表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】蛇神譚 犬首村六道繪巻 ― 誰そ彼の契り ―  作者: 譚月遊生季
最終巡 結ノ章 ― 天道 ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/56

終幕

 都会の片隅。

 人気のない路地裏に、黒々とした裂け目が現れ、人影が二つ、姿を現す。

 路地裏の隅。身を隠すようにして(うずくま)亡者(もうじゃ)を見、人影の片方……白い長髪の男が口を開いた。


「この子、保護よねぇ」


  長髪の男は、日傘を開きながら淡々と語る。

 華やかな女物の着物を身につけ、女性らしく振舞いながらも、その声には男性らしい低さと(つや)がある

 

「まあ狩るなら俺っちの仕事だけどね。悪さしなさそうだし、保護でいいんじゃない?」

 

 もう片方……赤髪の男が飄々(ひょうひょう)と言う。

 柄物(がらもの)のスーツと色付きのサングラスを身につけ、その顔にはしっかりと傷痕が刻まれている。何も知らない相手が見れば、「堅気(かたぎ)ではない」と感じることだろう。 


「あのねぇ、ちゃんと仕事しなさいね? 外法(げほう)(たお)すのがあんたの仕事。弱った化生(けしょう)の保護はアタシの仕事。いいこと?」


 あくびをかみ殺す赤髪の男に、白髪の男は呆れ気味に突っ込む。……が、赤髪の男はへらへらと笑いながら、忠告を右から左へと聞き流している。

 

「ホラ、ましろちゃん優しいからさ。そんなに人をこき使うタイプじゃないと思うのよ。誰かさんと違って」

「あんたが不真面目すぎるのよっ! というか、うちの上司をなんて呼び方してんの!?」


 ワイワイと騒ぎながらも、白髪の男は発見した化生の背後に裂け目を作り出し、そのままどこかへと「転送」する。

 それを横目に、赤髪の男は古びた手帳を取り出した。


「……で、次はこの城島(じょうじま)(あかり)ちゃんって子を庇護(ひご)しに行くの? なんで? そんな重要?」

「特殊な血筋なのよ。城島――秤さまの血筋ね。上手く噛み合ってりゃいいけど、その子の場合はほぼ最悪。とっとと助けに行くわよ」


 コンパクトミラーを取り出し、化粧と髪型を気にする白髪の男。赤髪の男に比べ、仕事へのやる気は十全のようだ。 

 

「ありゃま……やることが多いねぇ」

「あんまりサボってると刹鬼さまにどつかれるわよ」

「うげ。キリキリ働かせていただきます」

「ま、髑髏さまは助けてくれるかもね」

「わかってないねぇ。怖いのはむしろそっちだって……」


 渋い表情で肩をすくめる赤髪の男を、白髪の男はぎろりと睨みつける。

 コンパクトミラーをパタンと閉じ、白髪の男はドスの効いた声で赤髪の男に釘を刺した。


「――良いかい。朱雀(すざく)(おれ)たちはこの世界の(ほころ)びを(つくろ)うために『怪異』から『守護』になったんだ。拾われた温情にゃ応えるべきだぜ」

「へいへい、分かってるよ。――白虎(びゃっこ)


「救われし者」二頭は、そのまま都会の雑踏へと歩みを進める。

 新たに救いを求める魂のために。

「神」に救われた「怪異」として、恩義に報いるために。

 

「でもよ、やることやったら、後はテキトーで良いわけよ。変に真面目だから怨霊に身を堕としたんじゃないの」

「うるっさいわね! あんただって相当暴れてたくせに!」

「いきなり女形(おやま)モードになるのやめてくんない? ビックリするから」

「黙らっしゃい。こっちのが落ち着くのよ! 良い? 現世のアタシのことは『山名(やまな)万葉(まんよう)』って呼ぶのよ!」

「うわぁ……すげぇキャラ付け(ひね)った感じ……」

「何よ、文句あるの『赤松(あかまつ)治五郎(じごろう)』!」

「いやあ……俺っちだって斃した怪異の名前そのまんま貰っただけだし……つか、どうする? すげぇ目立ってんだけど」

「……お互い、服装は間違えたかもしれないわね……」

 

 やいのやいのと騒ぎながらも、朱雀こと「赤松治五郎」、白虎こと「山名万葉」は人の波を気にすることなく乗り込んでいく。


 ……こうして、物語は繋がり、歴史は未来へと進んでいく。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ