異様なまでに堂々と颯爽と道を歩く奴
僕と白野は休日を利用して、街中に来ていた。
街は賑わい、多くの人々が休日を楽しんでいる。
しかしそんなとき、僕達は偶然奴を見かけてしまう。
異様なまでに堂々と颯爽と道を歩く奴がいた。
別名、異様なまでに堂々と颯爽と道を歩く一般の人だ。
それを見て、隣にいた白野がぽつりと呟く。
「苦手だ」
それに僕も気軽に賛同する。
「ああ。僕もだよ」
白野は更に続ける。
「なんであんなに堂々と歩けるんだろうか?これ見よがしに、まるでモデルのように」
「う、うん。まあな」
僕はなんとか賛同する。
更に白野は続ける。
「なんであんなに自信を持って歩けるんだろうか?別に自分で何か大層なことを成し遂げたわけでもないだろうに」
「う……うん」
そこまで言わなくても……僕はちょっとだけそう思った。
白野はもう止まらない。鬼のように捲し立てる。
「なにが自信の源なんだろうか。容姿?性格?容姿?
海外の俳優にでも憧れているんだろうか。でもモデルや俳優があんだけ堂々とふるまうのは、仕事柄だったり、努力によって成功を掴んだという確固たる自信からくるものだと思うけど。
しかもやたら、都会に多い気がする。しかもやたら、サングラスな気がする」
……いくらなんでも言い過ぎだ。コンプレックスが酷い。
「まあ、落ち着けって白野。別にいいじゃんか!」
白野のひねくれっぷりが爆発している。
僕は白野を宥めるために精一杯の作り笑いを見せる。
それを見た白野は少しふて腐れた表情で、
「まあ別にいいけどな。とにかく、ああいう人たちは大抵容姿に優れているんだ。そして俺はそんな人たちに全く相手にされない。つまりただ妬みだ。悲しい妬みだ。理不尽な妬みだ。とんでもない妬みだ。当たり前だけどあの人たちは何も悪くない。すまなかった」
白野が今はもう見えない、異様なまでに堂々と颯爽と道を歩く人に謝った。
そんな白野を僕は少しだけ可哀想に思った。
「まあ、俺達冴えないもんな。別世界の人達だよ。気にせず生きようよ」
「……だな。やっぱりお前はいいやつだ。俺はお前と一生いるって決めたぞ」
……なんだかプロポーズみたいだ。気持ち悪い。
白野は大きく目を見開いて、僕を見つめている。
僕は再び精一杯の作り笑いを作る。
「はっはっ……。まあ。人間いろんな人がいるからな。お前と気が合う人もたくさんいると思うよ」
「いや、お前だけでいい」
「はっはっ…。わかったから」
「お前に決めたからな」
「……」
僕はそれ以降、異様なまでに堂々と颯爽と道を歩くようになった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。