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二日目 正午

「まだ開店前ですよ、お客さ……なんだ優ちゃんか! ……あれ?」


 扉を開けると赤いバンダナをつけた栗色の髪の少女が、鍋をかき混ぜている手を止めないまま、こちらを振り向いて驚いたように目を見開いていた。


「早くない!? 優ちゃん早くない!?」


「テンション上がっちゃって……」


「遠足の集合時間に早く来すぎる小学生かワレェ!」


 あっ、やっぱりそう思うよな。

 とんとことんと、流れるように交わされる優矢と少女の会話のキャッチボールをウォンとヨーデルとともに眺める。ビシィと鋭いツッコミを入れる少女は全体的に子供らしい丸みを帯びており、もふもふに通じる癒しを感じた。なんだあの子可愛いな。……あっ、勿論健全な意味で。


「小学生の優ちゃんに構ってる場合じゃなかった……反省反省、そっちのお姉さん……じゃなくてお兄さんですよね? わたし心木ココロギ 夏穂カホって言います! そっちのボンクラ勇者とはあっちの世界で小学校からの付き合いなんです。あっ、慣れない異世界ですし、何か困ったことがあったら全然遠慮なく言ってください! 力になれるかもしれないですし、もう全然、遠慮なく!」


「あ、ああ……?」


 ……え? えええええ!!?


 い、色々突っ込みたい! けど、何より言いたいのは勇者め!

 こんなに可愛い幼馴染がいるなんて! 勇者め!

 例えるならリス! わたわたしてるリス!


 ……にしても、だ。顔の作りが西洋風というか、日本人離れしている。肌も白い陶器のようで、どう見てもバター色ではない。それにこの子の見た目年齢はどう見ても十歳前後に見える。


「優矢……」


「何その目!? 何もしてないから! 変な性癖とかねーから!」


 まだ何も言ってないのに冷や汗かいてる……。

 おろおろして言い訳を重ねる優矢が大型犬に見える。体格差は本当に大型犬とリスぐらいあるのだ。今日やけにテンション高かったし、てっきり……。


「その、わたしは転生といいますか、体はこっち生まれなのでこの世界に来てから十二年になるんです」


「そうそう! だから同い年の幼馴染が十二歳も年上になってて、正直おばちゃ」


「ん?」


 無邪気な笑顔の背後に出現した阿修羅に、勇者が真っ青な顔して口を噤んだ。幼女っょぃ。というか幼馴染つよい。なるほど、彼女のように生まれ変わることもあるんだな……。あ、そういえば。


「優矢……昨日の話だと同郷じゃないって言ってなかったか?」


「え? ドッキリに決まってるだろ」


 なんだその笑顔。爽やかに無駄なドッキリ仕掛けてきて、どんな反応をすればいいかわからない。肩にいたウォンが「キュキュ〜」と鳴きながら脱力した。わかる、頭が痛くなる。


「……っていうのは嘘で、かなり姿が変わってたから、幼馴染だってわかったのはライラックに連絡した後なんだ」


「そうそう、しかも仮にも勇者だからってフードを深く被ってたせいで、わたしも優ちゃんが電話取り出すまでわからなかったんです」


 初対面の人に異世界から生まれ変わってて、前世の記憶が……なんて話せませんし、と苦笑いしていた。確かに、確実におかしい人認定されるに違いない。

 それとどうやら優矢は昨日ここから電話していたらしい。そしてその電話を見た彼女の反応でお互いが幼馴染だと気づいたようだ。なるほどなるほど。


 そんなこんな話していると、話しながらも手早く料理を作っていた少女が出来上がった料理を机に乗せ始めたので、一旦話すのをやめ、各々ができる準備に取り掛かり始めた。

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