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絶好
彼は、私にもたれかかって崩れた。
私は、正気でいられなかった。
美形男子が……私の半身に覆い被さっている。
もう1年以上も彼氏がいなかった。料理教室を起業して忙しく、フラストレーションも溜まっていた。
彼の香水の残り香が、私の女の機能を刺激する。
私の目は潤み、息が上がっていった。
ふいに、彼の顔を見る。
顔は青白く、うわ言を言いながら苦しそうにしている。
私は、一瞬で正気を取り戻した。
「いやいやいやいや」
自分は何を考えていたんだろう。
どうするつもりだったんだろう。
彼は大事なお客様だ。早く救急車を……
「う……救急車は……呼ばないで」
彼のうわ言がハッキリ聞こえた。
どうしよう。後々トラブルになるのも怖いけど…
私は、彼を背負って自室のベッドまで運んだ。
なに、アパレル時代にマネキンを3体運んでいたんだ。力には自信があった。