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零話
遠い遠い昔の話。
ある地に『魔王』が生まれた。
『魔王』は最も繁栄していた人類に目をつけ、配下である魔物達を率いて根絶に導こうとしていた。
そんな世界に、一人の『勇者』が現れた。
『勇者』は白き竜を味方につけ、『魔王』である、黒き双頭竜に立ち向かった。
そして『勇者』は死闘の末、『魔王』に打ち勝った。
────というのが、世に伝わる表の話である。
『勇者』は『魔王』を討ち滅ぼさなかった。
否、出来なかったのだ。
代わりに、この世の淀みから生まれるとされる悪しき『魔王』は封印されることとなった。
その封印された場所を、一部の者達は……
──『始まりの洞窟』と呼ぶ。