#5 月下の休息
昨日の戦闘に参加した翔たちは今日の復旧作業を免除され食堂で遅めの朝食をとっていた。
「遅いぞ翔」
「すまんすまん そういえば今日第8中隊が合流するんだっけ……」
ヴィルがタブレットを取り出しスケジュールを調べる。
「あーそうだな、あと第3中隊も合流する それで午後に俺たちが護衛として出動だとさ まあ、通るルートはこっちの勢力下だから楽な仕事だなって、どうした?」
一気に翔の顔が青くなる。
翔は極度の人見知りでアイリスの人間に慣れるのも数ヵ月掛かった。
「ま、まあすぐ慣れるさ」
「ああ…… そういえば凛菜は?」
見渡してみると凛菜が入ってきた
「おはよー シャワー浴びてたら遅くなっちゃった」
「遅いぞ凛」
「お前が言えるか」
ヴィルが突っ込みを入れ、唐突に話を切り出す
「今更だけどよ、どうしてお前らは軍にはいったんだ?俺は正直給料目当てだが……」
「俺は、目の前のものを守るためだよ 凛もヴィルも月の友達も……」
急に凛菜が翔に抱きついた。
「私も翔ちゃんを守るためだよー!」
「そうか、ちゃんと理由があるならいいんだ あと、いい加減抱きつくのやめないと……ほら……」
ヴィルの指す先には彼女いない男(主に整備兵)たちが翔を睨んでいた……。
「あ、うん……」
凛菜は離れたが翔は睨まれ続けた。
朝食を終え暇な翔はハンガーブロックに向かった。昨日の戦闘で無理をさせてしまったリエズがあった。
「どのくらいやられちゃってますかー」
「ん、なんだ翔か お前のリエズは大したこと無いよ 嘉山さんのリエズとプラス、それにエルとリョウのバステルタも大したこと無いんだが他の4機がな……」
周りを見渡すと奥に大破または撃墜されたバステルタの残骸が置いてあった。
「あれはひどいですね……」
「多分ありゃ解体してパーツ取りだな あ、そうだ 暇なら念のためちょっとだけ動かしてくれないか?」
「はい、すぐそっち降ります」
翔はリエズに乗り込み内臓バッテリーを使って起動させた。
確認する箇所はセンサー、レーダー系と腕の可動。今すぐできる箇所はこれだけだ。
「……問題ない、ですね あ、今日の午後、俺とヴィルが護衛で出るんでお願いします」
「了解っです よしここはオーケーっと」
「あとなにかありますか?」
「ありがとー ほとんど終わってるから無いね」
お礼を言ってハンガーブロックをあとにし自室に戻った。
すると机の上にメモリーカードが置いてあった。
中身は今日合流する中隊の簡単なプロフィールがまとめられていた。
「ヴィルがやってくれたのかな?後でお礼言わなくちゃな……」
まず上官の名前を覚えようとした翔だが長ったらしい名前や読みにくい名前ばかりで結局一人も覚えられずに出動の時間がきてしまい再びハンガーに向かった。
ハンガーに向かう途中アハトワ艦長とすれ違った。
「どうだ池上 一人くらい覚えられたか?」
「いえ……全く…… ってなんでメモリーカードのこと知ってるんですか!」
「あれは私が作成したものだからな それにあれを作れる人間はここには私以外いないぞ」
普段のアハトワの笑顔はどこか怖かったが今の笑顔は優しさを感じられた。
「あ、ヴィル お待たせ」
「お、来たな翔 じゃあ早速出るぞ!」
翔とヴィルはリエズに乗り込み起動させる。
前の夜の戦闘とは違って急がなくてもいいので徐々に炉の出力を上げていく。
徐々に出力を上げていくならハンガー内に命に危険な温度の熱は発生しない。
「熱反応炉出力安定域に到達、各センサー問題なし」
『了解 池上翔及び嘉山ヴィルジリオ 両名のリエズ出撃を許可します』
「了解 池上翔 リエズ 出るぞ!」
「嘉山ヴィルジリオ リエズ 出る!」
轟音と共に2機のリエズがアイリスを発った。
「長距離飛行モードへ移行」
このモードではコックピットが回転、地面と平行になる他、安定のため機体の関節が一部ロックされる。
『了解 移行完了 敵の反応……無し』
「了解 ヴィルどうする?第三戦闘出力にする?」
『だな 勢力下といっても油断禁物だからな』
「第三戦闘出力 炉の出力を40%に これで一通り終わったかな?」
『あとは遊覧飛行か』
二人は合流ポイントに向かい始めた。