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ヒーローになりたかった男

どういうことだ!

パパ!私の体を乗っ取らないで!!!


私は憤慨していたが、パパは私にごめんと言いながら気持ちは完全にママに向かっていた。


「パ……パパ?」


ママは、驚いて腰が抜けている。


「ママ、ずっと謝りたかった。勝手にいなくなってごめん。おれ、あの日は酒に酔ってて」


「………知ってる」


「家のウイスキー全部飲んだもんな。でさ、ママに宝石買おうって思って出かけたんだ。馬鹿だろ?酔っ払いの夢だ」


「たかゆきさん」


ママは、涙目になっていた。私と同じ、熱を帯びて色っぽい目元。


「おれはさ、ママ、ゆきこさん……親父とお袋に逆らえなくて、店を大きくすることも阻まれて。ゆきこさんに、宝石のひとつ買ってやれなかった。いつもボロを着させて……外で働かせて、両親の分まで家に入れてもらってたのに」


パパは、私の体でそっとママを抱き寄せた。


「たかゆきさん、私ね、由香と旺介が生まれたことが、いちばんのプレゼントだったのよ。あなたとの子どもよ。今も可愛くて仕方ないです。それに、あなた大鍋もくれたじゃない」


目から、涙がボロボロ出る。

パパ、泣いているんだ。


「私はね、その鍋でお料理作る時がいちばん幸せだったの。大好きな家族が、私の料理で生きてるって、ふふ。やっぱり独り占めしたかったのかな」


私は、母のヲタ体質を思った。

あ……なるほど。推しには自分の金で活躍してもらいたいという独占欲のことか……


けっこう重症だな、うちの親。


「また、2人のために料理してやってくれ。もう親父もお袋もいない。ゆきこさんも自由だ。おれは何もしてやれなかったけど、ゆきこさんには幸せになってほしい」


今度はママの目から、ボロボロと涙がこぼれた。


「おれはダメな夫だったと思う。でも、ゆきこさんのために頑張りたかったんだ。ゆきこさんのヒーローになりたかったんだ。でも、助けてもらってばっかりだった。本当にママ、ありがとう。そして、いつまでも愛してる。ゆきこさんを」


私は、急に体を取り戻して、重力に押された。


「わあぁぁぁぁ!!!たかゆきさん!!!」


ママと私は、いつまでも抱き合って、泣いた。





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