことないです!・・・確かに、うまく言葉にできないなんていけないんですけど、テレビに出てくるような、そんなプロとは違うけど、その・・・すごく胸に響いてそれで、それで・・・っ・・」
ジェシー
「はい、ハンカチ」
ロゼット
「・・・ありがとうございます」
ボブ
「でも、あれだな、こうやって泣いてもらえるのは、嬉しいな。まぁ、どうせなら笑わせるのがいいけどな!」
ジェシー
「落ち着いた?」
ロゼット
「・・・はい」
アンナ
「私達は、プロというか、サークル活動に近いかもね」
ロゼット
「・・・すごいです、わたしには出来ないです」
ボブ
「んぁ?お前さんだって、今こうして活動してるじゃねーか」
ロゼット
「そう、なるのかな・・・」
ボブ
「なるだろ?」
ジェシー
「なるわね」
アンナ
「そうだよね」
ロゼット
「ありがとうございます。少し勇気が出てきました」
ジェシー
「小さい積み重ねは、大事よ」
ロゼット
「そう、ですよね。今は個人でしてますけど、いつか、そういう会社に入れたらいいなって思います」
ボブ
「会社か、俺はそっちのがすげーと思うぜ」
ロゼット
「あは、ボブさんの過去はどんなだったんですか?」
ボブ
「俺か?俺は・・・そうだな。10代のころから音楽で食っていこうとしてたんだ。で、バンドを組んでてな・・・」
ケン
「今日もあんまり人、来なかったな」
ボブ
「だな、けどよ、これからだって!」
リディア
「そうそう」
ボブ
「ケンとリディア、そして、俺の3人でバンドしてたんだ」
ロゼット
「そうだったんですか、それで、どうなったんですか?」
ボブ
「最初は良かったんだ・・・」
ケン
「・・・俺達よ、このままでいいのかよ?」
ボブ
「なんとかなるって!」
リディア
「・・・でも、もう結構長い間、活動してる、よね」
ケン
「だよ、な・・・」
ボブ
「諦めんなって!これからだよ!」
ケン
「お前は本当、前向きっていうかよ、もう少し、現実みろよ」
ボブ
「あ?何だその言い方は!?すぐに諦める奴に現実見ろとか言われたくねーよ!」
ケン
「なんだと!?本当のことだろうが!?大体お前のっ!」
リディア
「喧嘩はやめてよ!」
ボブ
「・・・わりぃ」
ケン
「すまん」
ボブ
「てな感じで、数年やっても芽が出なくて、焦り始めてたな~」
ロゼット
「メンバーの人の、えっと、技術?とかはどうだったんですか?」
ボブ
「ああ、上手いかどうか、か?・・・そうだなぁ、リディアのベースも悪くなかったし、ケンのドラムもなかなかだったぜ」
ロゼット
「それでも、駄目だったんですか?」
ジェシー
「技術があるからって、売れるとは限らないわ」
アンナ
「そう、なんだよね・・・」
ボブ
「まぁ、コネとかが強いよな。でも実際、駄目だった原因は俺だったんだ」
ロゼット
「そう、なんですか?なんでですか?」
ボブ
「ギター件ボーカルが俺だったんだけどよ」
ロゼット
「はい」
ボブ
「・・・俺、歌が壊滅的に駄目だったんだ」
ロゼット
「え?」
ジェシー
「そうね、音痴よね。それだけじゃなくて、高音になると、声が安定しないし、普通に伸ばそうとしても勝手に入るビブラートがひどい。
それに、感情を篭めてるつもりで大きな声を出しても、あれじゃ、がなり立ててるだけ、ま、言い出したら切がないわ」
アンナ
「ジェシーってば」
ボブ
「まぁ、ほんとのことだな。でよ・・・」
ケン
「・・・やってらんねーわ、俺」
リディア
「・・・・・・」
ボブ
「・・・でも、よ、まだ・・・」
リディア
「無理、ボブ、歌ヘタ過ぎ」
ボブ
「はっ?」
ケン
「・・・それだ、お前、ギターの腕はいいんだ、歌が駄目なんだ」
ボブ
「ちょ、ちょっとまてよ!?何年一緒にやってると思ってんだ!?何で今更!?」
リディア
「長くやってれば、うまくなるかもって、思ってたんだ。けど・・・さ」
ケン
「ああ、続けるなら、ボーカル変えるしかねーよ」
ボブ
「くっ!・・・俺は認めーねーぞ!俺の作った曲だ!俺が歌う!」
リディア
「歌詞はみんなで考えてるんだから、私達の意見も聞いてよ!」
ボブ
「うるせー!!い、いいじゃねーか!運が悪いだけだって!」
ケン
「なぁ、いい加減・・・現実見ろよ」
ボブ
「あんだと!?ケン!前も同じ事抜かしやがったよな!?」
ケン
「怒る気も失せたわ、本当のことなんだよ。お前には歌手の才能は無い」
ボブ
「んだとっ、このっ!?」
ケン
「ぐっ!・・・んのやろー・・・」
リディア
「やめてよ!!」
ボブ
「だったらテメーらで曲作りやがれよ!そしたらお前らの意見も聞いてやるよ!」
ケン
「付き合ってらんねーよ・・・」
リディア
「もう、終わりだね」
ボブ
「ああ!どこへでも行きやがれ!泣いて戻ってきたってしらねーからな!」
ボブ
「で、本当に終わったわけだ。・・・戻ってくると思って、待ってはみたんだがな、帰ってこなかったぜ」
ロゼット
「うわぁ・・・ボブさん、ショックだったんじゃないですか?」
ボブ
「まぁ、な。でもよ、長い間考えてよ、路上でもライブしてよ、、それでも駄目だった。ギターだけなら人が少しは来たんだが、歌ったらまったくこねーでやんの。
やっぱり歌の才能はなかったんだよな」
ジェシー
「よく私をボーカルにしたわよね」
ボブ
「言ったろ?考えたって・・・教訓って奴だな」
ジェシー
「あなたも学習するのね」
ボブ
「口が悪いな~、お前はよ」
ロゼット
「あはは・・・。でも、すぐにホームレスになったわけじゃないですよね?家族の人とか」
ボブ
「ああ、もうそんときには、家族とは縁が切れてたんだ」
ロゼット
「え?どうして、ですか?」
ボブ
「音楽で食っていくっていったら、な、猛反対されてよ」
ジェシー
「まぁ、そうよね」
ボブ
「うっせー!このクソが!!・・・てな感じで出てって、それからは帰ってねーや」
ロゼット
「そう、なんですか、寂しく無かったですか?」
ボブ
「・・・たま~にな・・・でも、帰ったら負けな気がしてよ」
アンナ
「ボブって、変なところ強情だもんね」
ボブ
「ま、さっきも話したとおり、それでバンドもおじゃんになったわけだけどな」
ロゼット
「働いたりはしなかったんですか?」
ボブ
「音楽業界に行こうとしたり、したんだけどよ。ギターはいいですね。こればっかりだったぜ」
アンナ
「大変だったね・・・」
ボブ
「もうよ、意地になっちまってよ、バンド作るとかまったく考えなかったな」
ジェシー
「ほんと、馬鹿よね」
ボブ
「我ながらそう思うぜ・・・。今こうしてやってると、やっぱ、仲間はいいなってな」
ジェシー
「いきなりしんみりしたこと言わないでよ。息が合った、それだけよ」
アンナ
「ジェシーってば・・・本当にそれだけ、かな?」
ジェシー
「さぁね」
ボブ
「ったく、変わらねーな、お互いよ」
ロゼット
「う~ん、きっと、変わったから、今みたいになれたんじゃないですか?」
アンナ
「そうともいえるし、そうではない、ともいえるかな」
ロゼット
「そうなんですか?難しいです・・・」
ジェシー
「・・・根本は、変われなかったのよ。私達はね」
ボブ
「かもしれねーな」
ロゼット
「うぅ、やっぱり、難しいです」