町にすむ、くまのおはなし
ある町に、一人の男の子がいました。
寒くなるとくまの着ぐるみを着るので、まわりからはくまと呼ばれています。
朝、目がさめて、お部屋のなかででんぐり返しをしていると、あまくておいしいにおいがしてきました。
くまは鼻をクンクンさせて、においのもとをたどります。
「あっ! それ、ぼくのおやつだぞ!」
「こら。なかよく分けなさい」
おやつを食べていた妹に、くまはぷんすか。
足をふみならして怒りますが、お母さんは「ケンカするなら、くまの分のおやつはなしだよ」と言います。
くまはぶーぶーと文句を言いながら、妹といっしょにおやつを食べました。
おやつを食べたあと、くまと妹はお母さんと公園に出かけました。
ちょっと寒くて、風がぴゅうぴゅうふいていますが、くまの着ぐるみを着ているのでへっちゃらです。
「ぼく、すべり台に行ってくる!」
くまは公園についてすぐ、いつも遊んでいるすべり台にかけよりましたが、たくさんの子供たちが並んでいて、なかなか順番がまわってきません。
いつもはみんな、他の遊びをしているのにな、と、くまはふくれました。
ふだんはみんなブランコに夢中で、すべり台はそんなに人気がありません。
それでもくまはすべり台でずっと遊んできましたから、ちょっとしょんぼりしました。
やっと順番がまわってきました。
くまは両手をあげて、すべり台をつるっとおりていきます。
くまの着ぐるみのまあるいしっぽが、おしりでぴょこぴょこと動きました。
つぎは、妹の番です。
すべり台の下でくまが見ていると、うしろから来た子が、妹をつきとばしました。
わりこんで、自分が先にすべり台をおりてきます。
わあんと妹の泣く声が聞こえてきました。
くまはすべり台の上にいる妹を見て、つぎにわりこんだ子を見ました。
「ぼくの妹に、なにするんだよ!」
くまは両手をふりまわして怒りました。
いつもすべり台で遊んでいるくまだって、ちゃあんと順番を守ったのに、わりこんだ子がゆるせないのでした。
「こら、ケンカしないよ」
「ちがうよ! この子、ぼくの妹をつきとばして、わりこんだんだ!」
すべり台の上では、くまの妹が泣いています。泣いている妹をおしのけて、つぎつぎと子供たちがすべってきます。
ますますくまは腹が立って、ぐるぐると両手をふりまわしました。
「ごめんなさい」
「ほら、お友達もごめんなさいって言ってるよ」
「ぼくじゃなくて、妹にあやまれ!」
くまがあんまり怒るので、わりこんだ子も泣いてしまいました。
「ごめんなさいね」
「いえ、こちらもすみません。……順番は守らなきゃダメよ」
くまはぷんぷんしながらも、またすべり台の列に並びます。
今度は妹を先にすべらせて、くまはそのあとですべりました。
妹も笑っています。
しばらく公園で遊ぶと、日がくれてきて、くまたちはお家に帰りました。
「おふろに入りなさい」
くまは着ぐるみをぬいで、おふろにじゃぶんとつかりました。
「今日はつかれたなあ」
ぎゅっと目を閉じてシャンプーをすると、おふろのタイルを公園の砂が流れていきました。いったいいつ、くっついたんでしょうね。
おふろあがりに晩ごはんを食べると、くまはフカフカのおふとんに入りました。
お腹もいっぱいで、あったかいので、くまはすぐウトウトと眠ってしまいました。
おやすみなさい。
<おわり>




