初任務 【四】
――敵前線基地へリポート――
「敬礼!」
アルマンの号令と共に一斉に隊員達は目の前に降り立った男に敬礼をする。
ヒッター司令官である。
「諸君、任務遂行ご苦労であった! 諸君らの活躍により敵前線部隊は撤退、我々はこの基地を手にすることが出来た。ありがとう!」
ヒッター司令官は満面の笑みを浮かべていた。
「それにしても姐さんの狙撃の腕はほんますごかったですねぇ〜」
ケネスがここぞとばかりにレイナを褒めちぎる。
「いえ、あなたの腕こそ大したものよ。たった一人で十数人の敵をかく乱して閉じ込めるなんて。それとマック、あなたも豪快だったわね。正に闘鬼のようだったわ」
レイナがお礼と言わんばかりにケネスとマックを賞賛する。
「レオンもすごかったな、あぁも簡単に敵のコンピュータに侵入するなんて正に神業だったよ!」
ケンがレオンの偉業を思い出し打ち明ける。
「僕のなんてケンや隊長の偉業に比べたら大したことないよ。隊長は人間離れした動きをするし、ケンは敵の司令官を倒しちゃうし…」
レオンが少し驚き呆れた様子で述べた。
「これで我々が出会ったわけが何となく分かったな。我々はそれぞれが特異な力を持っている。そしてその力を合わせることによって不可能と思われることも可能にしてしまう。正に最強のチームだ」
アルマンが満足した様子で述べた。
「あの、本当にわたしのような凡人がこの部隊のオペレーターとして居て大丈夫なのでしょうか?」
リリスが不安そうに述べた。
「何言っているんだ、居て良いに決まってるじゃないか。今回の任務だってリリスは十分に役に立っていたよ。何せ、アルフォード一のオペレーターじゃないか!」
ケンが笑顔で述べる。その声に嘘はないようだ。他の隊員達も同じ気持ちのようだ、皆、笑顔でリリスを見る。
「ケンの言うとおりだぞリリス君、君は確かに直接任務は遂行しないが彼らをサポートするという重大な仕事を受け持っている。例え、現場にいなくても君はれっきとした特戦のメンバーだ!」
ヒッター司令官が穏やかな口調で励ます。
リリスの顔にもはや不安な表情はなくなっていた……。
――アルフォード王国軍総本部――
「…ふぅ、何とか終わったな……」
深く息を吐きながらケンは倒れるようにベッドに横になった。アルフォード城内にあるここ総本部に特戦は拠点を置いている。そのため隊員達には特別に個室が用意されている。当然ケンにもその個室が用意されていた。
「しかし、リリスも言っていたけど俺もまだまだだなぁ。今後、より一層過酷な任務が待っているというのに、今の腕では自分の命を守るだけで精一杯だろうなぁ」
そうつぶやくとケンは壁にかかった刀を見る。
「そう…誓ったんだ……あの時……」
数秒の間、沈黙が続いた。っが、すぐにケンはベッドから立ち上がった。
「休んでなんていられないな、よし、特訓だ!」
そういうとケンは愛刀と共に部屋を飛び出すのだった。
「そう、誓ったんだ…もう二度と、あんな悲劇は起こさせないって……」
第一部主な登場人物の紹介
〜アルフォード王国〜
―特殊戦略部隊―
ケン・シュナイダー:第一部の主人公:16歳:男性:紅色の短髪:黒色の瞳:アルフォード王国の機動歩兵として前線でその自慢の剣術を巧みに使って活躍していた。その腕が買われアルフォード国王直属の部隊で特殊戦略部隊、通称『特戦』に配属される。彼が軍に入隊したのには悲しい過去が関わっている。彼が使用する剣術は天魔無双流と呼ばれるものでそのあまりに巨大な力のために神にも魔にもなれると言われている。またその所持する剣もこの世界で流通している両刃の剣ではなく、片刃の剣、刀である。情に熱い男でこの情こそが彼の長所でもあり短所でもある。
アルマン・ギルガネス:隊長:26歳:男性:黒色の中髪:茶色の瞳:人柄がよく誰にでも好かれる人物。任務のために冷酷になろうと努力しているがいざとなると人命を優先してしまう。ギルガネス家の人間で超人的な運動能力を持つ。その運動能力は発射された弾丸を簡単に避けられるほど…。刃物から銃までありとあらゆる武器を使いこなすエキスパートでもある。
レイナ・フランク:副隊長:25歳:女性:紫色の長髪:緑色の瞳:隊の中では頼れるお姐さん的存在。狙撃の名手でその集中力は三日間、同じ射撃体勢でいられるらしい。
マック・エイガー:ムードメーカー:20歳:男性:茶色の短髪:青色の瞳。大柄で長身。細かいことは気にしない豪快な性格。バルカン砲などの重火器を使用して戦う。
レオン・マッケイン:天才:17歳:男性:水色の中髪:銀色の瞳:IQ200を越える超天才。言葉数が少なく、無愛想。その頭と魔法で数々の戦いを勝利へと導いてきた。また、ハッキングを得意とし、セキュリティー解除や、情報の奪取なども行う。
ケネス・フロイド:曲者:20歳:男性:黄土色の中髪:黒色の瞳:妙な言葉遣いをするお調子者だが任務の時には隠れた冷酷さを見せることがある。爆弾に関しては確かな腕を持つ。特戦の曲者的存在。
リリス・クラフト:オペレーター:16歳:女性:朱色の中髪:水色の瞳:性格は非常に明るく、特戦のマスコット的存在。彼女の存在が隊員の戦場で受けた心の傷を癒しているのは疑いようがないだろう。オペレーターとしての腕も確かなものを持っている。
ノリス・ヒッター:司令官:56歳:男性:灰色の短髪:茶色の瞳:若かりし頃は【戦場の稲妻】という二つ名で恐れられていた。今でもそのたくましい体つきは衰えておらず、また歳を取ったことでより一層その風格は増している。人としても戦士としても隊員達に影響を与える人物。ちなみに【戦場の稲妻】という二つ名は彼が使用するガントレットが電撃を流すことが由来。
―その他の人物―
アルフォードIV世:国王:45歳:男性:黒色の中髪:黒色の瞳:現、アルフォード王国の最高権力者として王座に座る者。国は民あってのものと考えており、常に民の事を考えている。この戦争を終わらすために特戦を設立することを決意する。