表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/13

分散と衝突

ブクマしてくださった方が現れました!

本当に感謝です!引き続き頑張りますのでよろしくお願いいたします!


視点が変わります

 


 その景色を見た瞬間俺は全力で叫んだ



「うっわあああああああ!!!すげえええええ!!!!」



挿絵(By みてみん)


 地球のどんな景色でも勝てないと思えてしまう圧倒的な美がそこにはあった


 圧倒的に雄大な自然。そしてその中そびえる白と青を基調として整えられた街並み


 そして金に輝く巨大な城



 地球にあれば東京ドーム何個分、みたいな表現をされたであろうその巨大すぎる城


 そして機能性よりも美しさを優先して整えられたであろう街並みと周りにある岩山のバランスが絶妙だ


 この景色を見ただけでも、人間は神に存在を信じるといっても過言ではい美しさがそこにはあった



「小僧、目立つ行動は慎めと言うたであろうが」



 コツンと、俺の頭を杖で小突いたオルトレーンは、世話が焼けるといわんばかりに大きなため息をついた


 申し訳ないと思うと同時にこの景色を見て叫ばない奴がいるもんかと俺の興奮は止まらない



「ふふ、この主様の可愛さをアピサル様にご報告せねばいけませんね」


「いい大人が可愛いとかアンタの目腐ってない?」


「あなたの心が腐ってるんですよ、キューレ」


「......あっそ」



 今日俺と行動を共にするマリエルとキューレが俺の後ろに控えている


 マリエルは羽をキューレは耳をそれぞれスキルによって隠して人間のふりをしている



 因みにどうあがいても目立つアピサルとロード。そしてモモとケルはお留守番だ


 そのことにアピサルは一瞬ごねたが、オルトレーンに「夫が出かける時、家を守るのが良き妻ではないか」と説得され笑顔で送り出してくれた


 きっと本気でごねたわけではないだろうが、あれだけ大きなアピサルがごねると、それだけで迫力凄い



「ピィ~」



 ちなみにピー助は俺の背負うリュックサックの中に入っている


 常に一緒に居ることで、俺を絶対に守ってくれるらしい



「頼むよ、ピー助」


「ピィ!」


「ではワシ等は別行動をする故、くれぐれも目立つ行動はせぬように。各々情報を集め、日暮れにこの場所で落ち合うぞ。よいな」



 オルトレーンはそういうと魔法で姿を消しどこかへ行ってしまった



「んじゃ我ゃも言ってくるじゃゼ!大将!」


「ボス、また」



 そして武王丸とヴァイオレットもそれぞれの役割を果たすために別行動に移っていく



「それじゃあ俺たちも行こうか」


「はい!主様!」



 マリエルが勢いよく俺の腕をとる



「マリエル!?」


「初めての場所です、離れないように用心しないといけませんよね?」



 マリエルが絶対可愛い確信があるであろうあざとい表情で聞いてくる


 この世界に着て少し若返ったとはいえ、あまりに若く見えるマリエルに好意を寄せられるとなんか悪いことをしているようで、離れたくなるのだが



「主様?」


(あざとすぎぃぃ!)



 マリエルの可愛さ?あざとさ?の前に抵抗できなかった



(己の精神の未熟さが憎い)


「はぁ...留守番してればよかった」



 背後から聞こえるため息が辛い



「ピィ~」



 ピー助、そのやれやれだぜは傷つくからやめてくれ...


 飛行する魔法だの騎獣だのがあるからだろうか、城壁や門での検問などのよくイメージする入国審査みたいなものも特になく、俺たちは城下町を練り歩く



「不思議と文字は読めるんだよなぁ~」



 転生得点なのか、特にスキルなどは無いのだが、異世界の言葉と文字はすんなりと理解ができる。



「そこの旦那さん、可愛い奥さんにフルーツはどうだい?」



 商店街のようなエリアを歩いているといろんな人に声をかけられる


 マリエルと手を繋いで歩いているからか、皆に夫婦やカップルに間違われるのだが、その旅にマリエルのテンションが上がっていちいち可愛い


 因みにその都度後ろから聞こえるため息×2には気が付かないふりをしている



(何も悪いことはしていない!胸を張れ!俺!)



 今朝オルトレーンがどこから持ってきてくれた金銭があるので、楽しく散策ができている


 出所を尋ねると「ほっほ」と笑ってごまかされた



「はぁ~これが夢にまで見たデートなんですね、主様」



 と楽しそうにするマリエルを見るとすごく幸せな気分になる



「待ってくれてる皆にも何かお土産を買わなきゃね」



 観光に来たわけではないのだが、この国の人たちがあまりに陽気でいい人たちだからついつい気が緩んで純粋に楽しんでしまう


「まいどあり、ガルド様のご加護がありますように」


「えぇ、貴方にも」



 この国では、何を話すにしても〆の一言は神の加護を願う一言のようだ


 この世界には複数の神がいて、存在する国は一つの神を信奉しているらしい


 ヴェルディア王国では、ガルド=イグノアという炎の戦神をあがめている



 そしてこの世界では、大陸の中央にある灰の平原の中心地に信奉する神の神殿を建築することができれば、その神がこの世界の唯一神になると信じられているらしい



(日本出身の俺としてはなじめない感覚だけど、実際に神がいて加護がもらえる世界なんだから、一緒に考えちゃだめだよな)



 前世でも信仰が違えば常識が違った


 移民による文化衝突は前世でも大きな問題だった


 祈りの言葉も、最初は何のことかわからず首を傾げたら、優しい店員さんの目に一瞬殺気が宿った


 あわてて「あなたにもガルド様のご加護がありますように」といったらすごく優しい目に戻った


 信心深ければ深いほど、異教徒とは相いれなくなる



 俺は広場に建てられていた、ガルド=イグノアの銅像を見て思考を巡らせる



(この世界の戦争の歴史や亜人と敵対する問題すべてに宗教が絡んでいるなら、オルトレーンの言う通り、理解し合うのは難しいかもしれない)



 黒い鎧に身を包み、火の輪を背負いながら悠然とたたずむその神がつかさどるのは炎と勇気――



(――そして、犠牲...)



 灰の平原と呼ばれる大陸の中心地は戦争に次ぐ戦争で人が住めぬ不毛の地となっているらしい


 そんな戦争の終わらぬ地に信者を永遠と送り込む神...



(犠牲を強いる神なんて、神じゃなくて悪魔だ)



 この世界の人たちと円満な関係を作るにはあまりに俺の常識とかけ離れたこの世界の常識をどうすればいいのか、俺の頭の中では答えが出ない



(オルトレーンが即断で分かり合うのは無理といったのもわからなくもない)



 恐らくオルトレーンもこの世界で何かをしようとし、その行いが神の目にとまり、そして否定されたのだろう


 それからしばらく街を練り歩きながら考えるが一向にいい考えは浮かばない



(本当に、どうするべきか...)



 思考を巡らせながらどんどん街を歩いていると...



「このクソガキ!ガルド様に不敬を働こうっていうのか!?」


「お父さんが死んだなんて嘘だ!お父さんは死んでない!」


「ガルド様の為にその身を捧げたんだぞ!名誉なことだろうが!」


「名誉なんて知らない!お父さんを返せ!!」


「このガキいい加減にしやがれ!!」



 家と家の間にある物陰から不穏な声が聞こえてきた


 覗いてみると、2人の男が5~6歳に見える男の子を蹴り飛ばしたところだった



 俺はそれを認識した瞬間、俺は全力で走り出していた


 オルトレーンとの約束なんて欠片も思い出すことはなかった










 ##武王丸



 バァァァァン!!!



 激しい物音にその場にいた者の視線が全てその男――武王丸に注がれた



「あ?ヌシ今何抜かしおった?もういっぺん言ってみぃ」



 武王丸にギロリと睨まれた男は、少し物怖じしながらも半笑いで言葉を吐く



「派手な鎧に身を包んだ戦も知らねぇ奴は家に帰ってママのおっぱいでも吸ってろって言ったんだよ」



 男の言葉に冒険者ギルドにいた者達が笑い出す


 それを受け武王丸は大太刀を抜いた





 ――時は少し遡る



 ヴェルディア国の戦闘力を確かめるために、オルトレーンの指示した冒険者ギルドに到着した武王丸



「カッカッカ、常駐戦陣世界の武士はどんなもんか楽しみじゃゼ」



 竜将がこの国を肌で感じている間に、ヴァイオレットが聖騎士の戦力を、オルトレーンが知識面から国力の調査を、そして武王丸が冒険者たちの戦力を確かめるために別々で動くことになったのだ


 街を巡回する兵士たちは、武王丸からすれば未熟ながらも、戦場帰りの空気を纏い、命を懸けて使命を果たさんとする者が発する鋭いオーラがあった



 だからこその期待



 冒険者ギルドという大層な名を授かった組織に居る武士共はどれだけの強者なのだろうかと


 そして意気揚々と冒険者ギルドの扉を開いた武王丸の目に飛び込んできたのは――



(こりゃぁ...屑の空気じゃゼ)



 ――とても武士とは言えないだらしない雰囲気を纏う男どもだった



 冒険者ギルド


 世界の国の影響力を受けることなく、世界を開拓し、世界の平和を守る者


 遥か昔にとある戦場の英雄が晩年に立ち上げたその組織は、戦争が絶える無ことが無いこの世界では、戦を放棄した弱者の巣であり、神の意志に逆らう背教者の巣――つまりアウトローの巣窟であった。


 そこにあったのは冒険に対する熱意や活気ではなく、敗者の堕落した空気


 何かをあきらめた者が発する特有の濁った空気だった



(国に妖怪が襲われちょる言うのに、妖怪の強さに慄き刀を握ることも戦で酒に逃げた屑と同じ空気じゃゼ)



 喜々として扉を開け、扉の前で立つ武王丸の顔は瞬時に軽蔑の表情へとなり、こんな場所には要は無しとばかりに踵を返そうとした


 その時だ、失笑の笑い声が起きたのは


 武王丸が振り返るとそこには自分を指さしながら笑う屑共



「ヌシ等、何がおかしい...」


「はっはっは、これが笑わずにいられるかよ!俺達を見るなりビビって逃げようとした勘違い野郎が目の前に居るんだぜ!」



 無骨な鎧に身を包んだスキンヘッドの男が大声を上げる


 戦争が身近にある世界において、鎧とは実際に戦う際に身に着けるもの


 祭事用の豪華な衣装や指揮官クラスが身に着けていそうなきらびやかな装備などはこの世界には存在しなかった


 戦装束とは全て神に戦を捧げる為のもの。綺麗な装いよりも実用性こそが美徳なのだ


 武王丸の派手な鎧はこの世界では一番の愚か者が身に着けるうつけ者の装備だったのだ



挿絵(By みてみん)



「あ?ヌシ今何抜かしおった?もういっぺん言ってみぃ」


「派手な鎧に身を包んだ戦も知らねぇ奴は家に帰ってママのおっぱいでも吸ってろって言ったんだよ」



 そのあざけりの言葉に武王丸は大太刀を抜き放つ


 アピサル戦で見せた神速と違い、格下の人間相手には一般級でしかない武王丸の抜刀


 その抜刀の遅さに更にあざけりを増したスキンヘッドの男は、物の道理をわからせてやろうと、武王丸の前に立つ



 武王丸は男の首筋に向かって、あえてゆっくりと刀を動かしていく



「なんじゃそりゃ、反撃し放題じゃねぇか!」



 スキンヘッドの男は、己の手に持つメイスを武王丸の胴体にそこそこの勢いで叩きつける


 恐らくは軽くのしてさらに笑いの種にする。その程度の認識だったのだろう



 しかし武王丸は、そよ風に吹かれた方がまだ揺れるとでも言わんばかりに微動だにしない


 武王丸の目には腐って見えても、それでも戦場経験者、メイスは的確に鳩尾を突いた


 かなりの質量が急所に当たる


 耐えるにしても気合いを入れる等の変化があって当然である


 しかし武王丸に変化はない



「へ?」



 変化があるとすれば、それはゆっくり、ゆっくりと動く大太刀が確実に男の首に向かっているという事だ


 唖然とした男も、迫る大太刀にハッとし、防ぐためにメイスを体側に立てて構え大太刀を迎えようとする


 メイスの柄が大太刀を防いだ瞬間に弾き飛ばし、今度は本気の一撃を食らわせようと考えていた男


 しかし



 スッ――



 止まると思っていた大太刀は、そこにメイスなんてものは無いといわんばかりに速度に全くの変化がないままに進んでいく



 メイスが武王丸の力に押されているのではない


 メイスの柄が、ゆっくりと斬れているのだ



「は!?はぁ!?」



 目の前の減少に何が起きてるか理解ができないスキンヘッド


 そして混乱の内に刀はさらに進み



 ズブッ


 男の首に食い込む


 男は理解ができない恐怖におののき、確実に迫る死に恐怖の叫び声をあげる







「何をしている!!」



 そしてそこに叫び声と共に一人の男が飛び込んできて、スキンヘッドの男を大太刀と逆の方に突飛ばした


 吹き飛ば去れたスキンヘッドは「ヒッ!ヒッ!」と恐怖に支配されたまま


 周りでその様子を見ていた冒険者たちが、乱入してきた男の存在に我に返り、スキンヘッドの首から流れる血を止め、治療に当たった



 武王丸はそれを静かに目で追うと、ゆっくりと歩みを進め、大太刀をスキンヘッドの男の首に向かって動かし始めた



「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?」



 スキンヘッドの男は何があろうとも確実に自分の首に迫ってくる武王丸の大太刀に恐怖し



「くるなっ!くるなぁぁぁ!」



 恐怖で狂ったように叫びだした


 あまりにも異常な空間



 その武王丸とスキンヘッドの男の間に先ほど乱入した男が改めて割って入る



「待て!何をしているのかと聞いている!」



 武王丸は乱入者をじっと見つめる


 周りからは「7つ星だ」「彗星のランザだ」「よかった」等の声が聞こえる


 どうやら武王丸の前に居る存在は、この世界では一目置かれている者らしい、しかし――



「雑魚じゃゼ」

「なっ!?」


 ――武王丸の目にはスキンヘッドの男と大差ない強さに見えた


 現に格上に発動する武王丸のスキル発動に掠る慶派すらない


 武王丸の発言に顔を真っ赤にする乱入者


 激しく武王丸を睨むと鞘から剣を抜き放ち


「そこまで侮辱されては致し方ない、彗星のランザが無法者に神罰を下すとしよう!」


 その言葉と共に鋭い踏く踏み込む


 彗星の名にたがわぬ速度で迫るランザの斬撃


 速度で劣っている武王丸だが、その戦闘経験からランザの狙いを正確に見切るとほんの少し体をずらすだけでその剣を避ける



「何!?――だが!!」



 速度に自信のあるランザは攻撃を避けられたことに驚愕するがすぐに思考を切り替え次なる踏み込みを行う


 しかし武王丸はその動きの起こりをたやすく見切り最小限の動きでランザの首めがけて大太刀を振るう



「そっ首じゃゼ」



 スパンッ!



 武王丸の一刀はランザの首をあっさりと斬る


 残された慣性によってランザの身体が勢いよく転がりながら崩れ落ち


 少し遅れてゴン、ゴロゴロゴロとランザの首が転がる




「............」




 静寂に包まれるギルド



 聖騎士の頂点には負けるが、それでも日ごろ様々な荒事に対応する冒険者


 その最高ランクの7つ星の彗星のランザがあっけなく死んだ



 その衝撃に誰もが言葉を失う


 特に武王丸の派手な身なりを見て実戦を知らない愚か者と笑ったもの達の顔は顔面蒼白という言葉では言い表せぬほどに血の気が引いていた




「......ん?」




 しかしそれを成した武王丸はその手ごたえに疑問を覚える



 確かに斬ったはず



 数多の首を斬ってきた武王丸だからこそ、首を切った後に訪れる達成感が沸かない


 まるで妖怪に化かされた時の様な何とも言えない気持ち悪さを覚えた



(幻術の類い...いや、真眼は何も訴えておらんじゃゼ)



 斬ったはずなのに斬った手ごたえがない、しかし幻術でもない


 その摩訶不思議な現象に武王丸は警戒を強める


 そしてたった今首と胴が離れたランザの体を注視する



「!?」



 するとランザの体と首が炎に包まれる。



 ゴォォォォ——



 荒々しい炎が渦巻く。


 その瞬間、武王丸の大太刀が淡く光った。



「ん?」


(妖怪殺し...人間相手に発動するとはのう...)



 超常存在に反応するスキル。


 つまり、ランザは今この瞬間「人間ではなくなった」。


 そして炎の中から、ランザが現れた。


 しかし——その目には、理性の光がなかった。


 血管が浮き上がり、目は血走り、口からはよだれが垂れる。


 蒼かった髪が赤く変色し、体の節々から炎が噴き出す。


 周囲の冒険者たちが騒ぎ始める。



「蘇った!」


「選ばれたんだ!神の御使いに!」


「レベル3の加護...死すら否定するガルド様の奇跡!」


「羨ましい...俺も神と一体に...」



 武王丸は呆れたように言う。



「かっかっか、人と正気を捨てさせるのが加護とはぁ、この世界の神は随分腐っとる用じゃゼ」


「ガアアアアアア!!!!」



 武王丸の発言が我慢ならなかったのか、ランザは先程とは比べ物にならない速度で踏み込んでくる



(早い!?)



 武王丸は身体をそらしよけようとするが、先ほどとは違い完全に見切ることは出来ず、薄皮一枚斬られてしまう


 武王丸の頬から血が流れる


 そこに取り巻きの冒険者から弓や魔法が飛んでくる


 武王丸はそれを打ち落とすために武器を振るう


 そしてそこに生まれた隙を縫って彗星のランザが武王丸に迫り再び剣を振るう


 再び武王丸に傷が生まれる


 その事実に武王丸は笑う



「カッカッカ!」


「ホロビロイギョウドォォォ」



 ランザが叫ぶとスキルが発動したのか赤い斬撃が7本に分裂する


 前からは7本の斬撃、後ろからは多種多様の魔法


 流石にすべてを防げぬと見た武王丸は笑みを深めながら被弾覚悟の太刀を振るう



「相打ち上等…じゃゼ!」



 圧倒的防御力によってランザの斬撃を肉で受ける武王丸


 それによってスキルが発動し人間の枠を超えた武王丸の斬撃はランザをきるだけにとどまらず、その後ろから武王丸を狙っていた冒険者を斬る


 しかし、ランザも冒険者も体から炎を噴き上げ、その傷を再生させる



「イギョウドオオオオオオオオオオオオオ」



 しかし今度は立ち上がることができないようで、膝をついた状態で息をあらげる


 後ろの冒険者たちも血走った目で武王丸を睨むが、ランザと違い即座に傷がいえるほどの加護ではないのか、完全復活することはなくうずくまったまま動かない


 その状況に武王丸は興ざめになり、とどめの一撃を放つ



「一刀両断......豪快斬りじゃゼ!」



 武王丸の一撃が崩れ落ちていた冒険者たちの炎を削り取る


 武王丸の真眼は彼らから吹き荒れる炎こそがその加護の根源であると見抜いていた


 人外特攻を持つ武王丸の強烈な斬撃が、彼らを取り巻いていた加護を断ち切る


 一瞬で力の根源を断ち切られた冒険者たちは崩れ落ちる


 それを見て武王丸はため息一つと共に刀を収める



(無限復活じゃないのは残念じゃゼ)



 オルトレーンから託された冒険者の戦力を調べるという任務は十分に果たせたと内心満足した武王丸はもうここに用はないと踵を返す


 少なくとも冒険者の最強クラスは自分の相手ではないことがわかった


 ヴァイオレットの様な暗殺者タイプは相性最悪だろうなと思った武王丸は、やっぱりここですべて斬るべきか迷う



「うぅ...俺は...何を...」



 ランザが起き上がり自分の手を見る。


 周囲を見れば、倒れた仲間たち。


 破壊されたギルド。



「俺が...やったのか...?」



 記憶がない。


 復活してから今までの記憶が、完全に失われているようだ



「首を斬られて...それでガルド様の...加護が...?」



 その呟きは、喜びか、恐怖か。


 ランザ自身もわからず混乱している


 その姿はとても隙だらけで首を落とすのに何の苦労は無いとわかる



(――全部切ってもええが、爺に目立つなといわれとるし...ここらが幕引きじゃゼ)



 状況が把握できない冒険者たちを放置することに決めた武王丸は


 完璧に任務を達成した事に満足しつつ、戦いも楽しめたと武王丸は上機嫌で冒険者ギルドを後にした





 それを見たランザの目が再び赤く染まった


本日もありがとうございました

感想頂けましたら幸いです


10話に挿絵を一つ追加しております

興味がある方は是非

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ