九日目 午後二時
ヴァイアス達と別れた後、私達は子供達の入った籠の前に座り作戦会議を始めた。
会議といってもそう深刻で堅苦しいものではない。真剣ではあるが。
子供達の親探しのための会議だ。
「私の方は今のところ『ブラットウルフ』と『イーグライフ』の二匹はなんとかなりそう、な気がするんだが……」
もし一匹も親が見つからなかったら全員私が育てたっていい。ウォンもいるし、きっとなんとかなるだろう。
「アタシの方は『ヨーデル』の生息地なら知ってるわ……でも、なんともいえないわね。特にこの種は人に狙われやすい子だから」
「そうか……」
狙われやすい魔物もいるのだな。
のんびり皆の枕になりながら寝こけている子羊をそっと撫でながら、切ない気分になった。
親を見つけられるといいのだけど……あ!
「そういえばシソーラスで魔物の現在地がわかるようになったんだ」
忘れかけていたが、これは親探しに使えると思うのだ。
「……どういうこと?」
きりっと真剣な目をしたハルが私を見据える。思わず私は背筋を伸ばした。頭上のウォンもきゅっと伸びたのがわかった。
「あ、えーと、自分を中心に円状に広がって魔物の現在地を探せるようになった。それと数はわかるけど、魔物の種族までは流石にわからないが」
「範囲は?」
「範囲はよく分からないが、多分半径百メートルぐらいなら余裕だと思う」
「成る程、そこら辺は要検証ね。多分訓練次第で範囲も伸びると思うわ。……とりあえずそれを使って探しましょう」
……使えるかも、といったのはいいが、範囲はたかだか百メートル。森全てを徒歩で探すとなるとなかなか時間が掛かると思うのだが。ま、まさか。いや、元々そうだっただろうが。
最早諦めの域に達してきているが、子供達のためを思って少しスピードを緩めてくれると私も嬉しい。
「……きゅ、きゅぅ」
震えるウォンと手を取り合って互いを励まし合った。いつか私自身があのスピード走れるようになるから、それまでの辛抱だ。
それを聞いたウォンがぶんぶん首を横に振っていたが、多分恐怖が収まりきらないのだろう。
私は大きな籠を持って覚悟を決めた。
紐なしバンジー、油まみれで火事に特攻、象に噛み付くアリ。人はこれを無謀とも無茶という。
テレビでバンジーを飛び降りなかった芸人に昔、眉をひそめたことがあった。それを今は激しく後悔している。怖いものは怖い。
「い、いつもお世話になります……」
「人の一人や二人ぐらい軽いもんよ。全てをアタシに任せときなさい」
私よりよっぽど男前なハルにほろりと涙が出そうになった。こんな強い人に私はなりたい。
*ハルの最高速度 野生の豹に追いついて追い越せる程度の速さ。




