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十一日目 午後四時

 ヴァイアスに礼を言い、私は覚束無い足取りで洞窟に戻った。降り積もった筈の雪は傾いた太陽に照らされ、地肌を露出させていた。



……そうそう全てが上手くはいかない、か……。



 イーグライフや、ヴァイアス、ブラットウルフのルーは自衛できるほど強い。キャルロも魔法書で見たところ弱くはない。


 だが、ヨーデルやニィドは、ウォンやモナと同じなのだ。


 ルーやヴァイアスのような鋭い牙を持っているわけでもない。

 イーグライフのように空を舞えるわけでもない。

 キャルロのように霧を使い、敵を翻弄出来るわけでもない。



 ニィドは針で自衛出来るかもしれないが、先程見た針は何本かへし折られ、そうでなくてもぐにゃぐにゃに折れ曲がっていた。まるで、何か大きなもので潰されたかのような有り様だった。




「あら、ライラック……随分怖い顔してるわね」


 ウォン達を寝かしつけていたハルが私の顔を見上げて小声でそう言った。


「……そうか……?」


 私は眉間の間を指で抑え、ハルの横に腰を下ろした。


 眼前ではウォンが腹を出してすやすや快眠していた。ヨーデルは小さなそよ風に羊毛がそよそよ吹かれながら鼻提灯を膨らませている。

 ニィドは針で身を守るように包まりながら、その胸に帽子にヒビが入ったどんぐりを抱いている。



……ああ、可愛いな。



「……ニィドとヨーデルのことなんだが」




***


 ヴァイアスから伝え聞いたことを一通り話し終えると、ハルはニィドを見ながらぽつりとこう言った。


「……あ、アタシにも育てることって……やっぱり無理かなあ」


「……ハル」


 珍しく気弱なハルに私は驚いた。そんな私を見てハルは苦笑した。


「あのね、ニィドを見てると昔のアタシを思い出すのよ。ちょっとだけね。……昔、外の全てを怖がって丸まったまま消えたかったことがあったの、アタシ。でも、それに比べてニィドは強い子ね」


 ハルはニィドを見ながら微笑む。私は無言で相槌を打っていた。

 寝ているはずのフェリスが不自然に身じろぎしていた。多分、狸寝入りしているのだろう。


「……だってあの子、死にたい目をしてないわ。沢山のことに興味津々なのね。でも、恐怖が先立ってる。だからこそアタシ、この子に素敵な景色や美味しいもの、沢山もことを見せてあげたい。

外の世界は恐ろしいものばかりじゃない、って伝えたいのよ」


「……そうだな」


 その為には、ニィドの気持ちや、魔物の子供(生まれたてではないとはいえ)は魔物の守護者以外に育てられるのか、など色んなことを踏まえなくてはいけない。


それでも、ニィドが外の世界を少しでも良いものだとだと思ってくれるなら、きっとそれは素敵なことなのだろう。


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