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第17話 ふわふわ時間

「ダーリン、お風呂沸いたですよ」

「お風呂?」

「大和、着替えあるー?」

「あ、それは持ってきましたが……」


 実は昨日の夜の辺りでアマンダからは「ダーリンは着替えも持ってきてください」と言われていた。その地点で薄々こうなることは予想していたのであるが……

 二人が帰って行った後、しばらくアマンダと談笑していると彼女がそんなことを切り出してきた。反対側に座っていたエミリアさんも特に何か言うことなくアマンダに畳みかけてくる。分かっててもこの展開には驚きを隠さずにはいられない。


「え、でも大丈夫なの?」

「ダーリンと一緒に入るために入れたですよ?」

「あ……うん? 俺と一緒に?」


 聞き捨てならないことをアマンダが言った為思わず問いただすが、彼女は何も否定することなく素直にこくりと頷いた。それを見ていたエミリアさんはにたぁと楽しそうな笑みを浮かべる。


「お、俺と一緒って、アマンダ、何を言って……!」

「私だって、その、恥ずかしいですよ……」


 アマンダはそっと視線を下げて頬を赤くすると語尾をごにょごにょとさせて言葉に詰まらせてしまう。その様子に胸打たれてしまい、彼女に何も言い返せなくなってしまった。そんな中、後ろからエミリアさんが耳元で囁いてくる。


「一緒に入っちゃいなヨー」

「っ……!?」

「ダーリン……ダメ?」


 そんな目で見られて断れるわけがない。

 勿論、彼女と一緒に風呂に入ることが恥ずかしいとかそういう躊躇いは無い訳では無いけれど、この状況でアマンダの要求を跳ねのけることができる程に俺は強くなかった。目の前にいる大切な彼女の言う事なんでも聞けてしまう。


「わ、わかったけど、タオルは……」

「う、勿論タオルは巻くです」

「大和ー、一緒に入れば?」


 俺とアマンダが一緒の風呂に入るかもしれないという事態を前にしてもエミリアさんも特に止める様子を見せない。上目遣いで懇願するアマンダと面白がって見ているエミリアさんに押される形で、俺は、頷いてしまった。

 そして、ウォーカー家の脱衣所で一足先に服を脱いだ俺は、一度シャワーで身体を流した後にお湯が貼ってある浴槽に漬かった。今日あったドタバタで溜まっていた疲れが抜けていく心地だったが、これからの事を考えるととてもではないが落ち着いて風呂に入っていることは出来ない。


(アマンダと一緒に風呂に入ることになるなんて……)


 どうしても想像してしまうのは、あの規格外の大きさのおっぱい。

 毎日のように腕に押し付けられているそれはいつもセーラー服の下に隠れてしまっていた。それでも服の上から十分に大きいとわかるそのふくらみが、今、布一枚しか纏っていない姿で俺の前に現れようとしている。

 正気を保てるか。これでも俺は華の高校二年生なんだ。人並みに性欲だってある……!


「ダーリン、もう入ってるですかー?」

「う、うん。一足先に漬からせてもらってるよ」

「い、今、行くです、ダーリン」


 そうして、風呂場の扉の向こうからするすると布ずれの音が聞こえ始める。紛れもなく、アマンダが服を脱いでいる音だった。そうしてばさりと放られる音がした後、軽い物がぴちっと外れる音がし、はらりと何かが擦れる。

 風呂場の扉が、そっと開いた。

 扉の向こうには想像通り、バスタオルだけで身を包んだアマンダがぼんやりと赤い顔で立っていた。だが、バスタオルが如何せん少しだけ面積が足りなかったのだろう、アマンダの胸少しと下半身少しだけしか隠れていない為、とってもきわどい格好に……


「だ、ダーリン、あんまり見られると、変な気持ちになっちゃうです……」

「え、あ、ああっ、ごめん!」


 バスタオルで包まれたアマンダのメロン大おっぱいが上半分だけ露わになっており、その表面にふんわりと優しい光沢を作っている。それがくっきりとした谷間を形作っており、見てはいけないと思いつつもついそちらの方に視線が動いてしまう。

 そして視線を下げたが、今度はアマンダのむちむちの太ももが視界に飛び込んできてしまった。肝心な部分こそバスタオルで隠されているがもっちりとしたその尻にかける下半身のラインはバスタオルで隠すことが出来ず、かえって強調されてしまっている。


「ダーリン、やっぱりえっちぃです」

「う……」

「……入るですよ」


 そう言ってアマンダは片足を上げて浴槽に入ろうとする。見てはいけないような気がして目をそらしてしまい、その間にちゃぷりとアマンダが浴槽に入った。そして、お湯を溢れださせながらゆっくりと彼女は俺の左隣に身を沈めてくる。

 流石に高校生二人には浴槽は狭く、腕と腕、肩と肩が触れ合ってしまう。アマンダがどこか夢心地のような顔で俺の肩に頭を乗せてくる。


「ダーリン、あったかいです……こうして見ると、ダーリン、筋肉ついてるですね」

「そ、そうかな」

「だんだんダーリンが私好みになっていってます……」


 アマンダはそう言いながら俺の顔をちらと見る。

 その言葉は反則だった。そんなことを言われてしまったら、ただでさえ可愛さに溢れている彼女をもっと愛したくなってしまう。気が付いたら俺は普段のようにアマンダを抱こうと左腕を背中に回してしまっていて、肩の辺りが普段と違う素肌だということに気が付いた後にやっと自分がアマンダに夢中になっていたことを知った。


「ダーリン……ちょっと大胆ですヨ……」

「あっ……」


 アマンダが恥ずかしそうに頬を染める。肉感の良い彼女の左肩に手を乗せながら、彼女をそっとこちら側へ引き寄せてしまった。そのせいでアマンダを抱き寄せるような格好になってしまい、お互いに相手の腰辺りに手を置きながら超至近距離で見つめ合う。


「うーっ、とっても恥ずかしいです」

「その、ええと……俺も、どうしたらいいのか分からなくて」

「アハ、私と一緒ですね……」


 そして、半ば導かれ合うかのように俺はアマンダと口づけを交わした。

 彼女のもちもちとした身体を腕で堪能しながらも、やわらかくて熱を帯びた舌と自分のを激しく絡め合う。今度は前にしたような優しいキスではなくて、相手をとことん欲しがるどこかいやらしさも孕んだディープキスだった。


「んっ……ああっ、はぁ、んむっ、ちゅ……」


 徐々に頭がぼんやりとしていく。それにつれて、目の前の彼女の事だけしか考えられなくなってしまう。ここが誰の家かも今何時であるかも明日何があるかも全く気にならない。


「Uh…ダーリン……!」

「アマンダ……」


 そうして二人で仲良くしていた時、ふと、次どうしたらよいか分からなくなってしまった。勿論したいことはしたいからアマンダにそう問いかけることは出来たはずなのだが、何故か「それ」を彼女に持ちかけるのははばかられるような気がした。


「ダーリン……?」

「あ……」


 突然俺が黙り込んだのを見てアマンダは紅潮した顔で訪ねてくる。

 ぼうっとしている彼女が可愛くて俺は何も言えなかったが……ん?


「アマンダ?」

「Ah…」


 彼女の視線がふらふらとしていることに気が付いた俺は慌ててアマンダを抱き、そのまま二人で風呂から上がった。何が起きたかよくわかってないアマンダの様子を見て俺の違和感は確信に変わった。


「アマンダ、のぼせちまったか」

「ん、ダーリン、すき……」

「水を飲んで、ゆっくり休んで! エミリアさん! エミリアさん!」


 脱衣所で声を張り上げてエミリアさんを呼ぶ。しばらくして脱衣所の戸が開き、そこからアイスを口に咥えた彼女は顔を出した。


「大和、どうしたかな?」

「アマンダがのぼせてしまって……」

「ん、分かったよー。とりあえず大和着替えてねー」

「は、はい」


 酒に酔ったような顔で座り込んでいるアマンダの事を一旦エミリアさんに任せ、着替えを掴んだ俺はそのままエミリアさんの横を走り去った。よく考えてみればタオル一枚だから結構恥ずかしい……


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