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月下のRIVINCITA  作者: 祥朋
第1章始まりの戦争
12/15

#10 月の涙


 全員が驚愕していたところにアハトワから通信が入る。

 

 『鬼ごっこというのは冗談だ』


 実際の内容は普通の試験プログラムだったのだが、それはそれで退屈だ。

 

 一通りこなし全機帰投した直後、敵の接近を知らせる警報が鳴り響いた。

 

 『敵はチャンネル諸島沖、西南約50km 高速戦闘艦1隻、フライトモジュール装備5機』

 「これ、おかしくない?」

 「少ないな 偵察かな」

 「いや偵察にしては多い 罠としか思えんな」

 

 なにも音沙汰無いまま1時間が過ぎた。

 敵部隊は攻撃も撤退もする様子はなく、その周辺を動き回りやがて洋上で停止した。

 そのまま7時間が過ぎた頃、ようやく動きだした。

 敵はそのまま転進し撤退していった。

 

 「アイ、奴らがどこから来たかわかるか?」

 「どこまで追えるかわかりませんがやってみます! ここをこうしてっと」

 

 追跡はコンピューターに任せ、アイは自前のPCで画像解析を始めた。

 解析にすぐに済み、所属が判明した。

 所属はハワイ基地。規模は大きいものの、時代遅れな兵器が多く、国連軍内では、動く骨董展覧会としてバカにされている。さらに、左遷されたものがよく配属されることから、[人材の墓場]又は、[文字通りの孤島]など、評判は散々だ。

 

 「実績作ろうとして焦ってるんですかね?」

 「かもな あんな戦力で来ても無駄死にするだけなのにな……」

 

 アハトワが呆れた声で呟いた。

 

 「そういえば、予定では今夜打ち上げるんだったな 光博、天候と物資の状況の確認頼む」

 「了解! 物資積み込みの方の確認いってきます」

 「ほんとここの食料プラントが生きててよかったですね!」

 

 月面国家軍は戦うよりも重要な任務がある。それは、故郷の月へ物資、主に食料を送ることだ。

 ラッセル戦闘の後、月各地の食料プラントが不調になり、今では虫の息だ。

 輸送シャトルは各艦に一機ずつ搭載されており、今後、各地の月軍基地で打ち上げられる。その数は約20機ほど。

 

 軍人が一人、基地が一つ、そしてシャトルが落ちるごとに月の人の死は近づく。

 打ち上げは23時。皆、敵が来ないことを祈っていた。




 22時30分、敵は来なかった。

 「総員、シャトル打ち上げにより第一種戦闘配置!」

 「打ち上げ準備開始します」

 「各作業、全て完了 熱反応炉冷却完了」

 

 オペレーターたちが打ち上げ作業を速やかにこなしていく。

 

 「熱反応炉、運転開始 出力を0から7%へ」

 「異常無し 出力を7から19まで上昇」

 

 徐々に出力が上昇していくのと共に周りの温度も上昇していく。

 出力が50%を越えた頃、外はサウナ並に熱かった。

 

 そして、打ち上げ5秒前、4……3……2……1……0。

 大きな光を放ちながら輸送シャトルは月に飛び立つ。

 誰もが見上げ、見守っていた。

 シャトルは順調に飛行し続け、やがて大気圏外に出た。

 アイリスのコントロールから異常無く離れたところで基地中が歓喜に湧いた。

 

 「うまくいってよかったですね!」

 「本当に! あと二回、うまくいってくれるといいですね」

 「だな 第一種戦闘配置を解除、警戒レベルを平常時へ 皆、お疲れさま ふう……」

 

 肩の荷が降りアハトワは珍しく顔が緩んでいた。

 

 ハンガーには第一種戦闘配置が解除されたにも関わらず、パイロットスーツを着た翔と凛菜、そしてヴィルもいた。

 

 「今夜当番じゃん……めんどい」

 「まあそう言うなって、凛 なにも無ければこの涼しい空間でのんびりできるからさ」

 「そうだぞ、凛菜 それにこれはパイロットとして必要な……って聞いてない……」

 

 ヴィルが珍しく年長者らしく説こうとしていたが、凛菜には完全に無視されていた。


 「(明日、槍でも降るんじゃないか?)」

 

 翔はもちろん、冗談のつもりで思った。

 今夜は何事もなく朝を迎えた。

 しかしその朝、翔の冗談が現実になってしまった。

 槍ではなく総数200以上のミサイルがこの基地を襲った。

 

 「直撃コースのミサイル 数30!」

 「右舷武装モジュール、ミサイル発射管80門全て開け! 迎撃ミサイル装填! 一斉発射!」

 

 三隻から一斉に放たれたミサイルは直撃コースのミサイルをほとんど落とした。

 しかし、アブルフェーダ級に搭載されているミサイルは、サイズ、威力共に国連軍より低いため数だけではどうにもならなかった。

 

 「残存14! 数発がいまだ直撃コースです!」

 「CIWSをレッドモード! 全主砲、拡散モードで照射開始!」

 「やってます!」

 

 ブリッジクルーたちは、残りのミサイルを死ぬ気で追い撃墜していく。そのお陰で被害は奇跡的に無かった。

 その直後、西海岸沖のブイ型レーダが海中を航行する物体を5つ発見した。

 

 「称号結果、国連軍所属 一等潜水艦 5隻のみです」

 「今の攻撃は間違いなくこいつらですね」

 「だな、総員に通達しろ 第三種戦闘配置と」

 

 

 この翌朝、再び大量のミサイルによる攻撃を受けた。

感想やアドバイスなどいただけたらうれしいです

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