#6 歪む月光
第8中隊と第3中隊と合流するために翔とヴィルは雨のなか合流ポイントに向かっていた。
北米大陸のほとんどは月軍の支配下になっているため、敵と出くわすことは無いが護衛として出撃している。
「思ったよりも遠いな」
「だな…… 通常出力だし、俺のリエズはほとんど火器積んでないから大丈夫だけど翔はどうだ?」
一通りの計器を確認したが全て安定、または安全な数値だった。
「こっちも問題ない」
「それならいいんだが……お、センサーに反応 距離15000 方角もあってるし友軍の反応だ」
しばらく進むと2つの大きい影が見えてきた。
アブルフェーダ級3番艦アベールと8番艦アコスタだ。
『こちら月軍第8中隊隊長ウィリアムズ・ノアだ』
「こちら月軍第7中隊所属、嘉山ヴィルジリオ及び池上翔 これより貴艦護衛の任に就く お久しぶりですノア隊長」
「知り合いなのか?」
ノアとヴィルは昔からの飲み友達で開戦前までは休みの度に飲み明かしたという。
「とりあえず着艦許可を願います」
『着艦を許可 後部ハッチへお願いします』
着艦し機体を降りノアに挨拶に向かったがノアの方から出迎えてくれた。
「久しぶりだなヴィル まだまだ現役とは驚いたぞ」
「こっちもアンタが隊長やってるとはな お互い年とったな……」
「だな…… あ、で そっちが池上翔君かこの年で専用機持ちとはたいしたものだ 君、大丈夫か?」
翔はガチガチに固まって微動だにしなかった。
「こいつは極度の人見知りなんだ 翔、コックピットに戻ってな」
「あ……ありがとう そうさせてもらうよ」
げっそりした顔でコックピットに戻っていった。
「はぁ どっと疲れた…… やっぱ人と関わるのは疲れる……」
翔が座席後ろからキーボードを取り出しチェックを始めた頃、ノアとヴィルはメインブロックの艦長室に移動していた。
「アンタ……本当に偉くなったんだな さて、本題に移ろう」
「まずこれを見てくれ」
モニターにある機体の画像が写し出される。
どこかリエズに似ているが異なっている。
「これは……アハトワの乗ってきたやつ……じゃない!まさか」
「あぁお前の思っている通りだ 上は"現在"の技術を使った上に"オリジナル"を作りやがった…… 奴らは本気で国連を潰す気だ」
本当のとんでもない戦争が始まるとヴィルたちは確信した。
「何機だ 何機建造された!」
「まだ10機目の建造のメドがたったばかりだ 恐らく"監視役"ってことでお前らのところに最初に配備されるだろう。最後にこれ。」
ノアが出したのは今時珍しい分厚い紙のファイルだった。
開くとパーツリストの紙が大量に入っていた。
「ヴィル、まあまずは今を生き抜こうじゃないか」
そう言ってノアは艦長室出ていった。