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魔物の守護者 〜もふもふハーレムの同士達~  作者: 流土
一章 ブラットウルフ編
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二十七日目 正午

 私はチンピラどもから目を離さないまま、片手で魔法袋から幾つか魔法石を取りした。


……ああ、穏便にいきたかったんだが。


 勝てるかはわからない。だが、泣き寝入りするつもりは微塵もなかった。

 こちらが臨戦態勢に入ったことがわかったのか、相手もナイフや各々の武器を取り出し始めた。


「何だ、やる気かァ?」

「おいお前殺すなよ、後で楽しむんだからな」

「異国の女だろこいつ、趣味悪ぃな!」

「ギャハハハハ!!」



 好き勝手喚き立てるのを聞き流しながら私は隙を伺う。なんとでも言え。




「あのさぁ……」


 突如、何処からか声が聞こえてきた。


「あ? 今誰か喋ったか?」


 第三者の介入に気付いたのか、チンピラどもは嘲笑うのを止め、周囲を見渡した。


 私はその隙にウォンとルーに駆け寄る。

 何処にも怪我をしている様子は無く、気絶しているだけのようだった。良かった……。


 私は二匹を抱き抱えながら、声の主を目線を動かして探す。


 そして見つけた。




 声の主は頭上に居た。



 とは言え、浮いているわけではなく、立ち並ぶボロ屋の屋根に立っていた訳だが。


 逆光の為、顔は見えないが体格から男であることが推測された。

 先程の声から察するに青年と言っていいほどの年齢だろう。



 同じくチンピラどもも気付いたらしく

「誰だテメェ! 降りてこい!」

「袋にしてやるよ」

と口々に喚き出す。


 介入者である男は無言で屋根から飛び降りる。三メートル程だったが音を立てることなく着地した。

 男はマントを被っており、砂を叩きながら立ち上がる。マントの隙間から若干色素の抜けた茶髪が見えた。


「ホント、間違ってたら申し訳ないんだけど」


 マントの男はフードを外しながら、背後のチンピラどもを完全に無視して私に喋り出した。








「俺と同郷だったりしない?」


 フードを脱いだことで見えたその素顔は、明らかに『日本人』の顔付きであった。




***



 異世界に来てから、そう大して人と会ったわけではないが。

 少なくとも今迄会ったことのある人は皆、彫りの深いヨーロッパ系の人々によく似ていた。ハルもそうだ。


 だが、この目の前にいる男は違う。


 目鼻立ちの整った端正な顔立ちではあるが、確かに日本人だった。


 日本人だと言う確証もない上に、何処かにいるアジア系によく似た現地人である可能性の方が高かったにも関わらず、その時の私はそうとしか思えなかった。




「……日本人?」


「おお! やっぱ同郷だよな! 同郷の奴に久しぶりに会ったわ!」


 旧友に会ったかのように、嬉しそうに笑いながら喋り出す青年。

 その背後でチンピラがナイフを振り上げていた。


「無視すんじゃねぇ!」


 あっ、と私が声を上げる前に青年は、背後も見ずに手の平でナイフを受け止めた。

 鋭いナイフを素手で受け止めたと言うのに、青年の顔は涼しいままだ。……どうなってるんだ。


「おいおい……、俺は今、久しぶりに同郷の奴と会ってハッピーなわけよ」


 チンピラは青年に受け止められたナイフを引き抜こうとしているようだが、まるでビクともしていない。

 それを見た他の奴らが一斉に青年に襲いかかる。



「それを邪魔するってことは、馬に蹴られて死んでも良いわけだよな?」









「その場合、馬は俺になるわけだが」



 青年は一瞬で全員をねじ伏せた。




***



 五人を軽く気絶させた青年は男達の手足を縛ると表道の近くに放置した。

 曰く、憲兵に言うと事情聴取が面倒くさいらしい。


「いやー、良かった良かった」


 広場の噴水の近くに腰掛けながら、青年は出店で購入したアイスに良く似た食べ物を舐める。



「……本当に助かった」


 あのままだと何かしら面倒なことが起きていただろう。

 私は腕の中にある温もりを抱きしめながらそう思った。


 青年は段々溶け出したアイスに悪戦苦闘しながら、けらけらと笑う。


「いやいや、気にすんなよ。同郷のよしみだろ」


 青年が肩をすくめる。やはり異世界で同郷の者と会うと何だかほっとする気がした。


「あ、そういや名前は? 俺は神崎カンザキ 優矢ユウヤってんだけど」


「あー……、ライラックだ」


 私は私の日本人名を思い出せないのだ。

 神崎は私の名前に驚いたように目を丸くした。


「それって日本人名じゃねーよな……? え、でも何で日本人って……ん? ん?」

首を捻り、悩みだした神崎に私は苦笑いしながら言った。


「記憶喪失なんだ」


 ぴしゃりと神崎の顔が凍った。







「……マ、マジかよ」


「ああ、日本にいた頃の自分と私の周りの人間のこと思い出せなくてな」


 そう言うと、神崎は「お前も苦労してんのな……」としみじみ言った。



「……それにしてもライラックって恰好いい名前だよな! 女の子でも似合ってるし」


 話を切り替えるように神崎はそう言った。


……ふむ、どうやらまた勘違いされているようだ。

 いい加減、何処かで男性用の服を買おう。








「言い忘れていたが、私は男だ」


 神崎がアイスを思い切り吹き出した。





……毎回この反応されるのアレだしな。

何故か、周りがTUEEE状態になってきた。

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