#11 突き刺す月光
早朝、再び大量のミサイルに襲われた。
昨日は他の味方の基地も、同様に攻撃を受けているらしい。しかし、どこの基地も被害は問題無い程度だったという。
「今回は被害ゼロですね」
「でも、主砲を結構使ったから周りの環境考えると今日は使えないな」
アブルフェーダ級の主砲はエネルギー兵器、つまりビーム兵器である。そして、そのエネルギーは電力で、発電しているのは艦に登載されている熱反応炉だ。
基地内であまり使いすぎると、周りが灼熱地獄となってしまうため何度も使えない。
「あと、ミサイルの残りと生産量だな 3番艦と8番艦のも合わせてチェックしてくれ」
「了解です」
武装モジュールではミサイルの生産を行える。しかし、生産量は調子がよくて毎時9発、両舷合わせて毎時18発ほど。調子が悪いとその半分程度である。
前の2回の攻撃で4分の1ほど消費してしまっている。ストックはある程度あるものの、ミサイルは使用頻度が高いため、常に満載にしておきたい。
「ストックは何とかなりますが、生産量が落ちてますね……」
「そうか…… 念のためアレを使えるようにと、整備兵に伝えておいてくれ」
「了解しました! でも、アレって誰がコントロールするんですか?」
「一応整備兵がやることになってるが、念のためここの人間でも使えるようにしてくれ」
「わかりました!」
アイがマニュアルを取りにブリッジを出ると、翔と会った。するとアイは、一週間くらい前の戦闘のことを思い出し、翔がこちらに気づいた。
翔もその事を思い出し、逃げようと思ったがもう、間に合わなかった。
「池上さん! あのときの戦闘でマルチロックオンシステム使いましたよね 使用禁止って言ったのにもかかわらず!」
「そ、それは…… その…… あはは……」
「んっ…… 笑って誤魔化そうとしてもだめです!(あ、やば! 相変わらず可愛い! ザ・イケメンという訳じゃないけど、そこそこかっこいいし、それに可愛い 歳ほぼ一緒だけど抱きついて撫でまわしたい!)」
アイにとって翔はアイドル的な存在なのだ。清楚な顔の裏にとんだ欲望をいつも隠しているが、攻撃が止み緊張が緩んだ今、欲望の蛇口も緩みそうになっている。
しかし、欲望の蛇口が緩み、放出してしまったとき、彼女は同時に死が訪れることを知っている。
そう、翔のガールフレンドである日立凛菜だ。その事を常に頭に入れ、ギリギリのところで我慢している。
「まあ、もういいですけど 次はちゃんと守ってくださいね!」
「はーい」
「(はわわ! 適当な返事も可愛い! かわいすぎて死ぬ!)」
「どうかしましたか?」
「いえいえ! それでは、用があるので」
何とか色んな意味で死を逃れたアイは、コントロールルームにあるマニュアルを探した。
狭い室内には埃が多く、全くと言っていいほど使っていないようだ。
「どこかなー あ、あった! 高周波振動防御システムだからこれでいいよね」
この防御システムは名の通り、振動波で守るのだが、この艦のサイズで使用するとなると問題が出てくる。
一つは、人体への影響だ。もし、生身の人間が外にいる状態で使用すれば、まず生きてはいられない。その為に、常にどこに人が居るかを確認しなければならない。
二つ目は、振動波を膜のように離れたところに留まらせるのだが、非常にデリケートで、少しでも数値がずれれば膜が崩壊してしまう。
他にもあるのだが、これらを迅速化のために一人から二人で行わなければならない。
しかし、防御力は高く、あの程度のミサイルなら難なく防げる。
「持ってきました~」
「じゃあ、アイと光博 今日中に覚えておけよ」
「「え、え!」」
「復唱は?」
「「りょ、了解……しました……」」
まあ命に関わることだから仕方がないことだ。
しかしそのマニュアルは今どき珍しい紙でできていて、ざっと500ページほどある。
開くとこと細かく操作方法などが書いてあり、二人もすぐに扱えそうだった。
しかし、500ページもあるマニュアルを片手で汗一つかかずに持ってきたアイの力とは一体……。
アイと別れたあと、ハンガーブロックに戻ってきた翔は整備兵が慌ただしく動いているのが見えた。
「あ、翔ちゃん なにやってるのか知ってる?」
「さあ そういえばさっき、アイさんが分厚い本持ってたな」
「なんの本……なに!?」
平穏な空気を引き裂くように警報が鳴った。
敵の数は一つ。偵察かと思われた。
しかし、敵機の映像をメインモニターに映すと明らかにアハトワの様子が変わった。その様子を見てブリッジクルーの誰もが不安に思った。
「アハトワさん どうしたんですか?」
アイが恐る恐る訪ねる。
「コード666x…… 全機に通達!絶対に近寄るな!」
出撃したのは、翔とヴィルと凛菜だったのを確認したアハトワは少し安心したようだった。
この三人は軍の中でも選りすぐりのエースで、そう簡単にやられはしないと思ったのだ。
コード666xは基地上空で停止し、三機は666xを囲むように配置した。
すると、666xから映像通信のリクエストが来た。
「リクエストを許可 メインモニターに、音はスピーカーで流せ」
「りょ……了解 リクエストを許可 メインに映像を出します」
するとそこには15歳くらいの少女がコックピットのシートに座っており、手にはメモを持っていた。
映された少女の顔を見てアハトワは激しく動揺したのと共に、ある確信を得た。
あの男がこの戦争に直接関わっていることを。




