十三日目 午前十時
私がもう一度体を強化すれば確実に今日は起き上がれないし、ウォンがむきむきになるのは例え誰が許しても私が耐えられない。
どちらにせよ魔法を唱えることはできないとウォンに伝えたが、ウォンは変わらずじっと私を見上げていた。きゅー、きゅー、と時折鳴き声も混じり出す。
これは許可が貰えるまで動かないつもりだな……。
じっとそのまま一分ほど経過し、そしてその五分後。
私は死んでいた。
勿論比喩である。が、身体はぴくりとも動かない。びっくりするほど動かない。なるほどこれは動かん。指先一つ動かせる気がしない。瞼すらゆっくりゆっくりとしか動けない。笑えるほど動かない。
耳元ではウォンが楽しそうに鳴いている。ウォンが楽しいなら私はそれでいい。今日一日中ずっと日向ぼっこも苦じゃない。それに日向ぼっこは好きだ。
……トイレどうしよう。……まあいいか。
大自然の中だからな。うん。……うん。
思わず遠い目になる。後悔だけはしている。反省はないが。
暫く横になっていると、顔に雲や鳥以外の影がさした。
「おはよう、朝からどうしたの」
「何やったら朝から目が死ぬんだよ」
ひぃ、と優矢が引き笑いし、ハルが首を傾げる。答えるように、キュ!と元気よくウォンが手を挙げた。
「キュキュ、キュキュキュー……きゅー」
「ふんふん……なるほど。身体強化を使ったのね」
ウォンとハルがナチュラルに話している。ハルはよく知った魔物とならニュアンスと何が言いたいかぐらいなら分かるらしい。
喋っているウォンたちの方をずっと見ていた優矢が突然きりっとした顔で私の方を向いた。な、なんだ……?
「な、何を言ってるかわからないと思うが俺も何が起こったか分からなかった。機嫌が分かるとか適当に頷いてるだとかそんなチャチなもんじゃなか」
「ストップだ。多少アレンジしててもそれ以上はいけない。寧ろ遅すぎた」
突然のネタ振りに動揺したのと、口周りの表情筋がなかなか動かなかったので、止めるのが遅くなってしまった。某砂使いの犬様が好きなのは私だけじゃないはず。
「いやー、会話にネタ挟んで反応してくれると感動するな! ここだと総スルー過ぎて、虚しくなる、まじで」
旅立ちの日に言った「優矢、いっきまーす!」ネタも総スルーだぜ、と笑う優矢。……パーティ内でどんな風に見られてるんだろう。同郷として少し心配になった。
そして事の次第が全員に伝えられると、
「ひぃ! っふ、はっはっはっ! マジかよ! ……ふー……うん、わかる、それなるよな。俺もなった。つーか、強化すると未だになる」
「んー、部分的に強化すれば良かったんじゃない? 足だけとか」
優矢が一頻り笑い終えると真面目な顔で共感し、ハルがにっこりとそう言った。それだ!
「取り敢えず洞窟に戻りましょ」
「朝ご飯!」
いい笑顔で優矢が言う。というか朝ご飯食べてくのは絶対なのか。二人に宇宙人宜しく連行されながら私はそんなことを思った。
肩の上では優矢と同じく朝ご飯を楽しみにする小さな生き物がごろんごろんと動き回っていた。




