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勘違いと心遣い

 料理に関してはとても喜ばれた。

 飲み物の様に流し込んでいく様は、求められている感じがして、本当に気に入ってくれたのだな、と思う。

 ぼくが声を掛けると、二人とも美味しいと言ってくれたし、完食もしてくれた。

 ただ二人ともしきりに横に置かれた水へと手を伸ばすのが気になる。

 鍋は水物だから、喉が渇くというのはあまり無いと思うんだけれども、ひょっとしたら熱過ぎたのかもしれないな。

 ぼくは自分が食べる暇も無く、ピッチャーのような大瓶おおがめを使って飲み干されて行くグラスに都度都度、水を注ぎこんでいった。

 ぼくが甲斐甲斐しく接するのを、遠慮するミルを押し留めるのが、一番、大変だったかもしれない。

 二人共の食事が終わり、それぞれの反応に満足したぼくは、さて、それじゃあそろそろ食べようかと自分の席に着く。

「まふぇ」

「はい?」

 アレイが何と言ったか聞き取れず、ぼくは首を傾げる。

 水を飲み、喉を抑えつつ咳払いをするアレイ。

 喉の調子を確認した後、アレイは再度、ぼくに向かって言葉を言い直した。

「待て」

 そして、彼女はぼくの席の前に置かれた皿を取り上げて、自身の前へと置き直す。

「これはお前が用意した我への料理だ。我が一人で食す」

 ぼくは知らずに笑みを綻ばせていたかもしれない。

 やばい。

 馬鹿な顔をしているかも。

 アレイの要求は、それはそれは嬉しいものだったけれど、しかし「ぼくも腹ペコなんだけど……」と気持ちとは裏腹な体の求めを訴え出た。

 なにせ朝から何も食べていないのだ。

 二人の美味しそうな食事風景を見せられて、空腹はピークに達しつつある。

「ミル」

「かしこまりました」

 コップに注がれた水を一気に飲み干したミルは「トータ様、しばしお待ち下さい。貴方様のお食事は私がご用意いたします」と調理場へ足を運んで行った。

「ならぼくも手伝いますよ」という言葉に重なる様に。

「座っておれ」

「座っていて下さい」

 二人同時に声を掛けられてしまった。

 ねぎらってくれているのだろうけれど、そこまで強く言い聞かせなくても、素直に待っているのに。

 座って待っているのも暇なので、ぼくはミルが食事を作ってくれるまでの間、アレイの水汲み係として頑張ることにした。

 涙を目に湛えながら、美味しそうに食べてくれる様を見るというのは、それはそれで楽しいことだった。

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