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【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る− 【全年齢版】  作者: 社菘
第6章:記憶と選択

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「待って、本当に待ってよ……頭が追いつかない」

「あの村はエリアスのために作られた存在しない村……そうだな?」


 バルドが三人に詰め寄ると、全員がこくりと小さく頷いた。


「俺たちが……皇后陛下を手にかけました」


 エイデンが震える声で真実を告白した。ただ、エリアスはいくら目を凝らしても夢の中の三人とは顔や姿が違うように見えるのだ。それに、元々エリアスの侍女や侍従だったのであればバルドやアレクシスが分からないわけがない。アイオンたちにピンときていないところを見ると、人違いではないかと思えた。


「カリーナ、マリアベルは俺の前の侍女だった人?」

「い、いえ……スザンヌさんとは別人に見えます……」

「一緒に消えたっていう侍従や御者は? 他の二人と同じ人なの?」

「私は前にも村長やエイデンさんにお会いしましたが、消えた従者たちとは別人のように思います」


 カリーナやアレクシスの証言では、エイデンたちは消えた従者たちとは別人らしい。ただ、バルドの目は鋭いまま三人を見つめていた。


「忘却魔法をかけると聞いた時から何か変だと思っていた。変化魔法や記憶操作魔法は禁忌とされているぞ、ルイス・クレイン」


 バルドが冷たく言葉を放つと、エイデンの体がびくっと揺れた。そしてみるみるうちに、エイデンの姿は美しい空のような色の髪を持つ青年に変わっていった。


「……皇后陛下をお護りするためには、致し方ありませんでした」

「他の二名も、アルバディア帝国の皇帝の前にいつまでも虚偽の姿でいるつもりか」

「申し訳ありません、バルド皇帝陛下」

「嘘偽りなく全てをお話しいたします」


 アイオンの姿は茶色の髪を持つ初老の男性の姿に変わり、マリアベルの姿はハニーピンクの長い髪の毛を持つ女性の姿に変わった。エリアスを支えていたカリーナが「スザンヌさん……!」と口にしたので、この三人はエリアスの夢にも出てきた侍女と侍従、そして御者で間違いなのだろう。


「私たちは、第一皇妃・アベル様に命じられ皇后陛下の殺害を企てました」


 今まで、この3年間ずっと一緒にいたエイデンが実は従者であるルイス・クレインだったこともエリアスはまだ飲み込めていないのに、信頼していた人たちからこの崖から突き落とされたのだと知って膝から崩れ落ちた。


 そんなエリアスを見てエイデン――ルイスは辛そうな表情を浮かべたが、バルドに続きを促されぽつりぽつりと話し始めた。


「……私は皇后陛下への慕情を理由に、実行を強制されました。侍女のスザンヌは皇后陛下への献上品に手をつけていたことを、御者のジェラルドは密輸に関わっていたことを理由にアベル様の駒となりました」

「そうか……」


 ルイスの告白に、バルドは深い溜め息をつく。エリアスもまだ頭の整理ができず、ただ呆然とすることしかできなかった。


「アベル様がエリアス様の記憶操作を行い、皇帝陛下との争いを引き起こしてからお二人を引き離す計画を立てました。お二人の口喧嘩や皇后陛下があの日、王宮を飛び出したのは全て操作されていたことです」

「私たちの他にもアベル様の手の者が監視しておりました。死んだように見せかけないと、その手の者から本当に殺められてしまうと思い……お怪我を負わせてしまったのは本当です。ただ、突き落した瞬間、皇后陛下の体は光に包まれて一命を取り留めました」

「それでも頭に傷が残るくらいだったのだろう? 誰が治癒魔法を施した」


 三人は顔を見合わせたが、私だと名乗り出る者はいなかった。エリアスは混血ながら帝国一と言われるような治癒能力を持っているが、自分で自分の頭の怪我を治したとは考えにくい。他にも誰か治癒能力を持つ者がいると推測されるが、とうとう誰も手をあげることはなかった。


「――私です、陛下」


 コツ、と靴の音を鳴らして一歩前に出てきたのは、シャロンを抱いているアレクシスだった。


「お前が、なぜ……」


 さすがのバルドもアレクシスが関わっているとは思わなかったのか、声に動揺の色が滲んでいる。アレクシスはカリーナにシャロンを預け、地面に頭がつきそうになるほどエリアスとバルドに頭を下げた。


「私は元々、皇帝陛下の暗殺をするため、あなたの侍従になりました」

「は……」


 アレクシスはバルドの侍従だが良き相談相手でもあり、皇帝の右腕のような存在である。そんなアレクシスがバルドの命を狙っていたとは知らず、エリアスたちは開いた口が塞がらなかった。


「陛下もご存知の通り、私は混血です。皇后陛下と同じようにそれなりに治癒能力はありますが、帝国一と言われるほどではありません。中途半端な役立たずだと家では疎まれ、とうとう捨てられました。混血差別を生んだ国家のトップを殺そうと……あの頃からずっと、機会を窺っておりました」


 アレクシスの話の通り、アルバディア帝国は純血主義の思想が強い。混血は出来損ない、中途半端な役立たずだと罵られ、貴族の家に生まれたら尚更勘当されることも多いのが現実だ。


 アレクシスも元々は貴族の家の出で、純血の父親が人間の侍女に手を出して生まれた子供である。そもそもが醜聞で、その上混血種だったアレクシスは幼い頃に捨てられたという。


 スラム街では強くないと生きていけず、武術や剣術を独自で学んだアレクシスは10歳前後の時に出会ったバルドから金品を盗もうとして戦うと、バルドから武術の腕を認められて侍従となったのだった。




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