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【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る− 【全年齢版】  作者: 社菘
第6章:記憶と選択

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「でも私に、あなたは殺せませんでした。あなたはあまりにも、この国の真の皇帝だったから……混血のエリアス様を皇后に迎えるだけではなく、それよりも前から王宮に従事する者の中に混血の者たちを採用し、純潔かどうかは関係ないと言って居場所を与えてくれる陛下のことを、私は次第に歴代皇帝の中でも一番の皇帝でいてほしいと願うようになり、暗殺計画を取りやめました。ただ……」


 アレクシスはバルドの侍従になってから何度か、バルドが眠っている隙に部屋に忍び込んでナイフを突き立てようとしたという。


 あと数ミリでバルドの心臓を突けたのに、寸前のところでいつも止めてしまう。アレクシスは自分が混血だからと家族に捨てられた純血主義の考えを植え付けたのは歴代の皇帝たちの仕業であり、バルドのせいではないと我に返ったらしい。


 バルドはむしろ混血だから蔑まれる国の在り方を変えようとしている先駆者で、その皇帝を支える混血種の皇后の行末を、生きてこの目で確かめようと思ったのだ。


 ただ、バルドを殺めようとしているところを第一皇妃・アベルから目撃された。それからはアベルからいいように使われる駒になり、とうとうエリアスの殺害を指示されたとアレクシスは話した。


「……私には皇后陛下を見捨てるなんてできませんでした。お二人はお互いに出会うために生まれ、エリアス様がいるからこそ陛下は道を間違えずに歩んでこられたのです。アベル・ウィリントンが皇后になったらこの国は崩壊する……マリアベルから皇子の妊娠のことも聞いていたので、この3年は安全な場所へと隔離させていただきました。申し訳ございません」

「村にいた他の人たちは……あの人たちはどういうこと?」

「スラム街から連れてきた行き場のない者たちです。記憶操作を行い、あの村を作りました」

「じゃあ住人にとっては、あの村が自分たちの居場所であることに変わりはないのか……」

「もしも許されるなら、ヴェルデシア村はあのまま……行き場のない者たちへの居場所として残していただけたら、私は処刑されても心残りはございません」


 アレクシスは再び地面に額を擦り付けるほど深く頭を下げ、それに倣ってルイスたちも懇願した。エリアスはヴェルデシア村で暮らしていた記憶があるので行き場のない者たちの気持ちや事情がよく分かる。あの村はきっと、これからはそういう人たちの希望の村となるだろう。


 エリアスも懇願するようにバルドを見つめると、彼は観念したようにため息をついた。


「あの村の存続については引き続きお前が先導して、帝国にも益があるような村作りをしていくんだな。責任者は皇后であるエリアス……頼めるか?」

「も、もちろん! 大丈夫、みんなと一緒にならやれる!」

「では、皇后の名で寄付をすることと、混血種やその他行き場のない者たちの移住を許す。ただ、記憶操作や忘却魔法は禁ずる。村に移住する者の身元はしっかりと確認をし、審査に通った者のみとする。いいな?」

「ありがとうございます、皇帝陛下……っ」


 アレクシスが涙交じりの声でバルドに謝意を述べると、エリアスもつられて泣きそうになった。そして、バルドがエリアスに重大な仕事を任せてくれたことが何よりも嬉しい。


 なんだかエリアスもバルドに本当の意味で認められた気がして、これから明るくなるであろう未来に思いを馳せた。


「皇后陛下の記憶操作をしたのは私なので、解除させていただきます。本当に申し訳ありませんでした」

「えっ、も、もう記憶が戻る感じになる?」

「皇后陛下が望むのであれば、すぐにでも」

「ちょっと待って、心の準備が――」


 エリアスが緊張で心の準備をしている最中、エリアスの顔の横をシュッと何かが横切った。


「ぐ、ぁ……ッ」


 エリアスの目の前にいたアレクシスが胸を抑えて倒れ込み、その先にいたバルドは左目から血の涙を流していた。


「え……?」

「――エリアス、伏せろ!」


 バルドの声で我に返って咄嗟に伏せ、辺りを見回した。カリーナはシャロンを守るように覆い被さっていて、ルイスやスザンヌたちは心臓を矢で射抜かれて倒れていた。そしてエリアスの目の前に倒れているアレクシスも同様で、心臓の辺りを射抜かれていた。


「アレク! 駄目だ、死んだら駄目だ、アレクシス……っ!」

「エリアス、さま……皇帝陛下を……」


 バルドはどうやら、襲撃に気がついて矢の当たりどころがズレたらしい。彼の左目が射抜かれていたが、バルドは襲撃者を追跡するため竜の姿になろうとしていた。


「……っあ?」


 竜の姿になれないまま、その場に膝をつくバルドの様子がおかしいことにエリアスは気がついた。辛うじてまだ息があるアレクシスも突然苦しそうに喉の辺りを押さえ始め、それが毒だと理解するのにさほど時間はかからなかった。


「待って待って、待ってくれ! お願いだから……ッ」


 アレクシスはアベルを裁くための証人として、今後の帝国の発展にも必要な人物だ。ただ、皇帝であるバルドはこの国の未来に必要不可欠な人で、彼がいないとアルバディア帝国は太陽や月のような道標を失くした国となるだろう。


 どちらを先に助けたらいいのか、エリアスは判断を迷ってしまった。




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