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初任務 【参】

――ディーベルク前線基地司令室――



「応答しろ、第一小隊。現状はどうなっている?」


『依然として侵入者と交戦中。こちらの負傷者が増える一方で中々前に進むことが出来ません』


 司令室の軍人は基地内への侵入者への対応をしていた。兵士の話を聞くところ状況は良くないようだ。

 

「バカなっ! 数十人の兵士がたった二人の輩に手こずっているだと、信じられん……」


 あまりにもありえない状況に対応している軍人以外の者も唖然としている。


「奴らはどうやってこの基地内に侵入してきたのでしょう? 普通はレーダーに反応するはずです。なのにレーダーに引っかからずに侵入するなんてありえません」


 二十代に見える若い軍人が不思議そうに述べた。


「…だが事実だ。我々の眼をかいくぐり進入した者達がいるのだ。これが上層部に知れ渡ったら我々はただでは済まぬぞ」


 三十代の目つきの鋭い男が重々しく述べた。身なりからしてどうやら彼がここの司令官らしい。


「くそっ、ただでさえ前線が激戦で情報が混雑しているってのに…」


 対応している兵士が愚痴をこぼす。どうやら前線で戦っている本隊も苦戦しているようだ。


「お前たち、何者だ。ぐわっ!」


 司令室前の廊下が騒がしい。銃撃の音が響き渡る。


「どうやらまだねずみがいたようだな……」


 そう言うと司令官は不適に笑った。

 次の瞬間、司令室の扉が大きな音を立てて崩れ落ちた。

 そこには三人の戦士達が立っていた。


「よし、やっと司令室にたどり着いたぞ!」


「何で扉を斬ったんだい? 普通に開けられたのに……」


 ケンは爽快っといわんばかりの表情をしている。レオンは彼の行動にすかさずツッコミを入れている。


「ど、どうやって進入してきた。監視カメラに死角はないはずだぞ!?」


 カメラを監視していた軍人は驚いた様子で述べた。彼は常にカメラに映る映像を見ていたが侵入者らしき者は一人も映っていなかったからである。


「それは映るはずがないだろうね。何せ僕らは透明人間になったのだから」


 レオンが微笑みながら述べた。


「…なるほど貴様、監視カメラを乗っ取ったな」


 司令官は冷静な口調で問いただした。


「ご名答。僕はこの建物の端末からメインコンピュータに侵入して監視カメラの映像を現在の映像ではなく録画された映像に切り替えたのさ」


 レオンが自慢げに微笑んだ。


「さぁ、命を落としたくなければ銃を捨て床に伏せろ」


 アルマンが銃口を司令室の者たちに向けながら述べた。軍人たちは力が抜けたかのように銃を捨て床にひれ伏した。っがただ一人、イスに座ったまま動こうとしない者がいた。


「あんたもだ司令官殿、銃を捨て床に伏せるんだ」


 アルマンが敵司令官に銃を向けた。

 次の瞬間、その者は異様なスピードでアルマンに襲い掛かった。幸いにもアルマンはその攻撃をひらりと避ける。


「抵抗するきか、司令官殿?」


 アルマンが余裕の表情で述べた。向こうの司令官は不意を突いた一撃と思っていたのか、避けられたことに動揺を隠せない様子だった。


「貴様…、何故あの状態からこうも余裕に避けられる? 普通の人間ではありえんぞ!?」


 確かに、アルマンの動きは人間離れしていた。

 何故なら彼が回避したものが至近距離からの銃弾だったからである。

 彼だけではない。ここにいる全ての者がアルマンの動きを見て驚いている。


「隊長、こんなにすごい人だったのか」


「バカな…、ありえない」


 ケンやレオンもその動きに驚きを隠せない様子だ。


「ふむ、どうやら私の動きを見て驚いている様子だな。ではこういえば納得してもらえるかな。あんたはギルガネスという一族の名を聞いたことはないか?」


 アルマンが述べたギルガネスという単語を聞いて司令官は更に驚くと共に納得した様子だった。


「そうか、あのギルガネスか……人間離れした運動能力を持つと言われる超人一族の者か」


「その名を聞いてもまだ抵抗するつもりか?」


 アルマンが勝ったといわんばかりに強気で述べる。っが返ってきた言葉は意外な言葉だった。


「ふふ、はははは! 私がその名を聞いて怖気ずくとでも思ったか! ギルガネスの一族の者よ? 残念ながら私は好戦家でね、その名を聞いて余計にやる気が沸いてきたのだよ。さぁ、遠慮はいらん。掛かって来い!」


 そのあまりに意外な返答にアルマンは思わずため息を吐いた。


「ギルガネスの名を知る者だからてっきり賢明な者と思ったのだがね。どうやら単なるバカのようだな。良いだろう、お前の相手になってやるよ。ただし、こいつがな」


 そういうとアルマンはポンッとケンの肩を叩いた。


「え!? オレが戦って良いですか?」


 あまりのことにケンはアルマンに再度確認を取る。だが、その答えは同じくイエスだった。それを聞いてケンは非常にうれしそうだった。


「私をバカにしているのか? こんな屈辱は初めてだ。私の相手など、そのようなヒヨッコで十分ということか!」


 敵の司令官は自分のプライドが傷つけられて頭に血が上っている様子だ。


「こいつがヒヨッコかどうかは戦ってから決めろ。こいつを倒せたら、その時はおれが戦ってやる。ただし、勝てたらの話だが……」


 その言葉を聞いてますます司令官の頭に血が上った。


「いいだろう、この小僧と戦ってやる。すぐに準備をしておけ、二秒で終わらせてやるからな!」


 そういうと司令官は壁に掛かった大剣を取り、勢いよくケンの頭上に振りかざした。


「死ねぇぇ、青二才がっ!」


 部屋中に高らかな金属音が響き渡った……。




――西ブロック格納庫――



「まずいわねぇ、徐々にではあるけど押されている」


 レイナの額から汗が流れ落ちる。

 

「俺の方もそろそろ弾が切れそうでっさぁ!」


 マックも今の状況に焦りを感じている。


 長きに渡った激戦も終わりを告げようとしていた。何十人という敵と対等にやりあってきた彼らだがやはり所詮は二人、次第に押されて始め追い詰められている。退路は何処にも存在しない。彼らは少なくとも死を覚悟しようとしていた。


「くっ、もはやこれまでね…」


 レイアが死を覚悟したその時、空から一つの鉄の塊が敵兵たちの目の前に転がり落ちた。


 ボンッ、プシュ―――ッ

 

 敵兵たちは目の前に広がる煙幕によって辺りが見えなくなってしまった。中には煙をすってむせている者もいる。


『今です、その場からすぐ撤退してください!』


 リリスから通信が入る。それを聞くな否やレイナとマックは急いでその場から逃げ去った。ようやく煙幕も収まり出したとき、敵兵たちは辺りを見渡した。っがもはやそこに二人の姿は見当たらなかった。


「おい、見ろ! あそこにもう一人侵入者がいるぞ」


 格納庫の反対側に、なんとケネスが立ちずさんでいた。


「何! そうか、この煙幕は奴の仕業か!」


 一斉にケネスのほうに向かってくる敵兵たち、っが次の瞬間、彼らの視界は閃光に飲み込まれそして強烈な 爆発音と共に音を消された。閃光弾である。

 彼らが視力を回復した時、もはやそこに人影はなかった…。




――敵前線基地司令室――



 部屋中に高らかな金属が響き渡る。何かが宙を舞った。そして数秒後、その物体は床に突き刺さった。


「バカなっ…!」


 司令官は今自分が目のあたりにしている光景を何度も疑った。っが結果は同じだった。

 彼の大剣は真っ二つに斬れたのだ、目の前にある細い片刃の刃によって……。


「何だ、その剣は!? いったいどんな仕掛けがあるというのだ」


 またもありえないことが起こったため司令官は混乱している。


「これは刀といってね、従来の両刃の剣と違い、叩き斬るのではなく、純粋に斬ることを目的とした代物だ。あんたはさっき力任せに大剣を振り下ろしただろ? それは純粋に斬るとは言えない。叩き斬るという感じだ」


 ケンの言動に重みが増す、司令官はうろたえていて動くことが出来ない。さらにケンは述べる。


「鋼より硬くないものは斬れるかもしれないがそれでは鋼を斬ることなんて出来やしない。だが刀は出来る、それは刀の刃が最もモノを斬る上で絶好の曲線を描いているからだ。刀の前においてそんな大剣は剣としての意味を成しはしない!」



 もはや司令官は考えるということが出来なくなっていた。怒りや目の前で起こる常識離れのことによって頭が混乱してしまったからだ。目の前にいる小僧を倒す、司令官の頭にはもはやそのことしか存在しなかった。


「ぬぉぉ、小僧!」


 司令官は鬼の形相でケンに襲い掛かる。


 ヒュッ!


 風を斬る音と鋭い音が響き渡る。司令官の腹部は大きく開いた。司令官はもはや倒れるほかなかった。

 彼は最期に己の目の前に立つ青年を見た。その姿はまるで魔物のように思えた……。





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