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魔物の守護者 〜もふもふハーレムの同士達~  作者: 流土
一章 ブラットウルフ編
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一日目

育成開始です。

 小さな、目も見えていない黒狼の子供、正式名称『ブラットウルフ』を育て始めて一日目。


 銀梟は誕生を見届けると、そのまま立ち去ってしまった。曰く、「先代との約束」は此処で終わりだとか。

 すっかりその話を忘れていた私は、一瞬ぽかんとしてしまったのだが、私に途方に暮れている時間は無かった。


 取り敢えず、例の魔法書でこの幼い魔物のことについて調べることにした。


「『ブラットウルフ』

名は、額の血のように赤い魔石から付けられた。

集団で行動する弱い魔物。

乱獲され最近減ってきている。


幼体の餌は、砕いた魔石とリンカ草を混ぜたもの。


成体になるまで一カ月〜三ヶ月を要する」


……このブラットウルフって弱い魔物だったんだな。

 私は膝の上を這って進んでいる、ブラットウルフの赤ちゃんをぽふぽふ撫でた。

 どうやら魔石が餌らしいので、足元に落ちている魔石を幾つか拾っておく。


 ウォンはブラットウルフの赤ちゃんに興味深々なのか、先程からずっと後ろを付けている。

 ついでと言ってはアレだが、ウォンも魔法書で調べておくことにした。


「『ウォナバット』

名は、額の湖のように青い魔石から付けられた。

基本的に隠れ住む、かなり弱い魔物。

既に絶滅したと言われている。


幼体の餌は魔石を砕き、水を混ぜたもの。


成体になるまで七日と早熟。

産まれた時から大きさは殆ど変わらない」


……ウォナバットってもういないのか。

近々、ウォンの仲間を探そうと思っていたのに当てが外れてしまった。

それにしても、どうしてウォナバットは絶滅したのだろう。

そもそも数が少なかったのか、環境が急変したからだろうか。


もしかすると乱獲されたのかもしれない。



私は無邪気に歩き回るウォンから目を離した。



 そう言えば、ウォナバットは成体になるまでの期間が物凄く短い。それはブラットウルフの時にも思った事だが。


 野生で生きていくには、長々と無防備な幼体でいる訳にはいかないという事だろうか。


 そんなことをつらつら考えながら、私は魔法袋から魔石を磨り潰す道具を取り出す。

 便利アイテム『魔法袋』の中には、魔物の子を育てる道具一式が揃っている様だった。


 魔石を磨り潰す道具は、何だか石臼に良く似ていた。割と原始的だ。


 うつらうつらし始めたウォンとブラットウルフの子を、魔法袋から出した藁の束の中に寝転ばせる。

 私は時折聞こえる彼らの鳴き声をBGMに、魔石を磨り潰す作業に入った。


***


「……疲れた」


 一時間後、私の手の中には僅かばかりの魔石の粉があった。私はそれを水とゆっくり混ぜ合わせる。


 青の魔石の粉が水と混じり合い、ほんのり青色の色が付いた魔法水が出来る。それを魔法袋から出した小さな哺乳瓶に注ぎ入れる。


 私はウォンを抱き上げながら、哺乳瓶を口に近付ける。

 ウォンは暫く哺乳瓶を不思議そうに見ていたが、暫くすると難なく飲んだ。


 問題はブラットウルフの子の方だった。


 幾ら哺乳瓶を近付けても一口も飲まないのだ。このまま飲まない状態が続けば、幼いこの子は餓死してしまう。


何が原因なのだろう……。

 ブラットウルフの子の背中を撫で、思案する。


 手元の哺乳瓶を見て、ウォンを見、腕の中のブラットウルフを見る。


ウォンとブラットウルフの子の違いは何だ?


……成長スピードの違い?

……種の違いか?

……それとも額の魔石の色だろうか?


 私はもっと詳しく知る為に、再び魔法書を引いた。



***


 数刻後、私は再び魔石を磨り潰していた。前回は青い魔石を磨り潰していたが、今回は赤い魔石である。


 どうやら魔物は、額の魔石と同じ色の魔石以外口に出来ないようなのだ。

 故に、額の魔石が赤いブラットウルフの子に、青い魔石を食べさせようとしても嫌がるというわけだ。


 磨り潰した赤い魔石の粉を、哺乳瓶に注ぎ入れる。ブラットウルフの子も、今度は嫌がらずに飲んでくれた。


……無理矢理飲ませなくて良かった。


 こくこくと勢い良く飲むブラットウルフの子の頭を軽く撫でながら、私は内心動揺していた。


 嫌がっているのに無理矢理飲ませると最悪の場合、「死」に至るそうなのだ。




 お腹が満たされた二匹が、小さな藁のベットの上で仲良く寝こけている。


……兄弟みたいだな。



 取り敢えず、餓死の危険は遠ざかったこともあり、一安心である。ほっとついでに、私の腹の虫が盛大な音を立てた。随分大きな虫だな。


 そう言えば、熱を出したあの時以外何も口にしていないのを思い出した。


 私は魔法袋から、大量に入っていた乾燥した肉と水を取り出し、口に含んだ。

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