#8 滲む星明かり
「(ここはどこなのだろうか)」
少女は展望デッキで外を見ながらふと思った。
「(シロウが言うには地球と外に見える赤い星、火星の間らしい。大昔は火星に生き物がいるって言われていたみたいだけど、実際に居たのは過去の計画で餓死した人間の骨だけだった。生き物なんて一回も見たことがない)」
後ろから人が近づいてくるのに気付き少女は後ろに振り替える。そこには高身長の男がいた。
「ここにいたのか そろそろ夕食だよ」
「あ、もうそんな時間?すぐ行くね!晃太も一緒?」
「そうだよ 久しぶりに全員揃ってでの食事だ。」
少女と男は展望デッキから出ていった。
第3、第8中隊と合流した次の日の朝。翔は、昨夜、徹夜で作業させられた整備兵の様子を見に行ってみた。
そこには完璧に仕上がった機体たちとともに燃え尽きた整備兵たちが倒れていた。
「うわぁ、これはひでぇ」
完全にアハトワに引いていたところに本人が来た。
「翔か、おはよう」
「おはようございます 二つも金槌なんて持ってどうしたんですか?」
「これか?流石にここで寝かしておくわけにもいかないからな」
翔は完全に金槌で殴って起こすと思っていた。
しかし、その予想は大外れだった。
アハトワは寝ている整備兵の耳元で金槌同士を叩き高い金属音をならしていた。
「耳元でこうするとなこいつら起きるんだよ」
翔にはそのときのアハトワの姿は母親のように見えた。
「暇なら手伝え、ほら」
そうして金槌を手渡され、翔も手伝い始めた。整備兵たちはにょきっと立ちゾンビのように歩いて自室に向かった。
「さて、私も寝るか」
「寝てないんですか?」
「ああ、ちょっと考え事をしていてな 気づいたら朝になっていた それじゃあ私は寝る」
大きなあくびをしてアハトワはハンガーブロックを去った。
「(途端に暇になったが、外でも走るか)」
地上に降りられるハッチのあるメインブロックの一番下の階に行き外に出た。リエズに乗って空からしか3隻のアブルフェーダ級が並んでいるのを見たことがなかったが、改めてみる大きさに内心驚いていた。
朝だからかほとんど人は居いが、防衛用のイージーバステルタが10機ほど飛び回っていた。
「あれを一人で動かしてるんだからすごいよな」
「実はあれはとても簡単なんだよ」
後ろから急に声が聞こえ振り替えると美形の男が立っていた。
翔は一気に飛び退き小動物のようにガクガク震えていた。
「だ、だ、誰ですか!」
「これは失礼 私は月面国家軍第3中隊所属、イージーバステルタのコントロールの一人、アラン・シャイエです」
「どうも。池上……翔……です」
「おお!あなたがあの!10代でリエズの専用機持ちになったという」
翔自身は知らないが、軍の中で翔は何かと有名人なのである。翔に限らず第7中隊の面々は有名人ばかりだ。
「それで……簡単とは」
翔が本題に戻す。
「実はあれは他の機体同様脳波コントロールなんですが、親機を中心に子機がランダムで動いてるだけなんです まあ、10機分の映像を同時に確認しなければいけないのですが」
「やっぱり……ある程度は大変……なんですね……」
アランの端末に呼び出しの通知が入る。
「そろそろ交代の時間ですか それではまた」
「お……お気を付けて」
アランは外の格納庫に行き、その格納庫からイージーバステルタが姿を表し空へ飛び立った。
上空では2機のイージーバステルタ(親機)が引き継ぎ設定でも行っておるのか向かいあってしばらく静止していた。そして、もう一機の親機のイージーバステルタが降りてきた。
「(そろそろ戻るか……疲れたし)」
まだ10分くらいしか経っていないが疲れた様子を上空から見ていたアランがクスクスと笑っていた。
「(英雄の一人である池上さんが極度の人見知りという噂は本当だったんですね なにか悪いことをしてしまいましたね)」
アイリスに戻った翔は自室で仮眠をとり、そのとき夢を見た。
起きると泣いていたのか目が痛かった。目を擦り体を起こすとそこには凛菜が座っていた。
「また、あのときの夢?」
「うん」
「大丈夫?」
「うん それより……」
「次何が起こるかだよね」
「小さなことだといいんだけどね」
顔を洗い、いつものように二人は朝食を食べに食堂に向かった。




