三日目
スマホの着信音で目が覚めた。
眠たい目を擦りながら、メール画面を開く。
「from 神崎 優矢」
「題名 無題」
「本文 この街の完全にアメリカじゃね?
やべ、俺アメリカ来たわ…!
街の名前もアメサスタだし似てるよな」
「添付画像 一件」
添付画像を開くと砂漠の写真が表示された。
……これの何処がアメリカなんだろう。
優矢のアメリカのイメージって一体……。
私は寝ぼけ気味で動きにくい手で「アメリカのアメしか合ってないな」と返信しておいた。
他の部分も合っていないが、そこは最早指摘する気すら起きなかった。
偶に彼は呟き感覚でメールを送ってくるので困惑する。
うん、あれだな。
現代だったら確実にツイ廃とやらだと思う。
そんなことをつらつら考えながら、私は起き上がった。
そして、モナの食事用に聖水を作る。
魔法袋から水の入った入れ物を取り出し、魔法で火を焚いてからそ水蒸気を集める。
『清めよ スクリアーズ』
その後にこの呪文を唱える。普段体を綺麗にするのに使っている便利魔法だ。
そうして出来た聖水と魔石の粉を混ぜ合わせ、完成だ。
翡翠色の魔石を使ったので、鮮やかな青汁のような色合いになった。
私は絶対に飲みたくない。
「……モナー?」
私は洞窟の最奥に行き、モナに食事を渡しに向かった。
モナはすっかり起きており、私の足元にじゃれついた。
因みにご飯を持っていないとこんな可愛い反応はしてくれない。
現金なやつ! でも可愛いから許す。
モナにご飯をあげながら、私は依然昏睡状態にあるヴァイアスを眺める。
仄かに灯る水晶に照らされ、真っ白な毛並みのヴァイアスは幻想的なまでの美しさを感じさせた。
……ヴァイアスを手当しないとな……。
一応、昨晩のうちに大きな外傷の手当はしておいたのだ。
だが、毒は魔法ではどうしようもなかった。
魔法書で調べたところ、何やら沢山の物を取ってこなくてはいけないらしい。
ドグサの毒には、
・キルトンの根と葉
・ルルバの実
・ドグサの実
……を混ぜ合わせたものが効くらしい。
ルルバの実は、何時ぞやに拾った渋い実のことだ。
これは魔法袋の中にとってある。
キルトンの根と葉、これはわからない。保留。後で魔法書に頼ろう。
ドグサの実と書いてあった事に少し驚いた。だが、すぐ納得した。
毒を制すには毒、ということか。
何事も使い方次第なのだな。
これも私は持っている。しかも割と大量に。
……まさかこれが役に立つ日が来るとはな。
モナのご飯タイムが終了すると、私はキルトンを探しに森に出掛けることになった。
モナはヴァイアスから離れなかった為、ウォンと二人旅だ。
***
キルトンを見つけた。
……その、洞窟の目の前に生えていた。
キルトンはこの森に生えている木の種類の一つらしい。
まさかのまさかである。
こんな所にいたのか、キルトン。
割と探し回ったのに……。
私は青々と茂るキルトンの木を見上げた。恐らく十メートル近くあり、木の葉が上方付近にのみ茂っているこの木が、キルトンだ。
……また重力操作の出番だな。
気は乗らないが、魔草の崖よりはマシだろう。
キルトンの葉と根を採取し、ドグサの実と、ルルバの実を地面に置いた。
それらを磨り潰して容器の中に入れ、そして熱した聖水の中にドグサ、ルルバ、キルトンの順に煮込んでいった。
どれほど煮込んだかわからないが、次第に液体が黄色から、深い緑へ、そして紫がかった紅色に変わっていく。
……あれだ、パンにヨウ素をかける実験に似ている……。
そんな感想を抱きながら、私は焼き鳥もどきに使った鉄串を5本ほど使い、ぐるぐる中身を掻き回す。
鉄串の使い方を確実に間違っているのはわかった。
本当、これ何に使うのだろう。……謎だ。
混ぜ終わり、私はヴァイアスの眠る最奥に向かう。
この薬が効いたら良いな……。
私は昏睡状態である手負いのヴァイアスの前に座り、薬を取り出した。
ヴァイアスの傷口に薬を塗りこんでいく。
飲ませるのが一番効果が高いのだが、昏睡状態でそれをやると窒息する可能性がある。
ぐったりと弱り果てたヴァイアスは傷口に触れているというのに、身じろぎ一つしなかった。
私は無意識に唇を噛んだ。
どうしてこんなに傷だらけなのだろう……。
私は祈る気持ちでヴァイアスを優しく撫でた。




