#3 月下の空戦
モハーヴェ宇宙基地を襲撃、奪取したその日の夜。
お互いに最悪のタイミングで国連軍のR.R.部隊がここに向かって進攻していた。
『敵はスカイファングが15、フライトモジュール装備のR.R.が25。二方向から接近中 フライトモジュール装備の機体は通常と質量がことなっており爆撃が目的と思われます』
『いいか!1機たりとも近づけるな!』
「俺と凛菜はスカイファングを、ヴィルたちはフライトタイプのやつを頼む」
「了解だ エル、リョウ、俺についてこい!」
「了解 リョウ、ライフルの調子はどう?」
「問題ない 全力発揮可能だ。」
エル、リョウを含めたバステルタ計10機が翔と凛菜のもとを離れフライトタイプの迎撃に向かった。
スカイファング本体を視認できないがスラスターの光で位置を把握した。
「正面モニターを暗視モードへ 反応炉戦闘出力!凛!行くぞ!」
「了解!向こうも来たよ!」
スカイファングが先制攻撃を仕掛けてきた。大量のミサイルの光が見える。
「多い!多い!多いって!」
大量のミサイル翻弄されるがなんとか立て直した。
スカイファングはミサイルを撃ち尽くしコンテナをパージ、そして人型に変形し近接戦闘の体勢移った。
軽量化のため重い威力の高い武装は積んではいないものの、接近されたら手刀で一突きにされる。それを食えばいくらリエズでも一溜まりもない。
「あーもう!ちょこまかちょこまか鬱陶しい!」
「確かに、これは厄介だな…… 急上昇からの急降下で追い越したやつを撃つか」
「やれるそれくらいかな 速さじゃ負けちゃうもんね じゃあ背中任せて!」
「じゃあ、行くぞ!」
翔と凛菜はスラスターの出力を最大にし一気に空へ急上昇した。狙い通りにスカイファングが集まってきて追撃してきた。
そして二人は機体向きを反転させ今度は急降下し、すれ違いざまにスカイファングを斬り落とした。さらに、すぐに射撃に切り替え4機、さっきのを含め半分の計7機撃墜した。
再び同じ方法で攻撃を行ったがさすがに通じなかった。
「同じ手は通じないか……」
「相手もバカじゃないからね…… どうする?このままだとこっちの活動限界来ちゃうよ?」
戦闘開始から1時間ほどが経過していた。ビーム兵器をいつもより多く使用し、さらに、スラスターも長く最大出力にしていたため活動限界がいつもより大幅に短くなっていた。
活動限界到達すればしばらくは全く動けなくなる。二人に次第に焦りが見え始めた。
「使うしかないか……」
「え、ダメだよ!今回は禁止されてるし、それに今使ったら限界に到達しちゃうよ!」
タイムリミットは刻一刻と迫る。もはや手段を選んでいる余裕はなかった。
「後でアハトワさんと整備長に何されても知らないからね!」
翔の乗るリエズは能力に合わせ様々なチューンが施してある。
その一つにマルチロックオンシステムがある
だがこのシステムは情報の同時処理による発熱と、熱反応炉の出力上昇に伴う発熱によりシステム使用後極端な出力低下、最悪の場合機体の活動が停止する。
「センサー起動、索敵開始 目標8機ロックオン。目標の回避方向を予測。熱反応炉、出力上昇 一斉掃射!」
細かなビームの光と爆発の光が一瞬、闇夜を明るくする。
黒煙の中から2機スカイファングが飛び出し、戦線を離脱しようとしていた。
「しまった!凛、頼む!」
「任せて!」
凛菜はバステルタを変形させ、スラスター出力をあげ、必死に追いかける。
「逃さないよ!」
凛菜のバステルタはさらに速度を上げ、変形解き超振動ブレードを手に持ちすれ違い様に切り裂く。
「一つ!あと1機!」
さらに速度を上げ、炉は最大出力になっており放熱フィンが赤く発光していた。
そして、ほぼ激突するような形で最後の1機を斬り裂いていた。
夜間戦闘は宇宙での戦闘より暗く、かなり翻弄されたためか眠気の怒りはどこかに消え去っていた。