八日目 午後五時
「え、街の中って転移石使えねぇよな?」
優矢がぽかんとした表情をした後、部屋を飛び出して窓のある方へと走っていった。
それを横目で見つつ、私とヴァイアスは檻に入れられた何匹もの小さな魔物を出していく。弱ってはいるものの皆生きていた。魔物強い。
そして、渡されたメモを開く。
「『解毒剤 調合』
魔草:4 魔石:3 聖水:3
魔草と魔石をすりつぶし、冷えた聖水を1、常温の物を1、沸騰した物を1の割合で加える。
右周りに10回、左周りに赤色になるまで適量回す」
……全部用意できるんですがッ!
ええ、何処が面倒くさいんだろうか。魔草か。魔草なのか。まあ、確かに長持ちしないしなぁ。
よし、こうなればすぐ帰って作るしかないな。
「……それを集めるのを簡単だって思えるのは貴方ぐらいよ」
呆れたようなハルの呟きは聞き流した。
***
「逃げられた……」
ずーん、と効果音付きで落ち込む優矢にガルドが蹴りを入れる。鈍い音が響き、聞いているだけでも非常に痛そうだ。
「さっさと住人の洗脳を解きやがれ、勇者(三流)」
「カッコの中が酷い! ってかその言い方だと俺が洗脳したみたいじゃね!?」
と二人漫才をしていた優矢とガルドは最後に、私達に手を振って街へと消えていった。
「じゃあ、また」
色々とお世話になりました。
私達も手を振り、別れの挨拶をする。……やっぱり冷静に見てみても変わった勇者一行だったな。
ハルはヴァイアスの容態が安定するまでは私達と一緒にいるそうだ。大歓迎である。
ちらりと肩の上のウォンを見ると、小さな手を私に頬に押し当て「キュ!」と笑ったので、私も思わず笑い返した。
暗かったアメサスタの空は雲の隙間から光が差し込んでいた。あれだけ気味の悪い空気の充満していた街が清浄な気配に変わっていくのを感じる。
少しずつだが、きっとハルの知る昔の街の姿を取り戻していくのだろう。
街の出口に着くと、ハルが転移石を使った。相変わらずぐらぐらするが、最初に比べればなんのその。
人は慣れるのもである。
そして目を開くと、随分久しぶりのような気がする我が家があった。安心する、が、寝るわけにはいかない。解毒剤をつくるのだ。
走れ、私!
ふと、隣を見るとハルがいい笑顔をしていた。
……え?
「ギュァアアアアア!!」
「あああああああッ!!!」
悲鳴の二重奏である。揺れる揺れる、視界も揺れる。頭も容赦なく揺れる。
楽しげなハルが枝に飛び乗り、跳躍し、地面を駆け、水面を弾き、風を追い抜く。
安全性の保証されていないジェットコースター、ハル号に乗せられた乗客二名の絶叫が森中に響き渡る。
その後ろを走るのは、白い巨体を持つヴァイアスだ。魔法袋から取り出した大きめの籠に幼い魔物達を乗せた、比較的安全性の保証されたヴァイアス号だ。
ちらりとモナとヴァイアスの子供が仲良くじゃれているのが目に入った。
「……きゅ」
ウォンが寂しげに私の耳元で鳴く。うん、仲良かったもんな。寂しいよな。
慰めたいところだが、ちょ、あ、落ちるぅうう!!
「ああああ!!」
「キュキュキュゥウウ!!」
*祝十万文字突破! (比較的)明るい話で迎えれて良かったです……。
何時もありがとうございます!




