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紅髪の剣士 【弐】

――時を少し遡って――



「ここがそのポイントです」


 レオンがノリスに報告を入れる。


「うむ、しかし…肝心のケン・シュナイダーが見当たらないが……」


 レオンの報告に怪訝な顔をするノリス。

 それはそうだろう…何せ居る筈の本人がいないのだ。

 怪訝に思っても不思議ではない。


「いえ、情報によると今この区域に向かっているとの事です」


 冷静にノリスの疑問に手元の小型ディスプレイに映し出されたマップを見せるレオン。


「ふむ、そうか…しかし何故彼は自分の区域を離れてこ……―――」


 ドドドドドドッ!!


 ドゥン、ドゥン!!


「ミッシェルーーーー!!!!!!」


「「「「「…………ッ!?」」」」」


 ここまで来たのだ? そう言おうとしたノリスの言葉を突然の銃声と悲鳴に遮られた全員が(約一名違うが)それに驚愕したがノリスの一括ですぐに冷静に戻り、全員声の方向へと向かった。


「各人、私を中心にアルマンを左斜め前方、マックを右斜め前方、レイナを左斜め後方、レオンを右斜め後方に配置し、進軍する! 各人後方の警戒を怠るな!!」


「「「「了解!!」」」」


 そこにはアルフォードの装甲服を纏っているのだろう…血で判別がつきにくいが血まみれの女性……恐らく死んでいるだろうと思われる者と、銃を突きつけられた男性がいた。

 その向こうには銃を突きつけているディーベルクの兵士以外にも、その後ろにさらに2人控えていた。

 現状の状況に、すぐさまアルマンが脇に装備したハンドガンを取り出し、安全装置を外して銃口を相手の拳銃に狙い定める。


(間に合うか!?)


 内心焦っていた。これだけの距離が有り、尚且つアルマンの目には既に指が引き金を引く直前だということを捉えていたからだ。

 祈り半分の思いで相手より早く引き金を引こうとするアルマン……が、その時…


「やめろおぉーーーーーーッ!!!!!」


 その大声にアルマン、そして相手兵士までも引き金を引くのを止めて声の方へ目を向けた刹那――


 スパ――――ン!!


 鋭い金属音が当たりに響いたのと同時に細身で片刃の形状をした独特の剣を持つ青年が友軍の兵士と相手の兵士の間に割って入った。

 状況的に見ると、どうやら彼が敵兵の拳銃を斬り落としたらしい。

 互いが状況に驚いていると、青年が声を上げた。


「ヒーローみたいなお約束で悪いけどな! これ以上仲間はやらせはしないッ!!」


「何者だ!? 貴様!!」


「オレはケン・シュナイダーだっ!!」


 大き目の声で、高らかに名前を名乗り、尚且つ仲間の危機を救った紅髪の青年が我々、特戦が探していた“ケン・シュナイダー”だったのだ。


(彼のあの独特な剣…思い出した……刀と言いましたね。あの剣は…………)


 手に持つ刀で相手の急所を外したところを斬りつけ、続けざまに後ろの2人の銃を破壊し…尚且つ彼らの両腕を斬り付け戦闘不能にした。

 あっと言う間の事だった。自分が知る中でもトップクラスの実力といても過言ではない。

 唯一それを見ていたノリス・ヒッターは驚愕に表情を染めた。

 だが、驚愕しているのはノリスだけでなくアルマンや他の隊員全員、果ては敵兵も驚愕していることだ。

 他の者とは違いノリスだけは幾分冷静な面付きだったが…。


「グッ! …貴ッ様!!」


「やめろ…退却だ」


「何故ですか!? まだ……」


 やれる! そう口にしようとした、が―――


「戦況が見えんほど愚か者か貴様は? ならば去れ! そのような者はディーベルクには不要だ……」


「!!! ……了解」


 隊長格の言葉に一瞬反論しそうになるも、その兵士は冷静に咎めて去っていった。

 それをケンは見送りながら仲間の安否を気遣っていた。男性は命に別状は無い。が、女性の死が精神的に不安定にしているとの事でマックは男性と女性の骸を運び、レイナは男性の症状を見ており、レオンは二人の護衛として先にタッセルへと戻っていた。

 この状況でなんだが特戦の本来の目的はケン・シュナイダーの実力をはかり、心・技・体どれも申し分のないようであれば特戦への入隊を命じる事なのだ。


(おそらく彼は入隊を命じられる。実力は先程の戦闘を見ても問題はないだろう……)


「ケン・シュナイダー!」


 アルマンの考えが伝わったのか…ノリスはケンに声をかける。


「あなたは?」


 声にケンも反応する。


「私は、特殊戦略部隊。通称、特戦を率いているノリス・ヒッター中将だ」


「ッ!! はッ! 失礼しました! 貴方がかの有名なヒッター将軍でしたか。先程の口の聞き方、失礼しました!」


「気にしなくてよい」


 目の前の人物の正体を知り、驚き、敬礼をするケン。

 どれだけ、軍に身を投じて日が浅かろうと、戦場の稲妻の異名を持つノリス・ヒッターを知らないものはアルフォード、ディーベルグ共にいないとまでされている程の人物だ。

 彼の異名の由来は現役に装備していた雷を纏ったガントレットからきている。


「つかぬ事をお聞きしますが…そのヒッター将軍が私などに何用で?」


 ケンはどうしてかの将軍が自分に接触してきたのか不思議に感じていたのだ。


「うむ、おぬしに私が率いる特戦に配属してもらいたい」


「はッ! ご命令と有らば!!」


 ノリスの命を即座に快く受けるケン。

 それにノリスとアルマンは一つ頷き合い。


「自己紹介は後にして、この辺で下がりましょう。幸い、敵も撤退しているようですし」


 アルマンの言葉どおり徐々に敵が後退していく。


「うむ…ではこれより帰還する! 二人とも遅れるな!」


「「はッ!」」


 二人ともノリスに敬礼を返し、帰路へと付く。

 こうして、三人は一度タッセルでマック、レイナ、レオンと合流し、アルフォード王国へと帰還していくのだった。




―――第六控え室―――



 新しくケンを加えたメンバーは、ノリスに最初に集合した控え室で待機しておくようにと命じられここで待機している。

 彼らは新隊員のケンと自己紹介を交わしているようだ。


「初めまして、ケン・シュナイダーです。これから、同じ部隊の仲間どうし、よろしくお願いします!」


「よろしく、おれはアルマン・ギルガネスだ」


 互いに静かに握手を交わす。


「がっはっはっは!! おう、よろしくな! ケンッ!! 俺はマック・エイガーだッ!!」


 次に豪快に笑いながら握った手をブンブンと荒々しく振るマック。


「はいッ! よろしくお願いします!」


 負けじとケンも振る。どうやら気が合っているようだ。


「私はレイナ・フランクよ。よろしく」


「よろしくお願いします!」


 アルマンとはまた少し違い、おしとやかに握手した。


「……レオン・マッケインだ。よろしく……」


 他とは対照的にレオンは事務的に済ませた。

 握手は一応している。


「こちらこそ、よろしく」


 一同自己紹介をすませ終えたときに丁度よく、ノリスが入ってきた。

 その脇には見慣れぬ男女を一人ずつ連れている。

 ノリスの入室で全員起立をし、敬礼をする。それをノリスは手を上げて座るように促す。


「よく聞いてくれ。重要事項を二つほど伝えておく……一つはもう気付いておるだろうがケンを含めここにいる二人もこの特戦に加わる事となった。二人とも挨拶をしてくれ。そしてケンも既に終えていると思うが、改めて自己紹介を頼む」


「了解しました」


 ケンは言われたとおりにするため、二人の隣に並んだ。


「では、わいから言わせて貰ってもええかいな?」


 独特な言葉遣いをする男性が名乗り出る。


「えぇ、構いませんが…」


「おおきに♪ ……ゴホン」


 礼を言い、一歩前に出ながらわざとらしい咳をする。


「えぇ〜、わいはケネス・フロイドいいます。特技は潜入工作と爆弾作り。ここではまだまだ新米やさかい、よろしゅう頼んます」


 一例をして一歩下がる。


「えっと、リリス・クラフト十六歳です! この特戦のオペレーターをやらせて頂きます! よろしくお願いします!!」


 元気よくお辞儀をして、ケネスと同じように一歩下がって元の位置に戻る。

 ケンの番になり、他の二人同様一歩前に出て挨拶するようだ・・・・・


「最後はオレだな。自分はケン・シュナイダーです! 特技は剣術。……ってか正直、これしか取り得がありません! 何かと至らない自分ですが、これからどうぞよろしくお願いします!」


 そう言いながらお辞儀するケン。これしか取り得が無いと断言した時に何人か笑っていたのはご愛嬌だ。それからは各自、自己紹介を交わしていく。

 ノリスはそれが終わるのを見計らって、手を叩いてみなの意識ををこちらへと集中させた。


「自己紹介も済んだ所で、本題に入らせていただく」


 隊員全員緊迫した顔つきに変わっている。


「先程言った重要事項のうちのもう一つ……それは特戦の初任務だ!」


「初任務…」


 アルマンが全員の心を代弁したような感じだ。


「うむ…敵ディーベルクが、このアルフォード王国の本格的侵略に向けての前線基地と思わしき施設を発見した。特戦は直ちに現場へ行き、敵施設を占拠せよとの事だ」


「うっしゃあああ!!! 特戦の初任務にしては打って付けってもんだぜ!!」


 気合をいれ、戦意を高揚するマック。

 それに水を差す様にレオンが冷静に述べる。


「…その情報に信憑性はあるんですか?」


「その辺については問題ない」


「…了解しました」


 ノリスの言葉を聞き、着席した。


「他に質問は?」


 ノリスの問いにアルマンが挙手をした。


「その前線基地は具体的にどの辺なのですか?」


「ミルバーグ森林地帯だ」


「ミルバーグ…了解しました」


「うむ、では他に質問は?」


「「「「「「「……………………」」」」」」」


 全員が沈黙する……

 これは問いに対して肯定を差している。


「うむ…ではこれより特戦は今から四時間後に各自第七格納庫に集合する様に、その後は追って通達する。尚、これ以降の特戦の隊長はアルマン・ギルガネスとする! 以上だ!!」


「「「「「「「了解ッ!!」」」」」」」


 各人一度解散し、戦いの準備をする。

 特戦の初任務……果たして彼らの先に待つものとは、希望か、あるいは絶望なのか…

 その答えを知るものは、まだ誰もいなかった……。



 



第一部主な登場人物の紹介


〜アルフォード王国〜


―特殊戦略部隊―


ケン・シュナイダー:第一部の主人公:16歳:男性:紅色の短髪:黒色の瞳:アルフォード王国の機動歩兵として前線でその自慢の剣術を巧みに使って活躍していた。その腕が買われアルフォード国王直属の部隊で特殊戦略部隊、通称『特戦』に配属される。彼が軍に入隊したのには悲しい過去が関わっている。彼が使用する剣術は天魔無双流と呼ばれるものでそのあまりに巨大な力のために神にも魔にもなれると言われている。またその所持する剣もこの世界で流通している両刃の剣ではなく、片刃の剣、刀である。情に熱い男でこの情こそが彼の長所でもあり短所でもある。



アルマン・ギルガネス:隊長:26歳:男性:黒色の中髪:茶色の瞳:人柄がよく誰にでも好かれる人物。任務のために冷酷になろうと努力しているがいざとなると人命を優先してしまう。ギルガネス家の人間で超人的な運動能力を持つ。その運動能力は発射された弾丸を簡単に避けられるほど…。刃物から銃までありとあらゆる武器を使いこなすエキスパートでもある。



レイナ・フランク:副隊長:25歳:女性:紫色の長髪:緑色の瞳:隊の中では頼れるお姐さん的存在。狙撃の名手でその集中力は三日間、同じ射撃体勢でいられるらしい。



マック・エイガー:ムードメーカー:20歳:男性:茶色の短髪:青色の瞳。大柄で長身。細かいことは気にしない豪快な性格。バルカン砲などの重火器を使用して戦う。



レオン・マッケイン:天才:17歳:男性:水色の中髪:銀色の瞳:IQ200を越える超天才。言葉数が少なく、無愛想。その頭と魔法で数々の戦いを勝利へと導いてきた。また、ハッキングを得意とし、セキュリティー解除や、情報の奪取なども行う。



ケネス・フロイド:曲者:20歳:男性:黄土色の中髪:黒色の瞳:妙な言葉遣いをするお調子者だが任務の時には隠れた冷酷さを見せることがある。爆弾に関しては確かな腕を持つ。特戦の曲者的存在。



リリス・クラフト:オペレーター:16歳:女性:朱色の中髪:水色の瞳:性格は非常に明るく、特戦のマスコット的存在。彼女の存在が隊員の戦場で受けた心の傷を癒しているのは疑いようがないだろう。オペレーターとしての腕も確かなものを持っている。



ノリス・ヒッター:司令官:56歳:男性:灰色の短髪:茶色の瞳:若かりし頃は【戦場の稲妻】という二つ名で恐れられていた。今でもそのたくましい体つきは衰えておらず、また歳を取ったことでより一層その風格は増している。人としても戦士としても隊員達に影響を与える人物。ちなみに【戦場の稲妻】という二つ名は彼が使用するガントレットが電撃を流すことが由来。




―その他の人物―


アルフォードIV世:国王:45歳:男性:黒色の中髪:黒色の瞳:現、アルフォード王国の最高権力者として王座に座る者。国は民あってのものと考えており、常に民の事を考えている。この戦争を終わらすために特戦を設立することを決意する。






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