表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/43

生まれたての主人公、羞恥を知る

 最初の一日は本当に辛かった。

 考えても見て欲しい。

 体が赤ん坊であっても、心は十八歳。

 思春期まっさかりだ。

 それが着替えから食事、下の世話に至るまでもが、甲斐甲斐しくミルによってなされるのだ。

 年頃の若い女の子であるミルに、である。

 アレイほどでは無いけれど、彼女とて、十把一絡げのアイドル以上の美貌を持つ。

 これが恥ずかしくなくって、何を恥ずかしいと言えるだろう。

 人によっては羨ましがられるかもしれないが、生憎とぼくはそういった状況で喜べるほど女慣れしていない。

 モテなかったのだ。

 ぼくは。

 一日目が経った時点で、一刻も早く喋ろうと喉がれるのも無視して懸命に発声を繰り返した。

 ぼくの体は人間のそれでは無くなっているようで、成長が著しい。

 生後一日にして、体は一歳児と変わらない姿になっていた。

 同時に発声器官も発達し、舌が回り、口蓋が動き、声帯の開閉を思う様に扱えるようになる。

 意味を成していなかった喃語が、理解できる言語へと移り変わる。

 淀みない成長は心地よく、自身の意欲を一層に掻き立てた。

 そうして、二日目が終わり、ぼくは言葉らしい言葉を使うことはおろか、以前のように会話することも可能になった。

 もっと言えば、昔よりも流暢に操れる。

 不得意だったはずのサ行を使った早口言葉すら、噛まずに延々と唱えられた。

 ミルはぼくの目覚ましい成長に驚きながらも、都度都度つどつど、褒めそやす。

 それもまたぼくの学習意欲を引き上げた。

 そして、三日目の朝。

 ぼくの習熟度合を鑑みて、ミルはアレイに引き合わせても問題ないと考えたのだろう。

「ご主人様をお呼びして参ります」

 そう言って部屋を出て行った。

 三日目ともなると、ぼくの体は走れるまでになっていたので、入り口まで付いていき、手を振って見送った。

 ミルがぼくを振り返って見ては、目じりを緩ませ、頬に手をあて、「ほぅ」と満足げに嘆息をつくのは何なんだろうか。

 ちょっと怖い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ