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【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る− 【全年齢版】  作者: 社菘
第5章:皇后と皇妃

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 エリアスが記憶を失ってから初めての発情期を終えてしばらくしたあと、体調が回復したエリアスは温室に引き篭もることが多くなった。


「かかさま! カリーナとあたらしい薬草をうえたよ!」

「ありがとう、シャロン。とても助かったよ」

「えへへ」

「カリーナもありがとう。シャロンも君を気に入ってるみたい」

「私にはもったいないお言葉です、皇后陛下」


 エリアスたちが王宮に来てしばらくはアレクシスが相手をしてくれていたが、バルドが『破壊の王』として過ごしていた3年の後始末や近隣諸国との信頼回復、帝国内外の復興に奔走しているバルドと共に忙しくなったので新たに侍女を配属してくれたのだ。


 カリーナは元々、記憶を失う前のエリアスの専属侍女と共に仕えていた侍女だったらしく、侍女長がエリアスと共に消えてからは皇后の部屋などの掃除や管理はカリーナがしてくれていたという。


 カリーナは愛らしいピンク色の髪の毛を綺麗にまとめ、エリアスと同じように明るい緑色の瞳が印象的なベータの女性だ。シャロンもすぐに懐いて、エリアスが薬草の研究をしている間はカリーナがシャロンの面倒を見てくれている。


「新しい薬草の研究でございますか?」

「ああ、うん。前にバルド……皇帝陛下の髪の毛には魔力があるって聞いてね。アルファやDom用の抑制剤が作れると聞いたから研究しているんだ。あとは先の戦で負傷した人たちへの薬や、薬品が足りていない地域に配るために量産したくて」

「……民もきっと、皇后陛下からの贈り物だと知ったら嬉しく思います」

「そうだといいんだけど」


 周りにはバルドの奇行を『古代竜の呪い』で通しているが、本当は彼自身がエリアスの失踪によりおかしくなって仕掛けた戦だ。バルドがそうなってしまったのは自分のせいでもあるので、表に姿は出せないがせめてもと思い、役に立つようなものを各地域に配りたいと思ったのだ。


 幸いにもすぐに使える薬草が温室にはたくさん育っていて、特に被害がひどい地域へ第一陣を送ったばかりである。


「そういえばカリーナに聞きたいことがあるんだけど」

「何でございましょうか?」

「俺が失踪する前、侍女長はどこに行くとか何をするとか、そういうことは言ってなかった?」


 カリーナを専属侍女にするにあたり、エリアスの記憶が失われている真実については既に説明をしていた。最初こそカリーナは信じられない話だと驚いていたが、エリアスの様子を見て本当のことだと信じてくれたらしい。


 それからは周りにこのことが公にならないようサポートしてくれつつ、シャロンの面倒も見てくれるので強い味方だ。


「あの日は確か、エリアス様はお詫びの花を買いに行きたいとおっしゃったと……」

「お詫びの花?」

「皇帝陛下と言い争いになって怒って出てきてしまったので、仲直りのために陛下のお好きな花をご自分で買いに行きたいとおっしゃったのだと聞きました。なので私は、エリアス様が帰ってきた時に召し上がるお食事と湯浴みの準備をしておくように指示をされたんです」

「それで、俺も侍女長も戻ってこなかった?」

「はい……夕方になってもお戻りにならず、ご夕食の時間になってもお戻りにならないので、皇帝陛下が何名かの騎士を捜索に出されました。ですが何も手がかりがなく……3年という月日が過ぎたのです」


 エリアスが失踪する前に姿が確認されたのは街のはずれにある花屋だったと、アレクシスからも話を聞いていた。カリーナも侍女長から花屋に行くと聞いていたようなので、エリアスがそこに行ったのは間違いないのだろう。


 ただ、エリアス本人は『花屋』や『バルドの好きな花』と聞いてもピンとこない。花屋に行っただけでどうして失踪できるのかと逆に問いたいものだ。


「俺が言い争いでバルドのことを本気で嫌いになって出て行った可能性は?」

「エリアス様は常々、皇后としての責務を果たしたいと陛下にご相談されては小さな衝突もありましたが、エリアス様が陛下をお嫌いになるなど……そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ません」

「……万に一つも可能性はないと?」

「ございません。お二人は心から愛し合っておりましたので、断言できます」


 ――侍女から『愛し合っていた』と断言されるのはなかなか恥ずかしいな……。


 エリアスがずっと『何か嫌なことがあって、思い出に封をしている』と思っていた仮説はもしかすると見当違いなのかもしれない。自身が皇后であると知ってからはバルドとの関係で何か嫌なことでもあったのかと考えたが、昔のエリアスを知っているカリーナがそう断言するくらいなので、可能性は低いのだろう。


「じゃあ、自ら失踪したわけではない、とか?」

「……大きな声では言えませんが、アベル様にはお気をつけください」

「え?」

「あの方はずっと、エリアス様を排除して皇后になろうと思っているに違いありません。私にはそう思えます」

「うーん……まぁ、なくはないかも? ものすごく堂々と敵意を向けられるし。でも、そう考えると逆にわざとらしいというか……分からないけど」


 エリアスが自ら失踪したのではないと言うのなら、第三者が介入した可能性が浮上する。だが考えても考えても分からないし、考え過ぎて知恵熱が出そうな気がした。




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