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魔物の守護者 〜もふもふハーレムの同士達~  作者: 流土
一章 ブラットウルフ編
35/106

幕間

*幕間は主人公以外の目線です。


今回は名も無きモブ目線。








 何だこの強さは。


Eランクのクエストなんかで、出ていい魔物の強さじゃないだろ……!


 仲間がたった一匹の、それも『ブラットウルフ』に手も足も出ず、次々と薙ぎ倒されていく。


 悪夢だと思った。


 俺達のパーティーは最近それなりに名を挙げてきており、冒険者として一人前と呼ばれるDランクも目前と言われていた。


 今回のクエスト『ブラットウルフの首領の捕獲』をクリアすれば、Dランク間違いなしだと言われ、飛びつくように受けたのが運のつきだった。


 Eランクにしては法外な額の報酬金額を、不審に思うべきだったのだ。





……正直、俺達のパーティーは今迄『ブラットウルフ』なんぞ腐る程狩ってきていたこともあり余裕だと侮っていた。


 第一『ブラットウルフ』はFランクの魔物である。

 今更ボスだの何だの言われても、それがどうしたとしか思えなかった。

 実際、冒険ギルドの魔物図鑑にも、『ブラットウルフの首領』は『ブラットウルフ』と同じ種で、単に統率をとっているだけのEランクが適正の魔物だと載っていたのだ。



 それがどうだ。



 今、俺の前に佇む『ブラットウルフの首領』は、とてもEランクが適正の魔物とは思えなかった。


 未だ嘗て出会ってきたどんな魔物より強靭で、強大な、圧倒的なまでの覇者のオーラを纏っていた。


 膝が震える。

 武者震いなどではない。



 恐怖だ。



 逃れようのない恐怖が目の前に『ブラットウルフ』の形を成して、存在している。



 だが、それでも倒れるわけにはいかなかった。


 一端とはいえ、俺も冒険者なのだ。


 それに、今は息のある仲間を見捨てるわけにはいかなかった。



 俺は手汗の滲む手で剣を握り、地面を蹴った。


きっと俺は此処で死ぬだろう。



 そんな確信を胸に抱きながら。



***




「やっぱりボコボコにされて帰って来おったな! ガハハハ!!」


 古株の先輩冒険者に背中をバシバシと叩かれる。折れた助骨に響いて物凄く痛い。

 仲間達は巻き込まれたくないのか、一歩離れて苦笑いをしている。


くそっ、薄情もんばっかりじゃないか!






 俺は『ブラットウルフの首領』と最後、一対一をした。



 勝負は一瞬だった。


 一瞬で剣をその牙で圧し折られた。



 どうしようもない力量差が招いた、当たり前の結果だった。



 俺は本気で死を覚悟していた。


 『ブラットウルフの首領』と一対一をしたといったが、それは周囲のブラットウルフ達が一切手を出さなかったからだ。


 『ブラットウルフの首領』をもし万が一倒せたとしても満身創痍の俺が、幾らFランクとはいえ、数十の群れをなす狼に勝てるとは思えない。

 食い殺された挙句に彼らの晩飯に変わるだろう。


 魔物を殺り損ねたら、待っているのは『死』。

 冒険者なら誰もが知る、公然の事実だった。


 苦渋の決断、離脱という選択肢も、精々下の上止まりの俺らでは、家一つが立つほど高価な『転移石』を買えるわけもなく。

 結果として、離脱の選択肢を選ぶことは出来なかった。



 だが俺は、俺達のパーティーは全員生きていた。


 何の奇跡かと思った。



 『ブラットウルフの首領』は俺の剣を軽く圧し折るついでに俺を放り投げると、興味を無くした様にそのまま踵を返したのだ。

 そして王に追従するように、周囲よりブラットウルフ達もその場を立ち去った。



 俺はその場から、暫くの間動く事が出来なかった。


生きている。


 ただそれだけの事を実感するのに、随分時間がかかったのだ。


 更に、パーティーは何処かしらの怪我はあったが、全員生きていた。




 俺達はあれだけ侮っていた『ブラットウルフの首領』に見逃されたのだ。







「あの糞強い『ブラットウルフの首領』はよぉ、『無殺の黒狼』とかいう通り名がついてる推定Bランクのバケモンだから、オメェらひよっこが勝てなくて当たり前ってんだ!」



「そ、そうなんスね……」


 Bランク……一流冒険者のランクである。


 三流が精々の俺らじゃ、百人近く束になっても勝てない相手だということか。



何でそんな魔物がEランクのクエストに……!


 酒瓶片手に豪快に笑う先輩冒険者に一礼をして、俺達パーティーは傷を癒すためにその場を後にした。







 これは後々になって知ったことだが、


『あのクエスト』は早死にしそうな……、簡単に言うと調子付いているパーティーに、一つお灸を据える為のクエストらしい。


 そして、何故かクエストに向かったパーティーが誰一人死なず戻ってくる為、低ランクのクエストでも特に問題なくクエストボードに張れるそうだ。恐ろしい。


 一部の冒険者の間では、そのクエストは深いトラウマになっており、『ブラットウルフ』の名を出すだけで顔面蒼白にする程なのだから、そのお灸は効果覿面だったのだろう。







 かく言う俺らは、Cランクに昇格した今でも時々『例のクエスト』を受けている。


 何故かと言えは、強敵の魔物を狩る前に、感覚を鋭くする為の緊張感を得るには最高の格上だからだ。





 そんなこともあり、俺達のパーティ間では『ブラットウルフの首領』のことを密かに「師匠」と呼んでいる。




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