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八日目 午後七時

無論疑念はあったが、ぐだぐた言っていても仕方がない。私はメモ書きの指示に従う事にした。愛情が大切……愛情が大切……。



初めてウォンと会った日のこと。あの日感じた手のひらの温もりがどれだけ心強かったか。悪戯好きで好奇心旺盛だが、最近は年上らしくなろうとしているところが微笑ましい。


ルーが大きくなっていった日々のこと。今でも時々贈り物が届くこと。熱を出した時は本当に心配した。治って本当に良かった。


モナが耳を揺らして楽しそうに走り回っている姿。気は割と強いのに怖がりなところが可愛いと思う。


冷静沈着だが、子供思いのヴァイアス、年齢不詳のフェリス。ふかふか。

魔物のことを悶々と考えながら、ただ只管腕を回すことに没頭した。


すると先程まではうんともすんとも変わらなかった透明の液体が、徐々に赤みを帯び始めた。嘘だろ、解毒剤。


改めてここが異世界だということを思い知った。異世界ッテスゲー、である。



「不思議な薬剤もあるものね」


ハルが目を瞬かせながら赤みを帯び始めた薬剤を眺める。

味見しようとしたウォンの手を薬剤から視線を外さないまま止めていた。ああ、今の光景写真に撮りたい。

ウォンの食い意地が可愛い。


「確かに」


ハルの言葉に頷き、私はもう一度薬剤を見る。

もう随分それは赤くなってきていた。うん、これなら後数回ほど回したら終わりそうだ。





「よし、出来た!」


「ええ、きっと良く効くわ」


そう信じたいな、と思いつつ出来上がった解毒剤をヴァイアスの所へ運ぶ。小さい子たちが遊びまわっているから踏まないように気をつけて歩く。


魔草の草原、その真ん中で横たわるヴァイアスの前に私はその薬を置いた。


「……ヴァイアス、解毒剤が出来たが確実に効くという保証はない。材料が材料だから毒になるということはないと思うが、万が一ということもある。……それでも飲んで欲しい。頼む」


そしてゆっくり噛みしめるように私はそう言った。もしこれを飲んだことでヴァイアスの容態が急変したら私の責任だ。そしてそれも覚悟の上だ。



ヴァイアスは私をじっと見つめると小さく息を吐いた。


『……魔物ノ守護者ヨ、感謝スル』


そう言ってヴァイアスは解毒剤を飲んだ。







気がつけば私は泣いていた。


人が毒を持ったのだ。子供を攫ったのだ。

それを同じ、人間が連れ戻しただけの話だ。

それに私はきっといてもいなくても大した力になれなかった。それに、それに。



「……こちらこそ、信じてくれて……ありがとう」



考えた全てが、言葉にならずに消えた。


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