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【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る− 【全年齢版】  作者: 社菘
第7章:聖なる証人

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「……ははっ。何を言い出すかと思えば、皇后陛下ご自身が証人だと?」


 やれるものならやってみろ、とアベルから挑発されている。仮にも皇后であるエリアスにその態度が許されるのは、皇帝であるバルド以外にはいない。エリアスが低い声色で「口を慎みなさい」と発言すると、アベルはきゅっと口を閉じた。


「証言を裏付ける証拠として、俺の“記憶”を提出します」

「は……?」


 エリアスの言葉が意外だったのか、アベルは素っ頓狂な声を出した。証拠として『記憶』を提出するなんて有り得ないことだとアベルは鼻で笑った。


「シャロン皇子をここに」


 エリアスが従者に声をかけると、裁きの間にはカリーナと一緒にシャロンが入ってきた。アベルや大臣たちはシャロンの登場に場がどよめき、興味深そうにシャロンをまじまじと見つめている。エリアスの隣に座るシャロンはこの状況をあまり分かっていないようで、いつものように笑顔を浮かべていた。


「シャロン、かかさまがお願いしたことを覚えてる?」

「うん、おぼえてる!」

「裁判長、シャロン皇子の“記憶伝達能力”と、我が専属侍女であるカリーナの“投影能力”を使わせていただいてもよろしいでしょうか?」

「それが証拠になるのでしたら……」


 実は、シャロンには治癒能力や防壁能力だけではなく、記憶の伝達能力があることも判明した。ヴェルデシア村でバルドが目覚めた時、彼の暴走を落ち着かせたのは『シャロンがバルドの手に触れた』からだ。


 シャロンは人に触れることで記憶の伝達ができるらしく、その能力が分かったのはアベルの裁判についてエリアスが頭を抱えていた時。「シャロンはぜんぶおぼえてるよ!」と言って、エリアスに記憶を見せてくれたからだった。


 そして専属侍女であるカリーナは、家族から『なんの役にも立たない能力』と言われた投影能力がある。これは自分が見ている景色などを映像として映し出す能力で、シャロンから伝達された記憶も映像として空間に映し出すことができたのだ。


「今から見ていただく記憶は、俺が3年前に失踪した時のものです。シャロン皇子はすでに俺のお腹に命を宿しており、胎児の時から俺の目と指輪を通して記憶を共有していたようです」


 僥倖だったのは、シャロンの能力だけではなく皇后の指輪の存在も大きかった。崖から突き落とされたエリアスとシャロンを守るためにエリアスの体内に宿っていた指輪は『もしもの時のために』記憶する魔法も備わっていたらしい。


 カリーナの能力によって映し出された映像にはエリアスがバルドと喧嘩をしていた場面や花屋に行く場面、そして当時の侍女だったスザンヌから突き落とされた場面が鮮明に残っていた。


 その後に続いたのはエリアス自身は気を失っていたので覚えていないが、スザンヌやルイス、そしてアレクシスが懸命にエリアスの命を救おうとしている場面だった。


『アベル様が寄越した監視者たちは、皇后陛下を始末できたと判断して去っていった。よく分からないが、強い光によって皇后陛下は一命を取り留めている……絶対にこの方を死なせてはいけない。アベル様をこの国の皇后にしてしまったら、アルバディア帝国に未来はない……混血の差別が助長されるだけだ』

『皇后陛下はアルバディア帝国の未来を担う皇子か皇女の命を宿しておられます……! どうか、どうか、お二人とも死なせてはなりません……っ』

『本当に申し訳ありません、エリアス様……俺たちが弱いばかりにこんなことになってしまい……!」

『今は口より手を動かせ! 怪しまれないように後始末をしないとアベル様に勘付かれる。俺たちもエリアス様の殺害後は自害しろと言われているんだ……身を潜めなければ。いつか皇帝陛下と皇后陛下をまた再会させるためにも』

『……皇后陛下の記憶操作を行う。いつか帝都へ帰還するとなった場合、真実を打ち明けて記憶操作を解除することを誓います』


 本当に申し訳ありません、皇后陛下――そう言いながらアレクシスが懸命に治療を施している顔や言葉が流れ、裁きの間には沈黙が続いた。


 エリアスがアベルをチラリと見やると、彼は親指の爪を噛みながら物凄い形相で映像を見つめている。その態度が何よりの証拠だった。


「一命を取り留めた俺はそのあと元の侍女や従者たちが作った存在しない村に隠され、皇子を無事に育てられました。そして先日、3年前の告白や失踪、俺が皇后の時の記憶を失っていることに関して四人から正式な告白がありました。ただその後、謎の襲撃者により三名は死亡、一名は昏睡状態、そして皇帝陛下もいまだ意識が戻らない状態です」


 もちろんシャロンの記憶には先日のアレクシスたちの告白や、カリーナに守られて見えていなかったが襲撃された場面で混乱するエリアスたちの音声が裁きの間に響き渡った。


 一部ショッキングな映像も流れたが、シャロンの記憶は王宮の医務室にバルドとアレクシスが運ばれたところで途切れている。それまで一気に能力を使ったシャロンが眠りについたからだったが、証拠としては十分な効力だろう。


「……さて。これでもまだ何か弁明いたしますか?」


 エリアスの言葉に、アベルは奥歯をぎりっと噛み締めながら睨みつけた。




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