天敵
ぼくは、軽い足取りで待ち合わせ場所へ向かった。
ユカちゃんが迎えにきてくれている!
可愛い!ブルーの花柄のワンピースだ!
ユカは、ぼくを見るなり目を見張った。
ぼくは誇らしげな気持ちになる。
「す…菅野くん、かっこいい」
それだけ言うと、ユカはぼくの腕にしがみつき、クラクラと歩き始めた。
ぼくはたまらない気持ちだった。親御さんへのご挨拶なんて、風のように一瞬で済ませられるだろう。
「あのね菅野くん……」
ところが、ユカは重い口調だった。
「弟が……帰ってきてるの……その、弟も一緒でいいかな」
「え、もちろん。弟さんって、いま海外で働かれてるんだっけ?」
「うん、シンガポール。あのね菅野くん。先に謝っとく。うちの弟、やばいやつだから」
ユカの顔はこわばっている。
え、ヤバいやつ?シンガポールで悪いことでもしてるのか?まさか、反社とか……
反社っぽい人種には慣れているぼくも、親族になるとなると話は別だ。
ちなみにうちの親は高齢出産でぼくを産んで、いまは両親共に要介護である。ぼくの威力だけではまだまだ太刀打ちできない。
ぼくとユカは、ガチガチに緊張したまま、実家に着いてしまった。
血液がドクンドクンと変に流れる。しびれた感覚のまま、ぼくはチャイムを鳴らした。




