十一日目 午後五時
「……フェリス。魔物の守護者以外にも魔物を育てられるのか?」
狸寝入りをしているフェリスに問いかける。フェリスは翼を震わせると、閉じていた瞼を開いた。
『……なんだ、気付いておったか。
言っておくが前例はないぞ。だが、まあ、いけるじゃろうな。『魔物』は弱いが逞しい、環境が変わったところで死にはせん』
万が一、魔力不足でもなった時は魔物の守護者に見せてやればいいじゃろ、とフェリスは少し気怠げに言った。
「あら、意外とタフなのね」
ハルが驚いたように目を瞬かせる。私も意外だ。ルーが魔力不足で寝込んでいた時のイメージがあるからだろうか。
『魔物とて野生で生きておる。そう軟弱では生きておれん。……ふむ、出来れば幼体の間は魔物の守護者が作る魔力水を飲ませてやった方がより強くなるじゃろうがな』
それだけ言うとフェリスは再び眠りについた。今度は本気で寝入っているようだ。つまり……今の一瞬で眠りに落ちた。某猫型ロボットと共にいる少年より早い。
多分このまま夜まで寝るつもりだろう。言われてみれば梟は夜行性だった。道理で眠たそうなはずである。
「ライラック、魔力水ってなんなの?」
きょとんとした顔でハルが私を見る。とうとう出番が来たらしい。
私は笑顔を浮かべ無言で魔法袋から石臼を取り出した。
よし、久々だが働いてもらうぞ。石臼!
***
ごりごり、ごりごり、ごりごり。
ごごごごご、ごりり。
黙々と石臼を回す。ただ無心でごりごり回す。なんだか不思議と癒される自分がいた。
色の付いた粉末がみるみる溜まっていく。小さな山がみるみる出来上がる。
ゴリリッゴリゴリゴリゴリ!
私の隣では二つ目の石臼を高速で回すハルがいた。私の軽く倍のスピードだ。うわ、はやい。
何時もより何倍もの時間短縮ができた。それでいて量が多い。これからも是非ともハルには手伝ってもらいたい。貧弱? 知ってる。
それから魔法書で『ニィド』と『ヨーデル』用のご飯の作り方を調べる。『ニィド』は魔石の粉末と水、『ヨーデル』は魔石の粉末とお馴染みの聖水だ。
蒸留水を作りながら、『ニィド』に粉末をまぜあわせる。
それを見たハルが一言「主夫そっくりね」と言い、笑った。言われてみれば確かに料理に似てる気もする。
因みに私のイメージは色合い的にどっかのぶっ飛んだ科学者だ。
このパッションピンクは飲み物として駄目だと思う……。




