#7 霞む月光
第3、第8中隊はモーハヴェー宇宙基地に到着し補給物資の荷下ろし始めていた。
中身は主に武器、弾薬、食料だが目立つコンテナが3つほどあった。
ヴィルが先程見たパーツリストの品がところ狭しと詰まっている。その中身というと……。
「改良型放熱フィンにコックピット用の耐熱板、それに……オーバーヒート時の緊急冷却装置! あの……隊長殿……大変申し上げにくいのですが、これを一晩で全機につけるのでしょうか……」
アハトワは笑顔でその整備兵の顔を無言で見た。
その瞬間周りにいた整備兵全員の笑顔が消えた。
帰投して食堂で報告書を書いていた翔とヴィルのもとに凛菜がやって来た。
パイロットは基本的に出撃の前後は暇でその辺をぶらぶらしている。
「外見てきたら整備のみんな顔が青ざめてたよ」
「あのコンテナのことだろ?コンテナには機体の強化、改造パーツが入ってるんだが、それを一晩で全てやれだとさ アハトワのやつも平気でエグいこと言いやがる」
ヴィルはとたんに周りを見回し始め、アハトワの姿が無いことを確認した。
「翔ちゃんは何が入ってるのか知ってるの?」
「確か……HHI-3G緊急冷却装置にFIH85射撃補整システムとかいろいろ」
凛菜の頭から湯気が出ているように見えるくらい混乱していた。
「本当に凛はこういう話ダメだよな はっはっは! え……ちょ!ま!」
翔は凛菜の重い一撃を食らって床に倒れた。
「自業自得だな お、呼び出しだ ちょっと行ってくるわ」
「いってらっしゃいー」
翔は返事をしようとしたがピクリとも動けなかった。
ヴィルを艦長室に呼び出したのはアハトワだった。そこにはアハトワとノアと第3中隊の隊長の霧島グルークがソファーに座っていて、重い空気が張り詰めていた。
ノアがタブレットを操作しモニターに先ほどヴィルに見せた画像と同じものを映し出した。
アハトワとグルークはモニターに映し出された画像に驚きを隠せないでいた。
「これは……私の機体じゃない……だがよく似ている どういうことだ、ノア!」
「上層部はあの機体を元に現在の"技術"を使って新型を作り始めた 恐らく国連軍を本気で潰す気だろう だがまだ建造も始まってない まだ実戦投入は先だろう」
グルークは不思議そうな顔をしていた。
「ちょっと前にコード666Xが一つの中隊をあっという間に全滅させたっていうのありましたよね もしかしたら建造がかなり前倒しになると思いませんか」
「まずいな…… でもうちにも配備される予定なんだろう?」
「あぁ、たぶんな」
アハトワが急にタブレットを取りだし何かを調べ始めた。
「アハトワ 何調べてるんだ?」
「コード666Xだ。たしかその報告書をまだ読んでなかったからな。これは……」
アハトワの顔が青ざめた。
「どうした アハトワ君」
「この機体 施設で見たことがある。そのときはまだデータだけだった……ついに完成してしまったのか 」
本当の戦争が始まる時が刻一刻と近づいていた。